第八話 【真実の戦士 ウーメル】
読みにくかろうとは思いますが、そういう趣向の作品ですのであしからずご了承いただければ…
やっと俺の番が来たな!
俺の名はウーメル!よろしくな!
早速だが自己紹介は以上だ!
なんせ俺達【フライドチキン共和王国召喚勇者第八期】は今定期試験の真っ最中だ!!
定期試験の内容は、
三チームに分かれ、
〚フィールド:闘技場〛で
それぞれケルベロスを討伐すること!
メンバー分けは
Aチーム:俺、泰晴、カナ、ワッキーの四人と
Bチーム:ジェシー、ケント、由貴、ガネリオ、の四人と
Cチーム:シーナ、ラジュ、ミア、栞、の女子四人組だ。
闘技場は王城の隣、地下、それからかつて使われていた旧闘技場の三つ。
俺達は三つ目の旧闘技場で定期試験を受けることになってる。
闘技場の観覧席には何人かの王国騎士団の教官達が俺達の技術採点しに来ている。
やっぱり試験とあって緊張するな…
にしても、初めての大型モンスターとの実践とはいえ皆肩に力はいりすぎて少し苦戦してる…
まぁ、安心してくれ、いきなしパーティメンバー全員死亡なんてのにはならねぇから!
「全員、お得砲台プランで!!カナ!援護頼む!」
「了解しましたぁっ!!!!」
【支援魔法:つむじ風の加護】俺の合図でカナが速度上昇のバフをチーム全体にかける。
その速さも相まって泰晴が一気にケルベロスの足元まで肉薄する。
ワッキーは慌てた様子で泰晴を追いかけ、ケルベロスの背後にまで廻り込むとトラップを設置していく。
スキルの【囮】は今日は調子が悪いのか、ケルベロスは犬歯をギラギラさせた頭を三つとも泰晴に向けて肉を食いちぎろうとしている。
コイツの体の大きさは大型トラック一台か二台分くらいだろうか?
俺は泰晴がケルベロスの気を引いているうちに詠唱に時間がかかる中級魔法を唱え始めた。
丁度ワッキーがトラップを設置し終え、離れたところから〝ケルベロスのケルベロス〟に炸裂弾を投げつけ、怒り狂ったケルベロスは大蛇の尾を振り回しながら暴れ始めた。
しめた!!
【火属性魔法:炎熱十万文字槍】俺は握っている長槍の先端に炎を纏わせ、炎の形を刺股に変える。
ケルベロスが後ろを向いた隙を狙ってケルベロスのケツアナにブスッ!!!!
ギィャア嗚呼亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とんでもない音量の雄叫びが辺り一面に響き渡り、泰晴を除く俺達三人全員は耳を塞いだ。
「うるせぇけど、うちの兄貴の寝息のがうるせぇ」
【砂属性魔法:惨砂津鉄剣】泰晴はそう言いながら俺がぶっ刺した槍を足場にケルベロスの頭上まで飛び上がるとそのまま剣を振り下ろしケルベロスの頭の一つを見事に切り落とした。
一撃で斬れたように見えたけど、実はそれまでに同じ部分に何度もダメージを与え毛皮を剥ぎ、さらに攻撃の直前省略詠唱を行いながら攻撃力と剣の切れ味を上げたことで成し得た一撃だ。
それはつまり泰晴は他の部位にも同じ様にすでにダメージを蓄積させているという事!!!
まるで俺達の攻撃力でも部位破壊が出来るよう、お膳立てしているかのように。
ま、それだけ俺等が期待されてるってことにしとくかな。
なんてったって噂によると俺達の代は歴代二番目に成績優秀者の揃った代で、
その中でも現状、俺は総合成績泰晴に次ぐ二位だからな!
まったく…二番目、二枚目ってのは俺のジンクスなのか?
なんて無駄口を叩く暇もなく泰晴が踏み台にした時にケツから飛び出た、もとい抜けた長槍を俺は掴んでケルベロスにそのまま突っ込む。
「なんか…臭せぇ気がする…」
【火属性魔法:陽影炎】一応念の為炎を纏わせて加熱殺菌を施しておく。先端は念入りにな…。
愚グゥぉ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼あ亞亞亞亞亞亞亞!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺が気を抜いた一瞬の隙を突いて暴れるケルベロスの回転した大蛇の尾がワッキーに直撃し、吹き飛ばされた。
「おい!ワッキー!!!大丈夫か!?!?」
「すまん!ぬかっ―」
直後、吹き飛ばされ受け身の取れないワッキーにケルベロスの頭の一つが口から炎を吐きつけた。
なんでケルベロスが火を吐けるんだよ!!!!くそっ!!
