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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 前編
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第十八話 卒業試験 Bチーム ラビュリントス遺跡


卒業試験三日目―




〚チームB〛のガネリオ、天王寺、ジェシー、ケントの四人は目標の〚ラビュリントス遺跡〛に到達し、遺跡の奥深くにある【悲哀アンバー琥珀さだー】と【フライドチキン黄玉トパーズ】が安置されている〚秘密の部屋〛という場所の目の前まで来ていたが、そこで立ち往生していた。


部屋に入るには大きな魔法の紋様が彫られた高さ4メートル程の分厚い石の大扉の鍵を開けなければいけない。


恐らくは魔法によって鍵を開けなければいけないのだろうが、誰もその解除の魔法を知らない。


試しにジェシーが力技で開けれないか試してみたが、大扉はびくとも、欠けることすらしない。


「くっそ…、あかねぇし、そもそもびくともしねぇ…」




大扉は幾つもの大小さまざまなサイズのレンガがパズルゲームのように積み重ねられて出来ている。


そして大扉の真ん中には大きなスフィンクスの様な顔がデカデカと彫られ、


腕をかろうじて通せるサイズのスフィンクスの目の穴。


そこから中を覗くと、どうも大扉は結構な厚さがあるらしく、中は腕一本分空洞になっている。


その空洞の奥の壁、手を伸ばすとぎりぎり届く位置には四つの円形魔法陣が横並びになって彫られていた。


試しにケントがスフィンクスの目の中に手を入れて魔法陣の一つに魔力を注入すると、確かに大扉のレンガの一部が動き、鍵が開きそうな気配がある。


「なんだよこれ!開けるのに手が四本いるじゃん!でも魔法陣起動させるのに目の中に腕は2本しか入れられない!

おい!スフィンクス!謎かけするにしてもちゃんと正解があるのにしろよ!」


ケントが叫ぶと大扉のスフィンクスは舌をベロリと出した。


「むかっ!!!」


「はっ、大扉にバカにされてやんの」


「ジェシーうるせえぞ!」


「ちょっと待って!スフィンクスの舌に何か書いてある!」


口喧嘩を始めたケントとジェシーを天王寺が諌めた。


スフィンクスの舌には



they, be the light (汝、光たれ)



と刻まれている。


「「「なんのこっちゃ」」


全くもって何のことかわからないケントとジェシー。




「まぁ、この形状を見た時にそうだろうなとは思ったが…、二重スリット実験か。」


「成る程ね。」


と得心のいったガネリオと天王寺。


「あのー、全然成る程じゃないんですけど…」


二人の納得した顔にケントが説明を求める。


「二重スリット実験って知らん?光が波動と粒子の二つの性質を持ってるって奴…って、二人共目ぇ点になってんで…」


ケントとジェシーにはあまりにも馴染みのない話だ。


「まぁ、やってみたほうが早いか。」


【光属性魔法:蛍雪の功】天王寺が振りかざしたステッキからスフィンクスの目に向かって光が伸びる


天王寺の魔法が放つ光がスフィンクスの目を通り、その奥の四つの魔法陣を照らす。


魔法陣が微かに反応し、大扉のレンガがガタガタと少し振動している。


しかしレンガは振動するだけで開く様子はない。


「あれ?」


これで開くと得意げだった天王寺は首を傾げた。


「もしかして四人分の魔力がいるんじゃね?」


ケントは四つの魔法陣と自分達のメンバーの人数を数えなおす。


実はゲーム要素的にはこういうのはよくある事だとすぐに気づいていた。


もちろん、なんで魔法の光がスフィンクスの目の奥の四つの魔法陣全部に当たっているのかはよく分かってはいない。


試しに持ってきていたライフルのレーザーに魔力を通して天王寺と一緒にかざす。


先程よりもレンガの振動が大きくなる。


「っぽいな。」


ジェシーもケントに見習って【魔導波】という光の魔法を、


ガネリオもロッドをかざし同じ様に光属性の魔法をスフィンクスの目に放つ。


四人の魔法の光がスフィンクスの目に届くと、大扉のレンガはゴガゴガゴカと音を立てながら動いていき、奥の〚〛に通ずる道が開けた。


「「やった!!!」」


素直に喜ぶ天王寺とケント、ドヤ顔のジェシー、感心した様子のガネリオはその道へつづいて、部屋の奥、石台に安置されていた計八個の卒業試験クエスト達成条件である宝石を手に入れた。


