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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第53話 トサカ人間



「はぁあああ!?」


 ルーアの発言に、驚嘆の声を上げる。同時に、達志はルーアの肩を掴んでいた。


「どういうことかなルーアくん……」


「いえ、その日私は、休日の散歩という名の探索をしていたのですよ。で、裏路地に入ったのです。

 そしたら、アレらが通路を邪魔していたので……つい、ボン、と」


「ついじゃねえよ!」


「いやあ、ついでに魔法の威力も再確認できましたしおうおおうおう揺らさななないでででで」


 てへ、と舌を出すルーアに、達志は生まれて初めて女の子を殴りたい衝動に駆られる。

 さらに、その隣ではマルクスが、腕を組み、こめかみをピクピクと動かしていた。


「じゃあ、あいつらの目的は……」


「こないだ、俺らに爆発魔法なんて吹っ掛けていきやがった頭おかしいガキはどいつだ! ここの生徒だって調べはついてんだぞ!

 それに、あの一帯爆発したのも、俺らのせいにされたんだ!」


 リーダーのモヒカンは、叫ぶ。切実だった。

 やはりあいつらは、ルーアの魔法により吹っ飛ばされた、お礼参りをしに来たというわけだ。


 おまけに、爆発の被害まで自分たちのせいにされた。

 ルーアの魔法は、制御が効かない。なので、狭い路地裏なんかで、あの規模の魔法を使ったら……

 お察しの通りだ。


「どう考えてもお前のせいじゃねえか」


「はー、小さい男たちですねえ。怪我の損傷も、魔法でちょちょいのちょいでしょうに。

 それに、私のような美少女に爆発をもらえたんです。むしろご褒美では?」


「なあこいつあいつらのとこに放り投げていいかなぁ!?」


 反省の色を見せないルーアに、達志は窓の外にルーアをぶん投げてしまいたくなる。

 それをマルクスはやんわりと拒否しながら、窓の外を見る。


「理由はなんにせよ、あんな大勢で学校にまで来るのはいただけないな。

 とにかく、あいつらを追い返そう。謝罪があれは、後日改めて眼帯バカに行かせる」


「眼帯バカ!? 私のことか!?」


「当たり前だ」


「ヒャッハー! 早く外に出てきな! さもないとてめーらまとめてヒャッハーすることになるぜ! ヒャッハー!」


 学校全体に聞こえるんじゃないかと思えるほどに大きく通る。蛾戸坂の声。ルーアへのお礼参りなら、さすがに正当性がありすぎる。

 とはいえ、学校に突撃してくるのはやりすぎだ。先ほどの爆音、学校のどこかが傷つけられたということだろう。


 それにしても、なんとも語学能力のない、頭の悪そうな恫喝であろうか。

 正直、申し訳なさとは別に、あのリーダーの存在に達志は腹筋が耐えられそうにない。


「言語能力ゼロかよ……くく……とりあえず、言われた通りにルーア連れて行こうぜ……ぷくく」


「緊張感を持てよ」


 外に出ないと、みんながヒャッハーされてしまうらしい。それは多分良からぬことなので、ここは従っておいた方が懸命だろう。

 それにしても、暴走族が攻めてきたというのにマルクス以外も、みんな冷静過ぎやしないだろうか。


「あぁ、ルーアを放り出せば被害ないもんな」


「なんかよからぬこと考えられている!?」


 指示に従い、達志はルーアを連れて外に出る。さすがに達志だけを行かせられないと、リミ、マルクス、ヘラクレス……まあ続々と出てきた。

 教室の窓から見下ろす存在だった奴らと、今は同じところに立っている。警戒する各々。


 ちなみに、暴走族の存在には当然他のクラス、学年も気づいているが、ウチのクラスで対応するからと、ムヴェルがとりなしていた。


「えっと……この度は、ウチのバカがご迷惑を……」


「な、なぜタツが頭を下げるのです! その必要はありません!」


「そう思うならお前が下げんかい!」


 とにかく、悪いのはルーアなので、こちらが全面的に謝罪する。本来ならルーア一人にさせたいところだが。

 だが、ルーア一人に任せた場合、なんかまたよからぬことになりそうだ。


 達志は頭を下げ、ルーアの頭を無理やり下げさせる。


「悪いと思ってんならよぉ、通すべき筋ってのがあんだろ?」


「と、いうと?」


「そうだなぁ、そのガキに全裸ダンスでもしてもらうか!?」


 ぎゃははは、と暴走族たちは笑う。

 正直、金銭を要求されると思っていたため、その要求は予想外だった。


 ちら、とルーアを見る。同じ高校生とは思えない、小柄な体。

 胸も小さく、中学生……いや小学生といっても通るかもしれない。この外見で、よくルーアがこの学校に通っていると、特定できたものだ。


 ルーアの体型は、確かに一部には受けがいいだろう。


「タツ!? なぜそこで黙るのです!? 私が、全裸ダンスしてもいいんですか!?」


「うーん、でも悪いのお前だしなぁ」


「人でなし!」


 とはいえ、さすがに全裸ダンスはかわいそうだろう。

 なので、もっと穏便に済ませてもらえないか、交渉することにする。


「全裸ダンスはさすがに……他になんとかなりませんかトサカさん」


「はぁ!?」


「あ、やべ」


 つい、流れるようにモヒカン男を、トサカさんと呼んでしまった。

 とっさに口を閉じるが、もう遅い。トサカの顔は真っ赤だ。


 いけない、さっきはあんなに笑ってしまったが。アレにもなにか、理由があるはずなのだ。そう、たとえば……


「すみません。そうですよね、ルーアのせいで髪の毛が燃えて、そんなことになっちゃったんですよね」


「はぁん!? こいつは俺の一張羅だ! 別にそいつのせいでこうなったわけじゃねえよ!」


 一張羅、という言葉が、髪の毛にも適応されるかは置いておいて。


「え……じゃああんた、本気でその、トサカから人間生えてるみたいな髪型がイカしてると、思ってんの?」


 それは。決定的な一言だった。辺りにはしんとした空気が流れ、質問をぶつけられた蛾戸坂は目を丸くしている。

 だがやがて……


「おおおお、おま、おままま……!」


 言葉の意味に理解が及んだ蛾戸坂は、静かに憤慨した。

 やっちまった、と思っても、もう遅い。「せめてモヒカンって言ってやれよ」というヘラクレスの小さな声が、聞こえた気がしたが、そんな問題でもない気がする。

 だが、仕方ないではないか。


 言った通り、蛾戸坂の髪型は、ただのトサカではない。トサカから人間が生えていると思えるほどに、トサカがでかいのだ。

 普通に生えているだけのトサカのはずだが、それが異様にでかい……というか長いのだ。身長と同じくらいあるのではないかと、思えるほどに。


 だって長すぎて、地面についている。あの状態でバイクを飛ばしてきたのなら、さぞや髪は痛んでいることだろう。

 赤と黄色とが混ざり合ったトサカを撫で、蛾戸坂は不機嫌そうに達志を見ている。だが、一度藪をつついてしまったせか、もう耐えられそうにない。


 筋肉質な体、異質にすら映る髪型……その上名前が『がとさか とさか』なのだ。

 これはヤバい、主に腹筋が。


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