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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 前編
26/124

第二十四話 史上最悪最低の負けイベント




【フライドチキン共和王国召喚勇者第八期】の面々は卒業試験を無事に全員が合格し、その打ち上げを第三等区にあるお洒落なイタリアンのお店でやっていた。


遅れてきたガネリオが全員分にプレゼントとしてお揃いのブレスレットを持ってきていたのでそれを配っている―




「えー、マジありがとー!!!!」と一番嬉しそうにしているのはラジュであった。


「お洒落なラジュに喜んでもらえたのなら何よりだ。センスで選ぶのは鬼門だったから、とにかくステータス付与を重視した。」


そういうところはやっぱり抜かりないなーとガネリオのそのセリフを聞いて皆が思った。


「どうっ!?似合うっー!?」とカナは白の魔導ローブにお揃いのピンクのラインの入ったブレスレットを嬉しそうに掲げてみせる。


「似合っててめっちゃ可愛いー…ってさ」とそれを見つめる泰誠の横からケントが茶々を入れる。


「えっ?」とカナが少し戸惑っている。


「今のはー、あ、隣の勇者様から聞こえてきたっぽいなー」とケントが白々しくまた言う。


「お前うるせぇよ」と泰誠がそっぽを向く。


その様子を見てワッキーも天王寺もニヤニヤしている。


ジェシーは一心不乱にイタリアンに味付けされたコカトリスの肉を喰い荒らしていた。


あっという間に、驚く程あっという間に時間が過ぎて、明日早速クエストに出かけるケント、ワッキーが早々に打ち上げ会場のレストランを後にした。


なんでもワッキーがこれから働く魔導具店の店長から仕入れの護衛として直々にクエストのオファーがあったらしい。


パーティーメンバーの登録はアイドルで言うユニット結成なようなものなので、個人での活動・クエストの受注は制限されない。


「私も明日ちょっと用事があって…悪いけどお先にー…」と浜須賀栞がそれに続いた。


暫くしてミオナ以外の女子四人組も店を後にする。


大人組はやっぱりお酒が進んで、お店の端では少し酔った泰誠とミオナが何か話し込んでいる。


それを横目にカナはノンアルシュワシュワジュースをちびちび飲んでいた。




「おい、良いのかよアレ」




そんなカナを見かねたジェシーが口をモグモグさせながらそう聞いた。


カナは「何のこと?」とまるでその質問の意味をわかっていない。


(こりゃ泰晴は大変だな…)とジェシーがため息を漏らす。


やがて時間は九時を過ぎ、会はお開きとなった。


打ち上げに残っていた面々は後片付けを手伝いながら、大人組はまだ飲み足りないのか二次会を何処にしようかと話し合っている。




「いやー、助かったよー!後はやっとくから大丈夫だヨン」




しばらくしてレストランの店主にお土産のジャムの小瓶を貰って一同(泰晴、ウーメル、カナ)(天王寺、ガネリオ、ジェシー)(ミオナ)は店を後にした。




「どうする?二次会の前に出店とか周るー?」




ミオナが一番前を歩きながら魔導水晶スマホを片手にそう言った。




「ありだな」


「もう食えんぞ?笑」


「安心しろよ、私が食ってやるから」




楽しそうに賛成する泰晴、ガネリオ、ジェシー




「なんか帰り道にやたらバエるドリンク売ってたってさっきしおりんから連絡きててさー…」


そうミオナが言ったか否かの時だった。





打ち上げのお店から少し歩いた先、


レンガ造り五、六階程の高さの建物が並ぶその裏路地、


そこから小さな子供の悲鳴が泰晴には聴こえた。


声の様子から慌てて裏路地に駆け込む泰晴、その異変に気づき続くウーメル、天王寺と、さらにそれに遅れて続く他の転生者八期。


そこにいたのは、




チープな赤のタイツに頭から足先までゆうに3メートルはあるそのでっぷりとした全身を包み、

きぐるみのような半分に割れた卵をはいて、

真っ赤に塗りたくってある鼻の下に「にちゃりにちゃり」と気持ちの悪い、

丁度通学途中の電車の中で女子高校生に絡んでいた中年のおっさんが、

同じ車両にいた好青年に注意を受けて、

それに睨み返しながらも笑ったときのような笑みを浮かべていた。




全員がその異様な姿に目を奪われる。










「Laugh, laugh, laugh..., Well, hurt me as you pleased, little boys and girls. im happy with being your imaginary villains, replica of the society.」

