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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 前編
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第十一話 「ケントはエッチな武器商人に首ったけ」

【陰からの狙撃手 ケント・オルカ】





定期試験が終わった。


俺は翌日、3日間設けられた休みの最終日にその定期試験の事を夢に見て、朝四時前に跳ね起きた。


(体中汗だくじゃん…。)


男子寮一階、備え付けのシャワー室へ向かうと手早く夏の寝汗を流し、洗い立てのシャツと装備に身を包む。


ジャンプスーツ型の特殊な服は一部が迷彩、一部が黒で、魔力を通せば黒の部分は光学迷彩になるという現代では考えられないくらい高い技術の服だ。


保温性も高い。


今日は一段と丁寧にワックスを付け、ドルチェアンドフルーツの香水なんかもちょっと手首につけて首に馴染ませる。


先程見た夢…、悪夢を思い出す。


ケルベロスを一度倒した後、RPGゲームでは定番のボス復活、けれど実際に目の当たりにしたそのステータスは予想の遥か上をいくヤバさだった。


【モンスター名】 ケルベロス 白亜種

【Level】 ???

【攻撃力】  368???

【守備力】 254???

【素早さ】 298

【魔力】 3651??

【体力】 2546??

【スキ殺ル】  憤怒Level1 即死回避Level1 自動回復Level3 超速再生Level2



ステータス表示の縁は石灰と血の色に染まり溶けていたし、至る所にバグの亀裂が入っていた。


正直最後キャモル副団長がどうにかしてくれなかったら俺も、天王寺も、他の皆も全員あいつに肉を食いちぎられて骨付きジャーキー担っていたかと思うと身震いがする。


そのキャモル副団長もなんだかあいつの様子についてはわかっていないみたいだった。


今宮廷魔術士が調べてくれているらしいけれど。


定期試験が終わって、ヘトヘトになりながら寮に帰ると泰晴達も似たような事態になっていたらしい。


俺達の生活指導教官、ゴリハラ先生と泰晴が二人がかりでなんとか倒したみたいだけれど、その場に加勢してくれた他の教官の数名は結構な怪我をしてしまったらしい。


そうなるとやっぱり泰晴は凄い。


俺達が、手も足もでない様なモンスターに教官達といっしょになって相手ができる。


そんな風に一緒に来たはずの転生者を羨む一方で、俺もこのままじゃいけないと思った。


何か出来る事があるはず、そう思って今日はその手始めに武器をアップグレードしようと以前一回お世話になった一等区にある武器屋へ向かう事にした。


朝飯を済ませ、準備が整って、さあ出かけようとした所寮棟の入口にワッキーがドアにもたれかかりながら気取った仕草で立っていた。


「おやおや、ケントくん。こんな朝早くからお出かけですか?」


なんか芝居がかったしゃべり方だ。朝つってももう九時前だけどな。


「そうだよ。」


俺は今日は一人で店に向かう気だ。気取られてはなるまい。ぶっきらぼうに言って通り過ぎようとした。その俺の方をワッキーがガシッと掴む。


「あの朝に弱いケント君がこんな早くにお出かけとは、それもおしゃれして…、クンクン

おっと、香水まで身につけていらっしゃるとは…、仲間に隠し事はいけませんねぇ?」


ちっ、こいつこういう時だけ勘が良いな…


ワッキーの悪いところが出てきた!!!

どうする?

 無視して行く

 今度魔導書を奢ると言って懐柔する

→諦めて連れて行く


「わかったよ…、どうせ連れてかなかったら尾行してくるんだろ?だったら連れてくから、そのかわり他の皆には黙ってろよ?」


「話の早い方で助かりますねぇ。」


「後、その芝居がかった喋りやめろ、なんかスゲー腹立つ!」



こうして俺とワッキーの二人で【ウーバールーパー】という個タクを捕まえて一等区にある武器屋に向かった。





ー【ウーバールーパー】内の二人の会話ー


「俺、お前らと違って狙撃手スナイパー専用の授業取ってたじゃん?その先生と割と仲良くてさ、先生も武器マニアだから結構話盛り上がって、で一回そのこれからいく武器屋に連れてってもらったんだよね。」


