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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第80話 部活に入りました



 ……あの激烈な復学初日から、数日が経った。


 初日が初日だけに、波瀾万丈な日々が始まると構えていた達志であった。だが、驚くことにと言っていいのか、あれからは特に何が起こるわけでもなく。

 比較的、平穏な日々が流れていた。


 まあ驚くとはいっても、多分あれが異常なのだが。


 とはいえ達志にとっては、一日一日が驚きの連続だ。魔法ありきのファンタジー世界になった世界での学校生活は、新鮮の一言に尽きる。

 初日ほどの騒動はなくとも、退屈しない日々を過ごしていた。


 数日のおかげで、達志もある程度学校生活慣れてきた。そんなある日……


「……で、結局テニス部にしたと」


「おう。懐かしのテニス部……そしてマルちゃんへの、リベンジのためにもな!」


 昼休み時間、教室は自然と騒がしくなる。

 それぞれ弁当を持ち寄る者、学食、購買へ向かう者……各々がそれぞれの時間を過ごす。


 教室の中に複数あるグループ。その中の一つに、達志を中心としたものがある。

 食事の途中でも……いや、こういう時間だからこそ、会話は弾むものだ。


「タツシ様が決めたこととはいえ、些か残念です。……はむっ」


「むぅう……せっかく我が『魔法部』に来るかと思っていたのですが、見学にすら来ないとは」


「何その捻りもない部活名。しかも我がって……」


 自身が所属している部活を、さも自分のもののように語る眼帯少女ルーアは、弁当箱に詰め込んだ食パンの耳に手を伸ばしながら、会話を続ける。


「そりゃあ……もぐもぐ……設立したのは私ですし、我がぶふぁふおろうれんでひょふお。ごっくん」


「食ったまま喋んな汚い後半何言ってるかわからん」


 弁当に詰められたご飯を、おかずと共に食べながら、会話に花を咲かせる。

 話題は、達志がテニス部に入部したこと諸々についてだ。


 中でも話に食いついてきたのが、ルーアだった。


「我が部活も同然ですよ!」


「お、おう。けどそれはすごいな……部活の名前も、設立したのがルーアって情報も。

 なんか興味はあるわ。いろんな意味で」


「でしょう!? とにかく魔法をバンバン使って、あれこれして成長させようという、素晴らしい部活なのですよ!」


「それお前が魔法撃ちたいだけじゃね?」


「そうとも言えるし、そうでないとも言えますね。

 他にも走り込みとか、筋トレとか、ゲームやったりとか……」


 興奮気味に、自らが設立した部活のことを話すルーア。そのせいで、もはや達志の入部した部活というよりも、ルーアの話になっている。

 達志としては、いろんな話を聞けるから全然いいのだが。


 頭悪そうな部活名な上に、内容がもはや部活ではなくサークルだ。筋トレとか関係ないし。

 ……本人が満足そうなのでとやかく言うつもりはないが。


「せっかくタツが来てくれると信じてたのに! 魔法部には今部員が四人しかいなくて、後一人来ないと廃部なんですよ!

 こういうのって、転入生が五人目に来て廃部阻止っていうストーリーでしょう!?」


「知らねえよ、なんだその一方的な信頼! 来てほしいなら諸々の詳細かせめて部活名くらい教えてくれる!?

 それに俺転入生じゃねえし!」


 理不尽なルーアの物言いに、理不尽だと達志は返す。

 そういうストーリーが頭の中でできあがっているのなら、せめて一言くらい教えてほしいものだ。誘われてもいないし。


 それにしても……


「なんで部員それだけなんだ? 楽しそうな部活なのに」


 部員の数が気になる。設立したばかりだからだろうか。

 それを問いかけると……


「部活設立当初はそれなりにいたんですよ。けど、やめていく人が続出して。

 ……やれお前の魔法の練習台になってたら体がもたないだの、やれもうついていけないだのと、皆訳のわからないことを……」


「オーケーわかった。部員がやめていく理由も、それが訳のわからないことじゃないってことも」


 部員はいたのだが、やめていったらしい。

 確かに、ルーアの魔法……あの規模の威力の練習台になれと言われたら、大抵は逃げ出すだろう。


 いくら自由な部活とはいえ、命がもたない。というか、練習台ってめちゃくちゃ恐ろしいことをしている。


 逆にそれでよく三人も残ったものだ。それがまた不思議だが、曰く……


「私の魔法を受けると、気持ちいいんだとかなんだとか。私の魔法に快楽機能なんてないはずですが……」


「それは練習台生徒が特殊な性癖の持ち主ってだけだろ!」


 不思議そうなルーア。本人はわかってないようだが、現在の魔法部にはルーアを除いて、痛いのが気持ちいい特殊な人たちしかいないヤバい部活らしい。

 その、ヤバいのがどうヤバいのか教えてやるつもりはないが。


 ある意味ルーアもヤバい人だし、とんでもない。


「ルアちんが魔法部、リミたんが調理部、タツがマルちゃんと同じくテニス部……いやあ、それぞれの人間性がよく表れてると思うわ」


「え、マジで? まったくそんなこと思わないんだけど」


 現在机を囲っているメンバー。達志、リミ、ルーア、そしてヘラクレス。

 その中で冷静に分析する、手を生やして弁当を食べるスライム。彼を見ながら、達志は自前のお茶を飲んでいく。


 スライムの体から手が生える光景を見慣れてしまった自分が、なんだか怖いなと感じながら。慣れって怖いよね。


「そういうヘラは、なんの部活入ってんのさ」


「折り紙研究会」


「!?」


「ちなみに部員は三十はいるぜ」


「!!?」


 達志以外も初めて知ったのか、驚いたルーアが「部員何人かわけてくれだ」のギャーギャー騒いでいる。

 やはりもう部活ではない気がするし、そもそも会って言ってるし。


 だがそこをツッコむのは、いろいろとめんどくさそうなのでやめた。

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