(んふ、んふふふふ、あぁオイタはだめだけどお仕置きは悪くないんだ子ども達よ…、社会正義を歌う偽善者の生贄に、君たちの為にならなるよ、オレハ、んふふ)














その赤タイツの隣には彼と同じ背丈の卵がゴロゴロと、小さく排水管から流れ出た水で湿るコンクリートの床と音を立てながら小刻みに揺れている。




「何してるんだお前!!!」




問答無用、悪意と卵の中の怯える子供の気を感じ取った泰晴が誰よりも早く剣を抜いて赤タイツのピエロに斬り掛かった。


ピエロはひるみ怯えたジェスチャーをしながら、しかし白粉の上にまで伸びる青髭に囲まれた口を歪め笑っている。











「oh..., yes,, that straightforward eyes, sharp masculine body... is yet not riped fully, haven't through enough life sour, my boy....んんッぁあ!」

素敵な目だ…、真っ直ぐで、靭やかな肉体もまた…ンアッ

だが、熟れて憂いてが足りないな…










赤ピエロに斬りかかる泰晴の頭上でぱんっ!と何かが弾けた音がすると衝撃波が辺りにペイントボールのように炸裂走る。


泰晴は後ろに弾き飛ばされた。




「泰晴!突っ込むな!!」




ウーメルが長槍のエモノを構えながら叫んだ。


一同は眼の前の敵に最大限の注意を払いながら頭上を確認する。


いくつものカラフルな風船。


それぞれ籠もっている魔力の種類が違う。


そしてその量も自分達がこれまで見てきたものとは桁違い…


一同は先程戦ったミノタウロスやコカトリス何かとは比べ物にならないほどの甚大な魔力の敵に緊張を走らせた。




「由貴!上の風船を頼む!」

「まかせろ!」




【砂属性魔法:惨砂鉄剣ざんさてっけん】指示を出しつつ再度飛び掛かる泰晴、


「孤高なる勇者よ、勇気を股肱ここうとし、今俊光のつるぎを抜け」

【支援魔法:エーデルワイス】カナは恐怖に足を竦めながらも自身の使える最大限の攻撃と速度のバフを泰晴とウーメルに掛ける。


【特殊魔法:異世界人のマイクロ自由落下10の−6乗秒】泰晴とウーメルの体の周りにさらに魔法円陣が光る。ガネリオの放った地面に対して水平に起こる推進力強化の魔法陣と重なる。


【火属性魔法:火炎一番槍】ウーメルはそれらをくぐり赤タイツのピエロの上空から槍を突きおろす。




上空の風船とウーメルの間には既に由貴の【魔法壁】が発動し薄いホログラムのような光が赤タイツのピエロが起こした先の爆発を弾き返していた。



ウーメルの槍が赤タイツのピエロの頭蓋骨に、泰晴の剣が腹部にそれぞれ刺さると、そこから真っ赤な血がダラダラと垂れ始めるが、しかし武器が肉に圧迫されて抜けない!



ウーメルは敵の異様な雰囲気に槍を諦め宙返りをして背後に周り少しの距離を取る。

泰晴はそのまま剣を持つ片手を離して【魔法弾】を赤タイツのピエロの顔面めがけて放つ。


爆発音と爆煙が過ぎ去り切る前に泰晴は叫んだ。




「ガネリオ!構うな!やれ!!」




【爆発魔法!!ファイアボルテックスリング!!!!】ガネリオの叫びとともに彼の手から自転車のタイヤサイズの火の輪がいくつも赤ピエロを爆煙ごと切り裂かんと飛び出す。


【光属性魔法:エーテル】天王寺が素早く杖を振ってガネリオに続く。

【火属性補助魔法:エーテル・アシテイト】ミオナはガネリオの放った火炎の輪の威力を増大させた!


三人の魔法が合わさり、鉄筋コンクリートのビルだってジジジずパッ!と切断しそうな勢いだ!!