後はスタート地点にこれを持って帰るだけだと四人は意気揚々とその場を後にする。


直後、来た道の奥からおぞましい唸り声が遺跡内に響き渡った。


四人の誰もがこれが本当の最終試験だと気を引き締め直した。







      【陰に潜む狙撃手 ケント・オルカ】



唸り声が鼓膜を劈くと、反射的に【ステータス表示】と【鳥の眼】を使いながら声のする方へと慎重に駆け出していた。


ここに来るまではほとんど一本道、卒業試験内容的にも多分さっきの唸り声のモンスターは避けては通れない相手…


なるべく弱い相手であって欲しいけど…


すでに他の三人とは戦闘になった際のプランは立ててある。


俺が陽動になる様動き、ガネリオ、天王寺がサポート、ジェシーが必殺の一撃を隙を見ていれる。


来る時、唯一あったひらけた空間に後30メートル程で出る所で思わず声が出る。




「最悪だ…、あのステータス…」




以前の定期試験で見たケルベロスのものよりも数倍色濃くステータスウィンドウ全体が血の色に染まってる…




【コカトリス 白亜合成種ジュラキメラ


【レベル】???

【攻撃力】6?66

【防御力】6??66

【魔力】666?

【体力】66?6

【スキル】超速再生Level1・




ライフルのスコープを素早く構えて目標の実態を視認する。


その見た目は合成されたと言うよりもマッドサイエンティストの実験台にされたというような感じでどことなく気持ちが悪い。


他のリスみたいなモンスターの足が体の至るところからボコボコ突き出して、

頭のトサカも割れたどんぐりがいくつもぶっ刺さっさたみたいにあって、

皮膚は石灰色の毛皮が少し生えて、見えている肌はアレルギー反応を起こしてるかのように生々しく赤ピンクだ。


10メートルあるかないかの巨体で、

キメラとだけあってご丁寧に両翼と脊髄の先からヘビが八匹以上ニュルニュル伸びてる…


背後の死角をうまく消しているのか…。


八岐の大蛇なんてそれだけでボスキャラ要因だよね普通!?


俺は素早く右耳に着けてある【無線念波テレパス】を通して皆にステータスを伝える。




「ちょっ、こいつこの前のケルベロスよりステータスヤバいって!てかこの【白亜種】ってこの前から何!?」


「確かに、授業でも聞いたことが無いな…」




ガネリオが授業で聞いたこと無いっていうんだから本当に授業でも教わらない奴なんだろうな…


それたけイレギュラーってとこだろうけど…




「白亜ってくらいだから多分古代の生物なんちゃうかな…、まぁだからって何って話やけど」




ですよね!!!!!!


仕方ない!買いたてホヤホヤ武器のお披露目だっ!








