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第2話 極悪!! エビ男の恐怖

 某企業──。

 オフィスのロビーに置いてある鉢植えの隙間から、1体のエビの頭をした怪人が姿を現した。


「えびびびび。この国は、前のめりになる奴が多すぎるエビ。全国民をエビぞりにしてくれよう。えびびびび」


 エビ男は、出社してきたサラリーマンたちに向けて、ところかまわず謎のビームを放射した。


「えびびびび、これできゃつらはエビぞりとなり、自信たっぷりに仕事ができるエビ」


 そう笑うと、エビ男はそっとエレベーターに乗り込んでサラリーマンに交じってオフィスの中心部に向かった。



     ※



 まだ若い社員の佐々木和夫(仮名)は、意欲に燃えていた。

 今日から新たな取引先との商談が始まるのだ。この商談が成立すれば、和夫にとっては大きな一歩となる。

 なんとしてもこの商談は成立しようと、こぶしを握りしめていた。

 とはいえ、まだ若い和夫には上司が一人ついていた。


「一応、監督役で私がいるが、今日の商談はすべて和夫くんに任せる。がんばってくれたまえ」

「はい! なんとしてもこの商談は成立させます!」


 そこへ、取引先の社員が姿を見せた。

 和夫の上司よりも若干年配の男性だ。


「どうも、○×社の丸山です」


 丸山と名乗るサラリーマンが名刺を取出し、和夫と上司に渡した。


「これはご丁寧に。私は△商事の佐々木と申します」



 和夫が名刺を取り出して相手に渡そうとしたとき、悲劇は起きた。



 かくん。



 お辞儀をしたつもりが、なぜかエビぞりになってしまう。


「こ、これ、佐々木くん」

「あ、し、失礼しました。私が、△商事の佐々木……」



 かくん。



 名乗ると同時にエビぞりになる和夫。

 相手の男も目を丸くする。


「こ、これ、佐々木君。ふざけてないできちんとお辞儀しなさい」

「は、はい、わかっているんですけど……おかしいな。申し訳ございません」



 かくん。



 お詫びの言葉と同時にエビぞりになる。


「き、君は私をおちょくっているのかね!?」


 とうとう頭にくる丸山氏。


「い、いえ、そんな、めっそうもない。お辞儀をしようとするとエビぞりになってしまうんです」

「申し訳ございません、部下の佐々木に代わって私がお詫びいたします」



 かくん。



 今度は上司がエビぞりになる。


「ふ、二人して、そんな態度をとるとは! わが社をバカにしてるとしか思えない! こんな商談はなしにしてもらう」

「いえいえ、待ってください、丸山様。なぜかわかりませんが、お辞儀ができなくて……」


 エビぞりしながら、ふんぞりかえった姿勢で言い訳をする和夫と上司。

 かなりの上から目線だ。


「おかしい、これはどういうことだね、和夫くん」

「わ、わかりません。お辞儀ができなくなってしまってます」

「えびびびび。それは我輩の仕業だエビ」


 その時、3人の前にエビぞりで笑い続けるエビの頭をしたヘンタイが現れた。


「な、なんだ、このヘンタイは!」


 丸山が驚いて腰をぬかす。


「えびびびび。この国は前のめりになりすぎるのだエビ。こうやてエビぞりになったほうがよいのだエビ」

「お辞儀は日本人の心だ。エビの貴様にわかるものか!」

「えびびびび。ならば、その心を一生使えないようにしてやろうエビ」


 エビ男の目がぎらりと光る。



「そこまでだ!!」


 その時、どこからともなく声が聞こえた。


「むむ、何奴!?」

「とう!」



 がしゃーん!!



 オフィスの扉をぶち破って5人のスーツ姿のヘンタイが姿を現した。

 しかし勢い余って赤いスーツの男はぶち破った扉とともに床に転がっていった。


「だ、誰だね、君たちは! ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」


 和夫が驚いて注意する。

 しかし突然現れたスーツ姿のヘンタイたちは無視して立ち上がり、自己紹介を始めた。


「地球のせいり……せいぎをまみょ……守るためにけっしぇ……結成されたせいり……正義の使者、カミカミレッド!」

「今週のアニメはすべて予約録画済み! アキバ系男子オタクグリーン!」

「ボソボソ(つぶやきブルーは小声すぎて声が届かない!)」

「ふぅふぅ、このスーツ、暑くて疲れるのよねぇ、ダイエットしようかしら」

「いきなり敵となるかもしれない男、ミステリアスブラック」



「5人合わせて、KY戦隊トクシュマン!!」



「にゃん♪」

 とオタクグリーンがキモいポーズを決める。



「け、KY戦隊だとぉ!? 貴様らのようなわけのわからん連中にやられる我輩ではないわ。くらえ、エビぞりビーム!!」


 エビ男から謎の怪光線が発射されると、トクシュマンたちを包み込む。


「ふははははエビビビビーー!! これで貴様らはお辞儀ができなくなった。お辞儀をしようとすればエビぞりになるのだ!! ふははははエビビビビビーー」


 勝利を確信するエビ男。しかし彼は大きな過ちを犯していた。


「フ。残念だが、我らトクシュマン、貴様ら悪党にお辞儀をすることなどありえん。むしろ、見下してやる」

「エビ?」


 ミステリアスブラックが冷たい目線で腕を組みながらエビ男を見下している。


「エビ男ごときが人間様を見下そうなんて100年早い!」


 そう、エビ男のエビぞりビームは、普段お辞儀もしないトクシュマンたちにはなんの効果もなかったのである。


「そして、この状態でも必殺兵器は使えるのだ!」

「エビビビ!? ちょ、ま……」



「最終兵器バズーカ!」



 トクシュマンたちは、どこからか取り出したバズーカをセット。

 オフィスのど真ん中でいきなりぶっ放した。



「エビビビーーー! 貴様らには日本人の心がないのかーーーーー!」



 バズーカの玉はエビ男に直撃し、オフィスの壁を5枚ぶち破って空高く舞い上がっていって四散した。

 すべての壁がなくなり、フルオープンとなったブラック企業の某オフィス。

 その中心でカミカミレッドはヘルメットの汗をぬぐう仕草をしながら言った。


「ふう、今日も手ごわい相手だったぜ」


 カミカミレッドたちはそう言うと、脱兎のごとくオフィスから逃げ出したのだった。



 トクシュマンたちの戦いはつづく! たぶん!

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