泰晴はそれを持ち前の反射神経で綺麗に避けて、もろに赤タイツのピエロの体に直撃させる。

火炎の輪は赤タイツのピエロの体表に痛々しい大火傷の跡を残した。



爆煙が去り、着ている赤タイツの所々を火傷と切り裂かれた部分から流れる血でより赫々とさせたピエロ。

頭の頭部に刺さっていた槍が鈍い音を立てて地面に落ちる。

髪は実験に失敗した科学者のようにアフロに飛び出し、その髪は所々焦げているが、色はタイツと同じチープな赤にしっかりと染められている。


傷だらけの赤ピエロは笑った、もう一度。


誘拐してきた子供をこれから犯す時のオタノシミがまさに始まらんというように。ぐちゃぐちゃニチャニチャ。


その場にいた全員の表情が引きつる。








「Smile? cuties? I must insist...(笑えよ、可愛いなぁ…)

Just a little pile of lives, Why can't you and I ?(何、たかが土塊だ。俺も。お前たちも。)

but....hmmm....., bit too many galleries....(だが、少しギャラリーが多いようだ…)」








【召喚魔法:マンティコア白亜ジュラ種】赤タイツのピエロがスキル視線誘導ミスディレクションLevel ??を使い生み出した一瞬の隙で、地面から影の檻を食い破ってマンティコアが現れる。


マンティコアの全長はゆうに三メートル、体重にして六百キロは下らないだろう。

その爪と牙がレンガ造りの建物の壁を豆腐のように削るのが、次は泰晴とウーメルを狙う。



【ケープ・エスケープ】赤タイツのピエロが黒のベールを纏うと、たちどころに姿を消す

【タダーン!!!】次の瞬間ガネリオ、カナの背後に現れ、両手で二人の口元を掴むとクンカクンカと匂いを嗅ぐ



ガネリオもカナも両手両足をバタバタさせ激しく抵抗するが、口元を掴む腕の力は凄まじく顎が砕ける手前の圧迫を覚えている。

やがて力なく意識を失ったようにぐったりと二人は地面に倒れ込んだ。



【水属性魔法:鏡花水仙きょうかすいせん】神の加護を受けたミオナが幻術魔法をかける

二人から手を離した敵目掛け、ミオナと天王寺がその両脇から魔法を放った。

【光属性魔法:シルバーアロー】銀月の女神ディアナに願いを捧げた天王寺は杖を弓に見立てて、光の矢を放った。





二人の魔法を受けて尚ピエロは飄飄と立って、今にも口笛を吹き出しそうだ。

その異様な光景の最中、一同は自分の舌と鼻に奇妙な臭いがするのを感じた。


上空の赤と白色の先程まであった風船が皆割れている。


爆煙に紛れて辺り一面に白い粉っぽい霧が浮いていた。



誰かの魔法でなにかが()()()のだろう。毒か或いは…



一番最初に気付き反射神経に自身の身体を命令させていたのは泰晴だった。床に転がるウーメルの槍を彼の方まで蹴り飛ばし、ジェシーに追撃を目で促す。



パーティの最後方にいたジェシーはまだその粉っぽい霧がギリギリ届き切っていない所で魔力の【食い溜め】をしていた。


赤タイツのピエロはガキ相手に本気を出すまでもないと油断した様子でいる。


ジェシーの攻撃の隙を作ろうと、槍を蹴飛ばした反動で敵の背後に回ると素早く麻痺属性のボディブロー、フックを撃ち込む泰晴。



泰晴の剣はまだ敵の腹部に挟まったままで、ピエロは泰晴に殴られると()()()()()体をびくんっびくんっとさせ恍惚な笑みを浮かべ、股間部のタイツを湿らせた。



【直火焼き魔法:エディブル・イブル・オードブル】直後ジェシーはまたも半分に切ったバームクーヘン型の魔法陣を通り戦鎚ミートハンマーをフルスイングし敵に打ち込むが、彼はピクリともしない。



(フルスイングだぞ!?!?)


