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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第74話 体験入部のお時間



 達志をなめ回すように観察していたヤーをじぃっと見ているリミをチラ見しているマルクス。

 異様な光景の中心にいる達志は、ちょっと居心地が悪い。


 ……が、そこで静寂を破ったのはヤーだ。


「まっ、それはそれとして体験入部、楽しんでいきなよ! ほんじゃ、いろいろ教えたりしたって。

 頼んだよ、副部長!」


 あはははと笑いながら、達志の背中をバンバン叩き、最後にマルクスの背中をパンッと叩いて、ヤーは部員たちの所へと戻っていく。

 出会って数分だが、騒がしい人だな……というのは、痛いほどわかった。


 で、残された三人。ヤーが残した言葉を思いだし、達志は驚いた表情で……


「お前……副部長なの?」


 見た目だけならガチガチの不良で、副部長なんてとてもとても。メンバーをまとめるなんて、恐怖政治でくらいしかムリそうなのに。

 しかし、ヤーの対応や、対するマルクスの態度は堂々としたものだ。

 やはり中身優等生か。


「あぁ、そうだ」


 副部長であると主張するマルクスは、どこか誇らしげだ。どや顔だ。

 もしやリミに、いいところがあるとアピールしようとしているのだろうか。


 まあ、どこの誰だかわからない人に教わるよりも、知った人物の方がいくらか気が楽だ。

 それに、見た目はあれだが、スライムや中二娘に比べれば真面目に教えてくれそうである。


「じゃあせっかくだし、やってみるかな。いろいろ教えてくれよ、マルちゃん副部長」


「マルちゃん言うな」


 マルちゃん……マルクスに、テニスのラケットを渡される。

 かつてテニス部であった達志にとっては、懐かしい感触だ。グリップを握り、その場で軽く振ってみる。


 うん、懐かしい。


「それで、元々テニス部所属だったようだが?」


「あぁ。言っちゃなんだが、それなりにうまい方だったぜ」


「ふん……十年前は、だろ」


 いきなりの刺々しい言葉に、達志の頬も引きつってしまう。

 とはいえ、間違ってはいないだろう。


 あの頃はどうあれ、確かに今となっては、スポーツどころか少し走っただけで息切れを起こす始末。

 いきなりテニスなんかできるはずもない。元テニス部の達志には、よくわかっている。


 ……わかっている、はずなのに。


「ま、まあ? 確かに俺は弱くなったかもしれないけど……だからマルちゃん以下ってのはないんじゃないか?」


「……ほう?」


 なぜこんな強がりをしてしまうのか? だって男の子だもの。リミが見てるんだもの。かっこつけたいんだもの。

 そう、これは強がりだ。魔法のおかげで日常生活に支障がないとはいえ、普通に考えて十年眠っていた男が、現テニス部に勝てるはずもない。

 まして、相手は副部長だ。


 これが強がりなのは、達志本人だけではなくマルクスだって見抜いているはずだ。

 ……だがマルクスは小さく呟くだけで、それっきり黙り込んでしまう。


 そして、達志の顔を軽く、睨みつけた。

 軽くなのだが、見た目がガチガチの不良なのでマジで怖い。


「……な、なんだよう」


「そこまで自信があるなら、証明してみてくれよ。僕と試合をしよう」


 とんでもないことを言い始めた。まさかの展開に、冷や汗が流れる。こいつ正気か?

 そんな思いでいっぱいだ。強がった上で挑発した、達志も達志だが。


 ここで試合を受ければ、間違いなく達志はボロカスにやられるだろう。

 体力面という点から素人相手でも負けそうなのに、勝負になりそうもない。そんなことマルクスもわかっているだろうに。


 まさかこいつ、達志に恥をかかせるつもりか?

 ここにはリミがいる。リミの前で、達志のかっこ悪いところを晒してしまおうという腹積もりだろうか。

 そうに違いない。


「お前……性格悪いな。ガキかよ」


「なんのことだか。それにその台詞、そっくりそのまま返してやるよ」


 むぅう……と達志は苦い顔だ。そもそも達志が変な意地で強がったのが始まりだ。そこを責められると、ぐうの音もでない。

 とはいえマルクスもマルクスだ。言ってしまえば、二人ともガキなのだ。


「いいぜ、受けて立ってやる。覚悟しな」


「もちろん加減はしてやる。ハンデもつけようか?」


「い、いらんわ」


 内心、冷や汗が止まらない。だがそれを表に出さないように、あえて不敵な笑みを浮かべてやる。

 声が震えてないだろうか、びびってるのバレてないだろうか。


 ラケットを握り、改めて感触を確かめる。懐かしい、感じだ。

 現実では十年の時が経っているが、達志の感覚では、テニス部に所属していたのはほんの数日前だというのに。


「ほう、サウスポーか」


「あぁ、そうだ」


 互いにコート上の定位置に立ち、構える。

 マルクスは、左手にラケットを構える達志を見て、サウスポー……左打ちであることを確認する。


 だが、この部には他にもサウスポーならいる。珍しくもなんともない。


 いつの間にか、達志とマルクスの試合を見ようと見学者が集まってきている。

 練習を中断して見学する者、休憩がてら見学する者、様々だ。


「……誰も止めねえのかよ」


 見学者が多くなるばかりで、誰も止めに入ってくれないことに、達志苦笑い。

 ここで誰かが止めに入ってくれれば、なし崩し的にやめることができるのに。


 元テニス部とはいえ、体験入部で副部長と勝負とか、どんな無茶ぶりだ。その上体力は以前とは比べ物にならないほど、低下している。

 ……まあ、挑発したのは自分からだが。


 そもそも、体力面が以前のままだったとしても、勝てるかどうか。

 確かにテニスはそれなりにうまい方ではあったが……それでも、一部員に過ぎなかったのだから。


「おーいマル副部長、ちゃんと手加減してやれよー! いや、マルちゃん副部長の方がいいか!?」


「誰がマルちゃんだ! ってなんで広まってるんだ!」


 ……クラスや部長以外からでもいじられる男、マルクス。


「ごめーん! かわいかったからつい!」


「あんたのせいか部長!」


 向こうは余裕にさえ見える。それはそうだろう、マルクスにとって今の達志など、相手にもなるまい。

 そんなこと、達志自身が一番よくわかっている。


「ホント、なんであんな挑発しちまったんだか……」


 自分で自分に呆れてしまう。このバカ野郎。

 そもそもかっこつけたかった云々の前に、ここで負けた方が格好がつかないじゃないか。バカかよ。


「サーブ権は貴様にくれてやる」


 せめてもの計らいか、サーブ権は達志からスタートだ。

 今回は一応体験入部なため、一セットのみだ。先に一セット取った方の勝ち。


 ……考えてみれば、達志を貶めるというのは達志の考えすぎで、これは単に体験入部としての儀式みたいなものかもしれない。

 わざわざ副部長が出てくるかは、謎だが。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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