泰晴はもう片方の頭に邪魔されてカバーできない!!
(しまっ…!!!!!)
気付いた時には俺は地面に発現させた魔法陣の上に槍を手放してケルベロスとワッキーの直線上に走り出していた。
ケルベロスは待ってましたと言わんばかりに炎を吐くのをやめ、俺の方に向き直ると硬質化させた頭で俺の全身に頭突きを喰らわせてくる。
(くそっ…!やっぱりこいつ…、知能が他のモンスターと桁違いに高い…敢えて俺を誘ったのか…!!!)
しかし俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
ケルベロスが俺を誘っているのはわかっていた。
長槍が乗っている魔法陣、戦闘中に俺みたいな前衛の戦士が書けるのは単純な【直進方向:射出】くらいのギミックしかないが、ケルベロスが油断しきった今この一撃は避けれまい。
「喰らいやがれ!!!」
【火属性魔法:炎炎槍砲台】炎をまとった長槍が、他の炎の小さな槍を連れて俺の頭上を通り過ぎてケルベロス目掛けて放たれていく!!!
ケルベロスはその場に地鳴りを起こしながら倒れた。
「熱っづあっあつあつつつつ熱!!!!!!!!」
ワッキーも体の所々の衣服を燃やしながら地面を転がっている。
「あれ、クエストの討伐対象にバカワッキーなんてありましたっけ?」
カナが歯に全く衣着せずワッキーを見下ろしながらそう言った。
「熱づぃいいい!!!!ねぇ!!!消火手伝ってくれても良いんじゃない!?!?!?あっっづづ熱!」
「落ち着け、今―」
ず砂ぁぁぁぁぁあ!
俺が素早く腰布をほどいて火をはたき消そうとした瞬間、大量の砂が転がるワッキーを埋めるように落ちてくる。
「砂は燃えないからな。便利だよな、こういう時。」
泰晴は冷静でユーモアも合って面白いやつだけど、時々なんズレている。
まぁ、そこも含め良いやつなんだけどさ。
「あ、ありがと…泰晴。カナ、お前後で覚えてろよ…。」
「まあまあ、そう言わず。回復魔法かけてあげますから!」
【回復魔法:何異蘆薈】カナはクリーム色の魔導ローブの下のポーチからアロエみたいな薬草を取り出すとワッキーにそれを搾り、さらに呪文を唱えた。
「いっ!痛だっただっだ!!!」
「あっ、ごめんなさい。これレモン塩だった。」
「どうやって間違えんだよ!!!???わざとか!?わざとなのか!?!?レモン持ち歩いてる時点で絶対わざとだろ!?!?」
「ちだ、違いますよっ!!これがあると湧き水が少しオシャレな雰囲気の飲水になるから持ってきたんですよっ!!!!!」
ま、この二人は相変わらずだな。
泰晴がちょっと羨ましそうにしてるのがなんとも可愛らしい、おっと、俺はホモォじゃないぞ。
「それにしても中々手強かったな…、他の皆大丈夫かな?」
俺は泰晴に聞いた。
「どうだろうな…。」
少し神妙そうな顔をしている泰晴。
と、さっき切り落としたばかりのケルベロスの首からモゴモゴと白い脂身のようなものが溢れ出て、目の無い石灰色の顔になる。
「!!?」
俺は咄嗟に槍を構え直す。
治癒魔法をかけていたカナに大蛇の尾が赤い目を光らせ、残像の線を描きながら喰らいつこうと牙を向けた。
泰晴は装備の盾を素早く取り出して咄嗟にかばうが、反動で闘技場の壁にふっ飛ばされた。
「これは!?」
俺は教官達の方を見る。
全員なんのことやら訳が分からないらしい、慌てふためきながらゴリハラ教官が「下がれ!!!!」と叫びながら闘技場観客席から飛び降りてこっちにやってくる。
けれどカナは動揺しているのかその場に杖を握りしめたまま動けず、俺も大技で魔力を使い切っている…
まずい…
さっきまでとは明らかにケルベロスの様子が違う、溢れ出る魔力の量も三倍、四倍、なにより禍々しさが桁違いだ…!!
凶暴化したケルベロスは黒紫の焔に包まれながら、紅い瞳をこっちにじつと向けたかと思うと、さっきまでとは比べ物にならない速さ、高速を法定速度無視でぶっちぎったような速さで襲い掛かる。
泰晴は受け身を取ったものの衝撃でまだ動けない、ワッキーもカナと同じ様に動揺していて反応が遅れる。
「「「カナ!!!!!!」」」
俺、泰晴、ワッキーの三人はケルベロスの一番最初の標的となったカナに叫んだ。