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第3話 悪辣!! エンピツ男の恐怖

 とある小学校──。

 校庭の花壇の影から校舎を眺める頭の尖ったヘンタイがいた。


「しゃしゃしゃしゃーぷ。拙者はエンピツ男。世の中にはシャープペンという便利なものができてしまったが、シャープペンごときにエンピツの崇高さを奪われてなるものか。この世界すべてをエンピツの世の中にしてくれるわ」


 エンピツ業界にとってはこの上ない救世主だが、彼の恐ろしい目的はそのあとであった。


 この世のすべての書き物をエンピツと変えたあと、そのすべてのエンピツを、鉛筆削りでは削れないレベルまで短くしてしまうという作戦なのだ。



 彼はこれを「鉛筆使えない作戦」と命名した。鉛筆の崇高さもへったくれもない作戦名である。


「しゃしゃしゃしゃーぷ。まずは、この学校内すべての児童の筆記用具からシャーペンをなくしてやろう」


 エンピツ男は、スーツを着込み、メガネをかけ、学校の先生へと変装した。



     ※



 キーンコーンカーンコーン。


 学校のチャイムが鳴る。

 子供たちが席について待っていると、がらがらがらと扉を開けて入ってきたのは見知らぬ先生だった。


「どちら様ですか?」


 子供とは思えないセリフで質問を投げかけるのは、学級委員の池田君(仮名)だ。


「しゃしゃしゃしゃーぷ。拙者は、今日から臨時教員としてやってきたエンピツ先生だ。皆の衆、控えおろう!」

「うちのクラスは武田先生のはずなんですが。武田先生はどうしたんですか?」

「武田先生は拙者が眠らせ……あ、いやいや、風邪をこじらせて家で眠ってるそうだ」


 ざわつく子供たち。


「そういうわけで、おまえ達の先生は今から拙者である。よーく、言うことを聞くのだ」


 エンピツ男の蛮行は計り知れないものだった。

 まずは子供たちに筆箱に入っているシャーペンを机に出させ、片っ端から回収してまわった。

 そして、どこからともなく大量のエンピツを配った。


「今日からノートに字を書く時はこのエンピツだけを使うのだ。いや、ノートだけではない。今後、一生このエンピツを使い続けるのだ」

「でも先生、これ1本だけじゃ、すぐに短くなって書けなくなっちゃいますよ」


 池田君が言うと、エンピツ男は高らかに笑った。


「しゃしゃしゃしゃーぷ。先生の言うことは絶対だ。それ以外を使うことは許さん。書けなくなるなら、書かなければよい」

「そ、そんな……」


 エンピツ男の横暴に、どこからともなく謎の声が鳴り響いた。


「そこまでだ!」

「むむむ!? 何奴!」


 教壇の上で身構えるエンピツ男。


「とおーーーー!!」



 がっしゃーーーん! と教室の扉をぶち破って入ってきたのは4人のスーツ姿のヘンタイたちだった。


「こどもたちのじゅんちゅ……純粋なここお……心をもてあそびゅ……もてあそびゅ……も・て・あ・そ・ぶ、怪人め! この俺たちが退治してやりゅ……やる! カミカミレッド!」


「二次元の子供と、現実の子供のギャップに戸惑いを覚える30歳、独身男。オタクグリーン!」


「…………(ボソボソボソボソ)」←つぶやきブルー!


「いきなり子供たちを人質にとるかもしれない悪役風ヒーロー、ミステリアスブラック!」


今回、おばはんピンクはスーパーに買い物に行ってお休みだ!!



「4人合わせてKY戦隊トクシュマン!!」



「キラン☆」とミステリアスブラックがミステリアスなポーズを取りながらミステリアスに言う。



 こどもたちは、突然の出来事にポカンとするだけだった。

 しかしエンピツ男だけは自分の計画がばれたことに苛立ちを覚えていた。


「トクシュマンだとお? しゃしゃしゃしゃーぷ。貴様らのようなやつらに、拙者の偉大なる計画を邪魔されてなるものか」

「偉大かどうかはともかく、子供たちから奪ったシャーペンは返してもらうぞ!」

「しゃしゃしゃしゃーぷ。貴様らのようなヘンタイに果たしてできるかな? くらえ、エンピツつんつん攻撃!」


 エンピツ男は先の尖ったエンピツを数本取り出し、カミカミレッドにつんつん突き刺した。


「痛っ、い、いや、むしろくすぐったっ! やめろ、やめろって!」

「しゃしゃしゃしゃーぷ。尖ったエンピツでつんつんされると痛くもありくすぐったくもあるヘンな気分になるであろう」

「痛っ! くすぐった! 痛っ! くすぐった!」

「どうだ、参ったか」

「参るか!」


 子供たちは、ただただポカーンと目の前の闘い(?)を見つめるばかり。


「今助けるぞ、リーダー!」


 そこへオタクグリーンが助けに入った。彼が取り出したのは、キン肉○ン消しゴムだった。


「貴様など、このキン〇マン消しゴムで消し去ってくれる!」

「い、いや、キ〇消しって……」


 子どもたちには世代が違うため何が何やらよくわかっていない。

 そもそもキン肉○ン消しゴムは消しゴムではない。


「ひいいい! け、消しゴムぅぅぅ!?」


 しかしエンピツ男には効いたみたいだった。


「いまだ、リーダー!」

「よ、よし、最終兵器バズーカだ!」


 4人はどこからともなくバズーカを取り出しセットした。


「ちがう、そこ。そこの溝に合わせて……」

「こうか?」

「違うって。そこのつまみを……」

「あ、ここネジ外れてる」


 しかしいつも5人で組み立ててるため、要領が悪かった。

 時間を稼ぐため、オタクグリーンが次々と○ン肉マン消しゴムを出していく。

 そのたびに、エンピツ男は新たに現れるキン肉マ〇消しゴムで悲鳴をあげている。


「早くしてくれ、リーダー! キン肉○ン消しゴムのストックが尽きそうだ!」


 早くも大ピンチなトクシュマン。

 しかしなんとか最終兵器バズーカを組み立てられたトクシュマンは、エンピツ男に照準を合わせた。


「よ、よーし! できたじょ……できたぞ! くりゃ……くらえ! 最終兵器……」 



 どきゅーーーーん!!



 バズーカはエンピツ男に直撃し、教室の壁を数枚ぶち破り、3クラスほど通過して空へと舞いあがって四散した。


「これは餞別だ!」


 オタクグリーンがキン肉○ン消しゴムを空へと放り投げた。


「なんだなんだ、何事だ!!」


 すぐに学校中の先生がやってきた。

 教室にはスーツ姿の4人のヘンタイがいた。


「な、な、な、なんだね、君たちは!」

「武田先生はどうしたんだ!?」

「俺たちは、地球の平和をまみょ……守るせいり……正義の使者トクシュマン! では、さらば!」


 トクシュマンたちは、ダッシュで校庭を駆け出して姿を消したのだった。



 今日も平和を守ったトクシュマン。彼らの戦いはまだまだ続く!


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