怯えるジェシーの表情を赤ピエロは楽しそうに眺め回す。



やがて白い粉の霧を吸い込んだウーメル、天王寺、ミオナ、ジェシーがへなへなと座り込む。



尚も泰晴はラッシュを打ち込んでいるが分厚い肉の壁が魔法のエフェクトと共にポヨンポヨン揺れるだけで赤ピエロが気にする様子はない。



視界が人生で初めてテキーラのショットを何杯も飲んだときのように燦然さんせんと、うるうると輝き始め、体に力が入らなくなって、座り込んでしまった泰晴以外の五人。



胸中に怯えと、理不尽な運命への怒りとをブルブルと震わせ、無慈悲に唯一動く眼球で必死に何かを訴えようとその光景を見つめていた。



同期で一番強く自分達を引っ張ってきた泰晴が、王国の歴戦の騎士に一目置かれていたあの泰晴が、まるで手も足も出ないでいる…。



ピエロは泰晴の頭を両手で掴むと、自分と同じ目線まで彼を持ち上げ物色するかのように彼をめつける。

そして彼の首筋に大きな団子鼻を押し付け一嗅ぎし、キスマークを付けた。

キスマークの痣はみるみる間に毒々しい紫に首全体を染め上げ、泰晴もまた気を失ってその場に座り込む。



ジェシーは頭を片手で不遠慮に掴まれ、そして彼女の顔の肉付きの良い頬の皮膚はジャーキーのように食い千切られた。

呻き、上半身を屈め、片手で顔を抑えるジェシー、赤ピエロは自分の腹左側に刀身ごと挟まった剣を引き抜くとその柄でうずくまるジェシーの後頭部を打ち付け、反動を利用し膝蹴りを彼女の顔に叩き込む。ジェシーの声にならない叫び声を一切無視して。

赤ピエロはジェシーの金髪の髪を引っ掴んで唇を一舐め回し、また齧り取る。声にならない呻き。



彼の足元に腹巻きのように貼られていた“”体を切断するイリュージョンマジックに使われる箱の絵が描かれたシール“”がはらりと落ちる。

赤ピエロはそのまま泰晴の方へ向き直ると、まるで水銀の体温計を確認するように、不格好に、腕だけを動かし剣を振って泰晴に大袈裟斬りを入れた。



泰晴は朦朧とした意識の中両手を交差させ、さらに辺りから砂を集めて纏わせそれを受け止めたが、振り下ろされた剣の勢いは凄まじく、装備アイテムの金のバンクルは粉々に弾け、砂と共に辺りに散らばった。

そこから赤ピエロが短い左足で彼のみぞおちを蹴り込むと、泰晴は嘔吐しながらその場にうずくまった。呻き。



赤ピエロは楽しそうに彼の体に剣を滑らせ、彼が動けなくなるように手足の健を切り、白濁としたロリポップを彼の口の中へ突っ込み口を開けないように。

そして袖から意思を持ったかのようにスルスルとひとりでに伸びる赤い紐でその瑞々しい唇をスティッチ。



赤ピエロは薄暗い横道、裏路地の前後に分かれた、泰晴、ウーメルと、他を見比べ、ジェシーの血がべっとりとついた自身の唇をうっとりさせて表情を笑いに歪め、一歩ずつ、今度はガネリオに歩み寄る。



百八十を越えるガネリオの巨体を片手で軽々と持ち上げるともう片方の手に握っている泰晴の剣で彼の胸を突き刺し、お姫様が気に入らないドレスをほっぽって次のドレスを試着するように彼を床へ放り投げた。



やはり一行はその一部始終を見ているが、声すら出せず、痺れ動けないでガネリオの無事を懇願するように胸中を彼への呼びかけで一杯にするしか無かった。



赤ピエロは次にへたり込んでいるミオナを見つけると彼女の顔を何度も何度も蹴り飛ばす。

何度も何度も執拗に。彼女の顔がボコボコに変形するまで。何度も何度も。





んふっ、んふっふふふ、みへっ、むひっ、ふっ、ふーー、ふっ。吐息と切れた息と不気味で不可解な笑いを赤ピエロは何度も繰り返す。





ミオナが顔を惨たらしく腫らし気を失うと今度はカナの股間部をその破れた赤タイツの隙間から見える毛むくじゃらの手で乱暴に掴み、灼熱魔法の呪文を唱え始めた。股間部を掴んでいる手のひらが段々と湯を沸かすケトルのように熱くなっていく。



