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第1話 非道!! カニ男の恐怖

全5話完結。


こちらは2010年くらいに書いた作品です。

自分で読んでも「これはひどいww」と思える内容で、長らくお蔵入りにしていました。

一緒に「これはひどいww」と思ってもらえれば幸いです(笑)

 都内某所、閑静な住宅街──。

 今、まさに悪の軍団がこの街の平和をおびやかそうとしていた。


「カニっ、カニっ、カニっ。今日から人類はカニの恐怖にひれ伏すのだ」


 電柱の影から現れたのはカニの胴体と頭を持った謎の怪人カニ男だった。


「SYUUU! カニ男様、あくどいことは我らにお任せを!」


 電柱の影からさらに5、6人の黒タイツの怪人たちが現れた。

 シュッカー軍団と呼ばれる、いわゆる雑魚キャラたちだ。

 電柱の細い影のどこに隠れていたのかまったくもって謎である。


「SYUUU! 我らは何をすればよろしいので?」

「そうだな、まずはこの辺りのご家庭にあるすべてのハサミをカニのハサミにすり替えるのだ」

「SYUUU! さすがカニ男様、それはあくどい。ではさっそく参りましょう」

「カニっ、カニっ、カニっ。人間どもよ、カニの恐ろしさを味わうがよい」


 今、まさにカニ男の恐怖が始まろうとしていた──。



    ※



 とある一軒家。

 主婦の鈴木和代(仮名)はリビングで通販カタログとにらめっこをしていた。手持ちの家計簿と見比べ、吟味に吟味を重ねる。

 そして、あるページを開いた主婦の目がキラリと光った。


「これだわ! いま、我が家に必要なアイテムは!」


 それはベルトを巻くだけでお腹が引き締まるという、鈴木家というよりも和代個人に必要な、そしてなんともうさんくさいシロモノだった。


「えーと、送料込みで19,800円? うそ!? そんなにするの?」


 和代は0.5秒ほど悩んだが、すぐにハサミを取り出した。


「ま、そんな値段でウエストが引き締まるなら安いもんよね。夫だって太った妻よりスタイル抜群の妻のほうがいいだろうし。仕事に身が入って出世するかもしれないわ。あら、やだ。もしかして、これって一石二鳥めいてない? 買わなきゃ損よね」


 どことなく言い訳めいたセリフを吐きながら和代は注文用のハガキをハサミでカタログから切り出した。


 チョキ

 チョキ

 チョキ



 まったく切れない……。


「何よこれ。全然切れないじゃない!」


 和代がよく見ると、彼女が握っていたのはカニのハサミだった。


「あれま!? ハサミだと思ってたらカニのハサミだわ!」


 使うまで気が付かないほうもどうかしているが、和代はピンときて急いでキッチンへ向かった。昨晩はカニなど食べてはいない! いや、ここ最近、カニなんて豪華なものは見てもいない!


(きっと夫だわ! 昨晩は遅かったもの。私に内緒でカニを買ってきて一人で食べたんだわ! なんて奴。もともと気の利かない夫だったけど、そこまで薄情だったなんて。もう離婚ね!)


 カニ1杯でキレる主婦和代。彼女はキッチンの扉を開けた瞬間、見てはいけないものを見てしまった。


「カニ、カニ、カニ。早く料理用のハサミを探し出せ。もうじき主婦の方々が夕食の支度を始める時間だぞ」

「SYUUU。それが、なかなか見当たらなくて……」


 キッチンにはカニの頭をしたヘンタイと黒タイツ姿のヘンタイが数人いた。


「ど、どちらさまですか!?」


 和代は思わず叫んだ。


「カニ!?」

「SYUU!?」


 時が止まった。


「勝手に人の家のキッチンに上り込んで何をしてるんですか!?」

「カ、カ、カニ? わ、我輩は、陸に上がったまま迷子になってしまったカニ。う、海はどっちカニ?」


 カニ男は苦し紛れの言い訳をした。

 もちろん、主婦和代には通じない。すぐさま携帯電話で警察に通報した。


「もしもし、警察ですか? 実はいま、家に泥棒が……」

「シュッカーよ! あの主婦を押さえつけるのだ!」

「SYUUUU!!」


 雑魚キャラのシュッカーたちが素早く主婦の身柄を拘束した。ロープで縛りつけ、叫ばれないように口にタオルを巻く。


「むぐぐぐ……」

「まさか、1軒めで我輩らの悪事が見つかるとはなカニ。地球人は侮れんカニ」

「SYUUU! カニ男様、料理用のハサミがありました!」


 シュッカーの一人が料理棚の奥にしまってあった料理用ハサミをカニ男の前に持ってきた。


「カニ、カニ、カニ。では、代わりにこのハサミを置いておくのだ」


 和代が驚愕の表情でカニ男を見つめる。


「むぐぐぐ?」

「カニ、カニ、カニ。そうだ。子供部屋に置いてあったカニのハサミも我輩の仕業だ」

(え!? そっちも!?)


