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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第85話 我が城へようこそ



「ふっふふふ……我が城へようこそ! さあ、中へと入るがいい!」


 やけに上機嫌なルーアの後に続き、外付けの階段を上がった先に。ルーアの暮らしている部屋がある。

 玄関から、部屋の中に入る達志。外観に比べると中は広く感じられたが……それよりも、目を引いたものがある。


「お邪魔しま……スゲーななんか」


 お邪魔しますを言うよりも先に、目に飛び込んできた光景に唖然。

 そこには……なんと言うか、中二感満載の道具が、てんこ盛りだった。


 玄関先ではドクロの置物がお出迎え。中では黒いカーテンや黒い物物などあり……なんかとにかく黒い物が多かった。

 どうして中二病は、こうも黒い物を好くのだろう。イメージでしかなかったけれど。


 あくまでフィクションの世界でしか見たことがなかったが、今目の前にあるものを見て、確信した。


「かっこいいでしょう?」


「……まあ、価値観の違いは置いとこうぜ。お邪魔しまーす」


「今ものすごく自然に受け流しましたね!?」


 この内装がかっこいいかどうかはともかくとして、とても印象強いのは確かだ。一度見たら忘れられない、とはこういうことだろう。

 幼なじみである由香とさよなを除けば、人生初、女の子の家にやって来たのだ。


 それがこれとは……ルーアが特殊なのだとは思うが、他の女の子もこんなじゃないだろうな、と不安になってしまう。

 だが、同居しているリミの部屋は、ごく普通のかわいらしい内装だった。なので、ルーアが特殊なだけだろう。


「えっと、親はいないのか? いるなら挨拶でもしたいんだけど……ってか、よくこの内装で何も言われないな」


 玄関からリビングへと行き、その間にもルーアの親の姿が見えないことに気付く。家に上がった身としては、挨拶くらいしておくのが礼儀だろう。

 それにしたって、親がこの家の内装について何も言わないとは。

 もしやルーアの親も、彼女と同類なのか。


 何気なく言った言葉。だからかルーアも、なんでもないという風に、口を開いた。


「あはは、そうですね。親はいませんよ。だから、なにをしてもなにを言われる心配もないんですよ」


 ……危うく、すんなりと聞き逃すところだった。あまりにも自然に、あっさりと言うものだから。

 親はいない、と言った。だがそれは、この時間にいない……そういう意味には、聞こえなかった。


「えっと……今の、ってどういう……」


「オレンジジュースでいいですか?」


「え……あぁ、はい」


 呆然と立ち尽くす達志であったが、それを尻目にルーアは、冷蔵庫の中からオレンジジュースを取りだし、それをコップに注いでいく。

 話を遮られはしたが、それは話したくないから……というわけではなさそうだ。タイミングがうまく重なっただけだろう。


 現に、テーブルに二つのコップを置いたルーアは、先ほどの達志の質問に対して答える。


「私の両親は……亡くなったんです。私が高校に入る前ですから……二年ほど前でしょうか」


 ソファーに腰掛けたルーアは、コップを両手で持ちつつ、ぽつぽつと話し始める。オレンジジュースを口に運び、喉を潤す。

 オレンジジュースが好きなのか、表情がとろけている。


「おや、どうしましたタツ。どうぞどうぞ」


「……んん」


 未だ突っ立たままの達志に、自分の隣を、ぽんぽん叩いて示す。ここに座るようにということか。

 話の内容があまりに大きすぎるのと、いきなり隣に座るよう言われたのとで、すでに達志の頭はいっぱいいっぱいだ。


 とはいえ、このまま呆然と立ったままというわけにもいかないので……


「じゃ、じゃあ失礼します……」


 なんとか体を動かし、ルーアの隣に腰掛け、同じくオレンジジュースを飲む。

 渇いてしまった喉が潤っていく。


「……えっとルーア……聞いちゃダメなんならやめとくけど、さっきのって……」


 中途半端に話が切られてしまったせいで、どう切り出したらいいかわからない。だから、恐る恐るではあるが直球に、聞いてみた。

 するとルーアは、手に持っていたコップをテーブルに置いて、話し始めた。


「あはは、別に気を遣う必要はないですよ。もう吹っ切れてますから。

 ……私の両親は、二年ほど前に亡くなりました。なので、今は一人暮らし……というわけです」


 こちらに気を遣わせないように明るく振る舞っているのか、それとも言葉通り吹っ切れているからなのか。なんでもないように答えるルーアの、真意はわからない。

 ただ、たった二年かそこらで、両親の死を吹っ切れるものだろうか。


 そういえばさっき、「両親も喫煙者『だった』」と言っていた。それは、こういうことだったのか。


 なんと声を掛けたらいいのかわからない達志にお構いなく、ルーアは続ける。


「事故……でした。交通事故。信号を渡っている時に、トラックに轢かれてそのまま」


「それって……」


「えぇ、どちらかの信号無視。で、実際には……青信号を渡っている両親のところへ、トラックが突っ込んできたとのことでした。

 しかも原因は、トラック運転手のわき見運転だと。なんか、ポチポチやっていたみたいですよ」


 相変わらず声の調子はいつも通りであるが、本当にいつも通りなのか、その判別は達志にはできない。

 なんせまだ、会って数日しか経っていないのだから。


 同時に、達志は先ほどのルーアの言動に納得いった。家に来るまでルーアは、歩きながらスマホなどを操作している人を見つけては、辛辣な言葉を投げかけていたが……

 なにも、それはルーアの好みの話だけではなかったのだ。


 両親の事故の原因が、トラック運転手のわき見運転。だから、先ほどはあんなにも、敵対心をむき出しにしていたのだろう。

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