「何ちゃっかり抜け駆けしてんのケントきゅーん!?!?」


「いや、抜け駆けっていうか…、そこ遠距離系がメインだからあんま皆に言ってもと思っただけだから!」


「…の割には?あれ?なんか?今日は?一段と?オシャンじゃん?」


「うるせぇな…」


しょうもない会話をワッキーとしてる間に目的の場所に着いた。


その武器屋は一等区のはずれにある、一見すると普通の理髪店だ。


西洋式のレンガ造りの建物は街に溶け込み、〚今喜多床屋〛と書かれたいい感じの古い木の看板も味が良い感じに出ている。


古き良きフランス国旗色のポールもぐるぐるといい感じに回っている。


ワッキーも隣で、「あれ?普通の床屋じゃん」みたいな顔している。


ま、俺も最初来た時そう思ったんだけどさ。


店内に入って、まずは普通に髭を当たってもらう。


店内には俺達の他に白いコートに銀の髪という目立つ格好の青年が一人すでにお会計を済ませて帰るところだった。


そのおっかない感じの雰囲気に少し気を取られながら席に案内されるのを待つ。


俺は高校に入ってからは意外と男性ホルモンが多いのか、週に2日くらいヒゲを剃らないと無精髭になる。


隣でワッキーも「あっ、お願いします。はいっ、あっ、はいすいません。」とか言いながら同じ様にヒゲを当たってもらっている。


こいつ…、さっきまでの態度とは大違いだ。


俺もたいがいコミュ障だから気持ちは痛いほどわかるけどさ。


「本日はどうなさいますか?」


ヒゲをダリみたいにした仕立てのシャツとベストに真っ赤なネクタイをした老人が俺に訪ねた。


「えーっと、普通にモミアゲまで剃ってください。仕上げにフェイスマッサージもお願いします。あっ、この前使ってもらったクリームとオイルめっちゃ良かったのでできればそれもお願いできますか?」


「かしこまりました。」


もはや優雅を通り越して恐怖さえ感じるこの床屋さんの対応に、めちゃめちゃ【ステータス表示】スキルを使いたいのを俺は我慢する。


なにせこの人、全く足音がしない。


以前来た時もそうだった、っと思った矢先に緊張をほぐそうとしてくれているのかタップダンスのタタタンッという遊び心を入れてくる。


心の内を全部見透かされているのが逆に緊張の原因なのだけど、そのなんとも気の抜けない感じがまた良い!


「あっ、後追加でお土産も購入したいんですけれど…、そっちの友達にも布教しようと思ってて…」


これは以前一緒に来た教官にあらかじめ教えてもらった合言葉だ。


「かしこまりました。それでは始めさせていただきます。」


老人は流れるような手つきで俺の肩にタオルを巻いて、ポンチョを被せ、目にもホットタオルを乗せて綺麗に髭を剃り、肩を手刀でダダダダと叩きほぐしてくれる。


暫くして「それではお顔のマッサージの方を失礼いたします。」と綺麗な女性の声がした。


隣で雑誌をパラパラめくっていたワッキーが絶句しているのが見なくてもわかる。


雑誌がパサリと音を立てて落ちた。


この武器屋さんは当然一級の品を揃えている。


つまり、このお姉さんもまた胸に一級、いや特級の物をお持ちなのだ…。


そして、何を隠そう、当たる。


時々、わざとか、サービスなのか、いや無自覚なのか!?


いやもうむしろ当たらなくてもいいんだけどさ!


そこに、今つむじの真上にそれがあるというだけでヤバいんだけどさ!


ありがとポンチョ!


ありがと迷彩ジャンプスーツ!


なかったら確実に愚息が直立で敬礼しているのがバレてた!!!