 完全に和代の考えてることと違うことを暴露するカニ男。


「SYUUU! カニ男様、ここの家のハサミはすべてすり替えました!」

「よし、では次のご家庭に行こうカニ。おっと、ご夫人。このことはご内密に。……カニ」


 そう言ってカニ男が玄関から出ようとした瞬間、家のガラス戸を勢いよく割って5人の集団が飛び込んできた。


「そこまでだ、カニ男!」

「むむ、何奴!?」


 粉々に砕け散ったガラス片をはらい落としながら、赤いスーツに赤いヘルメットをかぶった男が指をさす。


「地球のせいり……正義を守るためにきぇっせ……結成されたせいり……正義の使者だ!」


 赤いヘルメットの男は滑舌が悪いのかカミカミだ。


「正義の使者だとお?」


 カニ男たちは怪訝な表情で、突如現れた5人のヒーローに目を向ける。


「しぇり…セリフを噛まなきゃイイ男、チームのリーダー、カミカミレッド!」

 赤いスーツの男が両腕を広げながらポーズを決める。


「美少女フィギュア集めに命をささげるオタクグリーン!」

 緑スーツの太った男が腕を胸に寄せてキモいポーズを決める。


「敵か味方かわからない謎の男ミステリアスブラック」

 黒いスーツの男が腕を組んでポーズを決める。


「スーパーの特売日は欠かさずチェック、おばはんピンク!」

 ピンクスーツの中年女性が仁王立ちでポーズを決める。


「…………ボソボソ、ボソボソ」

 青いスーツの男がボソボソつぶやく。



「5人合わせてKY戦隊トクシュマン!!」



 後ろで、つぶやきブルーがパーン!とクラッカーを鳴らす。


「…………」


 和代は開いた口がふさがらない。まあ、もともと口はタオルでふさがれているのだが。

 それはともかく、割れたガラスをどうしてくれるのか。和代の頭はそれだけである。


「トクシュマンだとお? カニ、カニ、カニ、貴様らのようなヘンタイにやられる我輩ではないカニ」

「カニの頭をしたヘンタイに言われたくはないな!」


 にらみ合うヘンタイたち。

 和代の目から見ればどちらもヘンタイだ。


「いけ、シュッカーたちよ! 奴らを倒すのだ」

「SYUUU!」


 シュッカーたちがトクシュマンに襲いかかる。そして、和代の家のキッチンでバトルが始まった。



「とお!!」


 カミカミレッドがしゃもじでシュッカーの頭をこづいた。しゃもじが粉々になったのでお玉でさらに殴った。お玉が根元からひん曲がったのでまな板で思いきりたたいた。最後は、食器乾燥機をコードごと引っこ抜いてシュッカーの頭に炸裂させた。シュッカーは倒れたが、食器乾燥機もバラバラに砕け散った。



「ボソボソ、ボソボソ……」


 つぶやきブルーが皿を投げつけた。シュッカーはひょい、とかわした。皿をさらになげつけた。さらにかわされた。茶碗や湯飲みを投げつけた。

 ひょいひょいひょひょい。

 戸棚にあった食器がなくなったので、あきらめてつぶやきブルーが素手で殴りかかった。まだ投げてくるかと待ち構えていたシュッカーは油断して殴られ、気絶した。



「萌え萌えビーム!」


 オタクグリーンが水道の蛇口を指で押さえた。少しあいた隙間から勢いよく水を噴き出すと、シュッカーに思いきりかぶせた。

 しかしシュッカーは水浴びでもしているかのように仁王立ちで受け流す。

 蛇口の水を高温の熱湯にかえてみた。

 マグマのような高熱のお湯がシュッカーに襲い掛かる。芸人顔負けのリアクションでぶすぶす音を立てながらシュッカーは倒れこんだ。ついでにオタクグリーンの指もまっ赤っ赤だ。



「うふふ、女性の方必見よ」


 おばはんピンクはキッチンの奥に隠してあったヴィトンのバックを発見。中に石や水の入ったペットボトルを入れた。そしてそれを振り回し、シュッカーにたたきつける。そうすることでバックは女性の身を守る武器となるのだ。

 シュッカーは倒れたが、ヴィトンのバックは持ち手からブチっと切れていた。



「ふ」


 ミステリアスブラックは近くにあったポールハンガーを振り回す。食器棚や扉が割れまくる。しかし、確実にシュッカーの一人を倒していた。

 残るはカニ男だけだ!



「おのれー! 他人の家だと思って好き勝手やりおって!」


 カニ男は怒り心頭。しかし、それは和代のセリフだ。


「我輩が貴様らを成敗してくれるわ! でやあーーー」


 カニ男が向かってくる。

 トクシュマンたちは、どこから持ち込んだのか大型ランチャーをセット。

 猛進してくるカニ男に照準を向けた。


「くりゃ……くらえカニ男! これがオレたちの、しゃい……最終兵器! その名も……」


 言うより早く、ランチャーからビームが放たれた。


「ぐげげげげーーーーー」


 ビームに吹っ飛ばされながら、カニ男は和代の家の壁を突き抜け、さらに3軒隣の家の壁を突き破り、天まで飛んで行った。


「ぎゃーーーーー!!」


 そしてはるか上空で爆発四散する。

 壁がぽっかりと空いたリビングでぽかーんと見つめる和代の縄をほどき、ミステリアスブラックはクールに言った。


「ご夫人、このことはご内密に」


 そして脱兎のごとく逃げ出す5人。

 地球の平和のために、正義の味方の物語が始まる!!

反応が怖いので感想欄は閉じてます(汗)

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