n回目、偽物のプロローグ
どれだけ人の作品を勉強して、
どれだけ模写を重ねて、
どれだけそこに自分の思いを乗せても、
それはついぞ自分のオリジナルと評価されることは無かった。
社評には
「なんかどこかで見たことある」
そんな風にしか書かれていなかった。
じゃあその後に続くのは俺の作品への評隲じゃあない。
元々この物語を考えた奴への品評だ。
悔しかったなぁ…
自分だと信じていたもの、
自分で考えついたと思った最高のアイデア、
それらは
世界のどこかで
他の誰かが既に考えついていたもの
アイデアの模造品に過ぎなかった。
神ですらDNAの転写を謳うのだから、確かに俺の創造物などさらにそのコピーの紛い物、愚物に過ぎないのだろう。
筆を取るのが、
台詞を書き足していくのが、
果てには空想に浸ることさえいつからか億劫になり、
怖くなり、
終いにはそれらを全部焼いてしまって、
誰かの創造物の上にどかんっと座ってふんぞり返っているだけの方が遥かに性に合っているように思えた。
世間もそんな俺を望んでいるかのようにさえ見えた。
なんで俺が既に考えついていたアイデアをあいつ等はあんなに誇らしげに自分のものみたくひけらかしているんだ?
それでもそいつ等は俺なんかよりよっぽど輝いて見える。
何倍も生きているように見える。
悲しいことに、その輝きを、その眩さを闇の中へ沈める役のキャスティングだけが決まっていなかった
なぜか誰もやりたがらない役…
俺にしかきっと出来ないこと、
俺しかやらないこと、
それが『オリジナル』
Alright then, I guess that's fair enough...
My original destruction, over your imitation of his creation
Fair enough, fair enough.....
言論弾圧と情報過多社会の犠牲者となった一人の舞台脚本家が悪魔に魂を売った。
彼がようやく手にしたのはホンモノのニセモノ。
ESN大賞7