     【フライドチキン共和王国 騎士団副団長キャモル】



 嫌な予感がしていた。


【白亜種】なんてのは絶対に自然発生では現代には蘇りはしない。


誰かが、故意に、何かしらの目的に彼等を復活させたとしか考えられない。


そしてその誰かは古代魔法に精通する程の智識と、それを扱いこなすだけの魔力を有している。


【白亜種】は文献によれば他のあらゆる魔物モンスターを食い荒らし、生態系を変えるばかりか、惑星に働く生物に対するものとは本質的に異なる魔法則や、ことわりを理解するという。


その最たる例として考えられているのは星を宇宙船のごとく動かすことで隕石を回避したり、或いは彼等を資源として自分達の星にぶつけたり。


規模感がめちゃくちゃだ。


小指の爪の先ほどの細胞しか見つかってないから今はいいものの、後にどんな厄介になるかわからない。


王国滅亡なんてシナリオがうっすらと頭をよぎる。


まずは情報を集めなくてはならない。


前回の定期試験に用いられた魔物【ケルベロス】は現在【フライドチキン共和王国召喚勇者第八期】が居る〚マップ:大森林〛で捕獲されたものだ。


出所を確認する目的もあったが、彼等、召喚された訓練生のことも気がかりだ…


彼等がこの災難に巻き込まれていなければいいが…


王城に集合させた第二隊を連れ、愛馬【ゴールデンホース】に跨がる。


時刻は夕方を過ぎ、夜までもう時間がない…


大森林を駆け抜け、隊の半分を三つある各中継地点へ向かわせた。


この大森林は未だに謎が多く残されていて、全容の解明には至っていない。


王国から派遣された宮廷魔術師や、魔術師連盟が三つのロッジを拠点に日夜研究を続けている。


だからもし【白亜種】に関する何かを掴んでいるとすれば彼等に尋ねるのが早い、勿論そもそも先月の定期報告で何も上がっていないのだから期待は薄いが、普段と変わったことくらいはあるかもしれない…


王城で暇そうにしていたそうにしていたので連れて来ていた第三隊分隊長のマミには〚アンタレス迷宮〛に向かい召喚訓練生の様子を確認しに急がせ、


俺はひとまず〚ラビュリントス遺跡〛に向かおうと愛馬を走らせていたその時、森の奥から四人の召喚訓練生が血相を変えて走ってくる。


彼女達はいつも四人で固まって動いているだけあって普段の実技訓練でも一際高いチーム力を見せていたな…


と、そんな教え子の才媛さいえんぶりを喜んでいる場合では無さそうだ…


「血相を変えてどうした!?」


「キャメル副団長…、(息切れ)、大変なんです!ロッジで人が皆死んでてて!!」


そう報告したのは確かミオナという名前の冒険者だ。


「いつだ?」


残りの三人は疲労か、或いはショックで今はまともに口をきける状態じゃ無さそうだ…


それだけでロッジの悲惨な状況が伺える…


「はい…、昨日の夕方位に着いた時にはもう…」


毎週の定時連絡が一昨日、その後に学者連中とはいえ駐在中の十人余りの宮廷魔術師を皆殺しにしたというのか…


厄介な相手だな…


「そうか、わかった。お前達は彼等と一旦城へ戻れ。

ジャック、エッジ、四人を連れて王城に戻り現状報告、第三隊、第五隊に出撃準備をさせておけ!

残りの者は俺に続け!

ロッジまで最速で向かうぞ!」


「「「「はっ!!!」」」」


俺は連れて来ていた部下二人に召喚訓練生を送らせ、隊を引き連れロッジに向かった―








駐屯ロッジにて―





「ひどい有様っすね…」


宮廷魔術師や魔術連盟の研究員達の無残な肉片の姿を見て部下のアフルが言った。


骨以外は魔獣や森に住む動物が食い荒らしたものの、異臭がひどい。


一キロ先からでも、この異臭が嗅ぎ取れた。


これは【コカトリス 亜種】が獲物を捕食する時に出す粘液の匂いだ。


だが、コカトリス程度であれば研究員達が十人も居て全滅するはずはない…


やはり、例の【白亜種】なのか…?


「キャモルさん、これ」


ロッジの裏庭の方で先の部下アフルが何かをかざしながら言った。


「この羽、石灰色に変色してますがコカトリスのもので間違いないですよ」


…、


この方角の先には〚ラビュリントス遺跡〛がある…


不味いな…











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