「それではお連れ様がお越しになるまで今しばらくここでお待ち下さい。」


マッサージの後、綺麗な黒髪褐色肌の女性は俺を床屋の店の奥の奥にある二重扉のエレベーターから建物の二階の待合室に案内してまた下に戻っていった。


待合室には受付があって、そこにもまた白金ボブの特級の物をお持ちの女性が居る。


フカフカの臙脂の絨毯にヒールを沈ませ、その女性がこちらへ来ると「お飲み物は何になさいますか?」と訪ねる。


俺は「あっ、えっと、なんかジュースとかありますか?」と聞きながら、ぶっちゃけ黒のスーツからこぼれそうなおっぱ…、お胸に視線を奪われていた。


丸いカクテルグラスに入ったジュースをちうちう飲みながらしばらく待っていると、惚けた顔のワッキーが運ばれてきた。


「ケント…、俺は天国に転生したんだな…」


うん、違う。気持ちわかるけど、違う。


「それでは御案内します。」


白金ボブの美しい女性は優しい声で俺たちをさらに奥の部屋へ案内してくれた。


高そうな樹木の棚には様々な武器が丁寧に陳列されていて、琥珀色の光がそれらをライトアップしている。


さっきの受付の女性とは別のマシュマロみたいに真白な肌の女性が今度はその部屋でプラチナのネクタイピンとカフスを光らせて待っていた。


ワッキーがまたもや絶句している。わかる、あの破壊力が3回続けばもう頭の中はおっ…、いやもういいか。


「またの御利用ありがとうございます、ケント様、ワッキー様。本日はどういった武器をお探しでしょうか。」


「こ、これ映画で見たやつまんまなんだけどー…!!!ヒソヒソ」


「実は前回のショットガンよりさらに殺傷能力が高くて、広範囲を狙える様なのが欲しくて…」


ワッキーの耳打ちを無視してこの前の対ケルベロス戦の反省を伝えた。


ライフルでまさか凸スナするわけにもいかず、巨大なモンスターを相手に立ち回るには中近接戦用の武器がいる。


その際今持っている王国から支給されたものの改造版では火力が足りないし、足止めにもならない。


前回はライフルしか買わなかった、どうせ前衛は他の人がやってくれるだろうと甘えていたから。


「なるほど、ではこちらの【タイガー12 SBS】は如何でしょうか?」


俺は彼女が両手で掴んだショットガンを受け取って構えてみる。


サイズ感も、手に馴染む感じもバッチリだ。


「銃弾は彫魔刻弾をご用意出来ます。」


「彫魔刻弾って何?」とワッキーに聞かれたので「特別な彫刻印が入ってて、魔力を流し込めば属性付与出来るやつ」と耳打ちし返した。


「それと近接戦用をお探しということでしたらこちらのエアツア製のGLOCK97と98のハンドガン等も如何でしょうか?

威力はタイガー程は出ませんが、両手打ちであれば広範囲を相手に出来ますし、時空間魔法で事前に三つまで弾倉はオートリロードが可能になっています。」


な、なるほど…、これは確かに欲しい。けど、両手打ちとか無理がすぐる。


「仮に一丁だとどっちのほうがおすすめですか?」


「両手で構えるというのであればこちらをおすすめします」


俺は渡されたものを選んだ。


「試射されていかれますか?」


「あっ、はい、お願いします!」


ワッキーと二人で今度は地下にある射的場へ向かった。


何度か弾を撃つ。


弾は人型ターゲットの形をした的の頬、肩にそれぞれ当たる。


「おー、すげーじゃんケント!さすが筋金入りのFPSゲーオタ」


「うるせぇよ!」


ってか、今眉間と胸を狙ったんだけどな…一発外したし…


ちょっと恥ずかしい気持ちもあって後ろに立っているマシュマロ肌の銃を選んでくれた女性の方をそーっと振り返ると、彼女がこっちを見てなんだか会得がいったように「それでは失礼します」と言いながら俺の背後に包み込むようにピッタリとくっついた。



「「!!!???!!???!!!?!!」」



俺もワッキーも絶句する。


あ、当たってる!!!あの的中してます!!てか撃っちゃいます!!!!!!!


人生で背中の神経がここまで敏感に作動したことなんてあっただろうか!?


「ケント様は利き手である右に重心が少し寄られる癖があるようです、ですからここを、こうして…」


なんかアドバイスくれてるっぽいけど、耳元でそんな甘い声でさ囁かれたらはっきり言って何も理解できない!!!


えっ!?なにこれ?!?えっ!?ついに!?ついにお色気回なの!?!?泰晴じゃなくてオレナの!?!?オレナノー!?!?!?!?






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