涙ながらに「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ怖い、やめて」と胸の内、口の中精一杯叫び呟こうとするミオナ、しかし彼女の体は先程から痺れと快感に支配され小指一本自分の力では動かせる気配がない。



そんな無抵抗の彼女に馬乗りになった赤ピエロは彼女が先の白い粉の霧を吸い込んだ影響で抗えず、また快感が体中をほとばしる状態にならざるを得ないことを知っていた。もう片方の手でミオナの後ろ髪を優しくいている。




「や、やめろ…、やめろ!!!!!!」




泰晴が声にならぬ声を縫われた口を引き裂きながら吐き出す。


唇にあるいくつもの小さな穴がブチブチと音をさせながら血を流しだした。


気合を振り絞ってフラフラのまま立ち上がる。


視点が定まらない。



赤ピエロは『嬉しさ♧』と『意外♡』という表情を顔に貼り付けしばしそれを見守っている。



泰晴以外誰もがもう何もできないまま早く時が過ぎればいいのにと心を折ってしまっていた。


と、その時、


苦痛に顔を歪めたミオナと赤ピエロの背後に何者かが拳銃を構えて飛び出した。




「freeze!!!」(動くな!)




銃を構えていたのは【KUPDOGカップドッグ】のカナメ巡査だった。


彼は指名手配犯である赤ピエロの目撃情報を聞き、応援を呼んでから先んじてここまで一人でやってきていた。


彼としては今日幼稚舎に迎えに行った息子が、一足先に誰かと帰ったと保育士に言われた事も気がかりでならない。



警官はすぐさま氷属性魔法で赤ピエロの動きを封じようとその水流の如く伸びていく氷を赤ピエロの手足に絡めつかせる。



手足を凍らされた赤ピエロは泰晴から視線を外し後ろの警官を振り返り見ると"あれは大して面白くないゲーム"だといわんばかりにまた泰晴の方へ向き直った。











「dont worry, we are indeed frees'」(安心するんだ僕、確かに私達は自由さ♢)


free's《何をする》 to doにもな whatever―











そう泰晴にいたずらっぽく、小さなお化けを見たという子供を諭すように優しく言いながら赤ピエロは氷をバキンッと割り、まるで発砲を促すようにさらにミオナを痛めつけようと火力を上げる。



ミオナの魔力が叫び声のように一瞬響き渡るが、赤ピエロは苛立たし気に先程まで彼女の髪を梳いていた手で髪を鷲掴みにし後頭部を冷たく硬いコンクリートにゴンッと殴りつける。辺りはまた不気味な程静まり返る。



警官が先程から氷属性魔法で拘束しようとしている赤ピエロのその体は、股間部も含めさっきより少し大きくなっている。


いや、確実に大きくなっている。


泰晴が異変に気付き警官に忠告しようと口を開いたと同時に、



カナメ巡査が【魔弾】を銃口からいくつも放つた。



と赤ピエロは腹回り、首周りのぶよぶよした脂肪の中にそれを埋め、苦しそうにうずくまった。



むふんっ、むふ、むふふふふふ、気味の悪い笑いが漏れると赤ピエロの体はバルーン人形のように白い煙を振り撒きながら萎んでいく。



それがネオンライトの光の様にチカチカふわふわ上空に舞って消えると、中には先程卵の中に閉じ込められていたと思われる小さな男の子が裸のまま全身に青痣と暴行の跡の上にさらに銃弾の傷を受け止めて力なく横たわっていた。









「ライアっ!!!!」







カナメ巡査の息子だとその場にいた全員が理解する、【魔人パクリカ・レプリカ】に対する怒りに唇を震わせ。

カナメ巡査は地面に横たわる少年を抱き寄せながら悔しさに泣き叫んでいる。



パキパキッっと、泰晴の左斜め前の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が割れ始め、中から先程まで戦っていた赤ピエロが傷一つなく、何食わぬ顔ででかい尻の分厚い贅肉に引っかかったそのタイツを引き上げながら満足気に、事後の表情を浮かべて現れる。












