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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第四部 異世界×駆け出し漫画家 後編
106/124

第二十五話 あかん。




   【関西弁の勇者 辰川翔也】




「久方ぶりだな、辰川翔也…、貴様も死んだ口か?」

死んだ口…、そうか綛谷厨二病引いたな…あれネギ首巻かんとなおらんからなー…

いや、待てよ。綛谷って大学卒業前に死んだんじゃなかった?…

あれ…、あれ……?おかしいな、なんでコイツ…生きて…、夢の中に生霊としてでてこられるほど仲良かったか?

てかそどころちゃう。入り口周りにまで火が魔の手を伸ばしてる。



階段を駆け下りる。

一階の長い通路奥、開けっ放しの部屋の上にGOALと看板が垂れている。

けどその手前、なんなんあのモンスター…、見たことない、なんか毒の霧吐いてへん?



   【デスゲーム開始!!】



「ふふふふふ、君達は私のゲームに参加しなくてはならない。これは絶・対!

さてー、まずはどこから説明を始めましょうかねー、はい、!そこの貴女、答えられますかー?

無理ですかー?お前等バカだからなー!!

まぁ、親殺さないとゲームに粛清されるってぐらいはわかるか」



目の前のおかっぱきのこ蛙化後男は黒いボロ切れに包まれながら、日本刀を抜き、べろべろと刃を舐める。



「掛かってこいよ、てめぇらみてえな雑魚、三枚におろしてやらぁ」



目の前の人間は何をしたらそんなイタイキャラになれるんやってくらいイタイ…

俺は殺さへん、それでええんとちゃうん?



「それにしても志野売ー、今月も随分殺してんなぁ。けひ。疲れてそうに見えるけれど、大丈夫かい?」



あかん、これはあかん。随分と患っていらっしゃる。

火事の一階奥で、さっきチェーンソーで10人が真っ二つになるのを見た後やけど、その緊張感をむしろ和らげるぐらいにこれはあかん。

いつまで刀舐めてんねんこいつ…。



「くひひひ、俺様の愛刀が血をすすりたがってるぜぇ」



あかん、閻魔様を相当怒らせたみたいや…

何か悪いことしたからかな…、



「翔也、地獄みたいなノリに突き合わされてるだけで、地獄じゃないからな、ここ。いくぞ。」



元同級生、同じ野球部仲間の綛谷がそう言った。

なんでコイツそんな間髪入れずに通り過ぎようとしてるん?

こっち見て?人間一人おぶってんの見えへん?

さっきの部屋で俺に「殺せ!」とか言ってた女をさすがに見殺しにはできんかったからおぶってきてしまってんねんけどこっちは。



「き斬ぇいやぁあああああ!!!喰らえええ斬撃魔法!キリキリ細切りの舞!!!」



男が刀を振り回しながらこっちに突っ込んでくる。

危なすぎる、一先ず二階の部屋に逃げ込もうか、二人がかりなら何とか抑え込まれへんか、一瞬迷う!



助けを求めようかと振り返った時には蓮大は近くに落ちていた燃えている天井の壁を掴んで相手に投げてた。

男は一瞬怯むが、すぐにまた刀で辺りを無茶苦茶に切叩いて、最後に壁のボードに腹立たしそうに刀を突き刺した。

そこには写真が何枚も貼られている。さすがにどんな写真かまでは見る暇は無いが…



「魔法烏新聞社代表取締役クラパルス、新入社員のピンチにカカアッと參上!!」



バリーンッ!!とその刀の突き刺さったボードとは反対側の窓ガラスを割り、取り付けられた鉄格子にはまったカラスはどこまでも哀れに見えた。

出オチのためだけに登場するんやったら帰れ!!



「しょ、しょーや殿、悪いがジャストではまってしまったようだ、助けてくれないか」



くそ、余計な手間を増やしやがって…

なんか、なんかひみつ道具とかないんか!?あれでもないこれでもない言うてなんかポケットから出されへんっ!?



「くっ、翔也!おい!手を貸せ!」



アホなカラスの隣で取っ組み合いになっている蓮大がいつ以来か、必死そうな声で真っ直ぐに俺を呼ぶ…



「ま、魔法の羽根ペンだ!!以前あげたあの羽根ペン、君が魔法を使うんだ!」



クラパルスさんが必死にそう言った、だから魔法ってなんやねん…

けれどもう火の手が完全に回りきって今連れ出してるこの人間を一旦置いとくスペースももうない…



「うっ、動くな…!!」



俺は一旦地面に座り込んで、さっきの部屋にあった銃を構え刀を持った男を制しようとした。一応持ってきていてよかった。

蓮大は落ちてくる屋根を上手く利用して男を躱し、すでに扉の向こう側にいた。



「撃ってみろよ、おお惡惡???!!!!!」



イタイ男は挑発と受け取ったのか、イキリを加速させる。くそっ、選択ミスかよ…、キュイーーーーン!!パキューン!!

その時、いきなり電子音が鳴り響く。俺の意志とは関係なく。銃から放たれた光がイタイ男を二メートルほど後ろにぶっ飛ばした。


えっ、なんで?まさか死んでへんやんな!?

考えてる暇はない、格子に挟まったアホガラスを押して、外へ返す。



「なななな、翔也殿!!外!これだと外に行ってしまうぞ!ワタクシは助けに…」



やかましい。出オチ。カラス風情が、せめて早く外の誰か報せに行け。



「も、もうすでに自警団がこちらに向かってる!!ワタクシは一足先にここに駆けつけたんだ!」



そんなやり取りの隣で蓮大が苛立たしさをあらわにしながら、引きずるように床にへたり込み呆然としている女を次の部屋へと連れて行く。



「痛っ!」



カラスにくちばしで手を突つかれた。



「ワタクシを信じて!!翔也殿!!」



もうええわ、勝手にしろ。俺は多少強引にカラスを格子の外へおもっきりシャンバーの袖に腕をくるんで押し出した。




火の煙が張り手ずもうの様に押し寄せてくる、息ができない…、空気が熱い…、思考がまたボヤボヤしてくる。

死んでしまおうかなんて一瞬よぎりかけて、その隙で本当に死にかねないと再び頭の脳みそを揺り起こす。



GOALの看板が垂れ下がった出口間際、意図せずレーザー銃で吹っ飛ばしてしまった男の首に手を置いて意識を確認するが、完全に気を失ってる。息はあるけど。

とにかく男を扉の奥まで引きずり転がした時、部屋の扉が硬そうな別の鉄の扉でピシリとしまった。














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