「ダダーン!!イリュージョン!!?☆〇%※!」











そう大袈裟に赤ピエロはタイツを着終えて言った。卵の下半分が彼の下腹部にまだぴったりとくっついている。



カナメ巡査は息子を抱きかかえたまま拳銃を構え、怒りを押し殺し、片目を瞑ってしっかりと狙いを絞り再び引き金を引いた。涙が溢れている。



しかし次の銃弾は飛び出すことなく、暴発した拳銃にカナメ巡査は顔を焼かれ、バタリとその場で倒れた。

辺りに不愉快な臭いが充満して、焦げ茶色の煙が彼の顔からプスプスと伸びる。









「mhuhuhaha, my hard ass shit was stuck in there.... how's smells like? teen spirit.」

(俺の硬い糞を詰めておいたんだが、ニオイはどうなんだ?)(酷く嘲笑)










やがて泰晴が気を失う直前に赤ピエロは嬉しそうに笑いながら小躍りした後、泰晴の眼の前に左手で髪を後ろに撫でつけながら顔を近づけて言った。




「俺の名はパクリカ・レプリカ。君達は素晴らしく可愛らしい人形だ。そのうちに楽しいデートをしよう、なに、遠慮は要らない。仕事が終わったら連絡するからうちに来なさい。ね♤」




パンダパトカーのサイレンがこだまし、現場に近づいてきている。



(間に合わない…。)



【KUPDOG】カナメ巡査とのやり取りの間に消えゆく意識を必死に捕まえて、心臓に突き刺さった泰晴の剣の痛みの中、ガネリオが自分の使える最大レベルの爆発魔法陣をようやく完成させ、パクリカに放った。



【火焔《explosive》爆発《fire》魔法《magic》  lightライト novelノベル dynamightダイナマイト allオール fledフレッド!!!!!】辺り一面を吹き飛ばし、同時に任意の対象を近くまでテレポートさせる技だが、成功確率はまだ確かではない。何事も確実性を持ってやりたいガネリオとしては使いたくない手段だった。



その魔法は不意打ちの筈だった。

しかし【魔人パクリカ・レプリカ】はバルーンに空気をいれる魔法のポンプをガネリオの方を見向きもせず背後に出現させ、それにガネリオが放った魔力を全て吸い取ると一つの赤い風船に空気と共に閉じ込めた。


力を振り絞り泰晴と同じく意識を失うガネリオ。



辺りを物色するように見回し、恐怖に震え未だ意識を朦朧とさせている【天王寺由貴】を見つけ毛むくじゃらの石灰の肌の食指が彼女の頬をなぞる。


わかっていても白い粉の霧が彼女の神経に快楽を流し込んでいく。


涙を必死に抑え込みながら【魔人パクリカ・レプリカ】を睨み返す由貴を担いで、

先の魔力の籠もった風船も連れて、

そのピエロは悠々と街の中の陰の上を歩いてどこへともなく消えていく。



既にネオンの光が走る暗くなった辺りを、爆発音を聞いて心配と好奇心に燻る通行人がそれでも薄情に通り過ぎていく。






裏路地を出てすぐ、パクリカと肩をぶつけたチンピラが彼に絡んだ。




「おい、どこ見てぇんだこら?あぁ、なんだその肩に担いでる女はよぉ?あぁ?」




パクリカは彼の両膝を蹴り折ると、その見た目に似合わぬ素早さで風船の紐を膝をつく彼の喉に巻き付けた。


男が痛みに悲鳴を上げる前にパクリカは一本、ナイフをチンピラの顎のほうから上向きで突き刺す。


男はそのまま絶命したのか辛うじて生きているのか、どのみち意識は無い様子でそのまま動かず、声を上げることもなかった。



ようやく駆けつけた応援の【KUPDOG】が、顎から突き刺さったナイフを頭頂部から覗かせている男を中心に人だかりが出来ているのを泰晴達より先に発見し、銃を構えながら慎重に近づく。









と、



パァァァン!!!BAAAAAAAANGGGGG!!!!!!!!!!!!











首に巻き付けられていた風船内部で先ほどガネリオが放った魔力がさらに凝縮され爆発。


通行人、現場に駆けつけた警官総勢30名は爆発により死亡したと後に魔法新聞により報じられた。


同時刻のその日、国の創立記念日を祝うために街の空には無数の、色とりどりの風船が放たれていた。






















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