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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第50話 ゼロか百か……ってこと!?



 頭上に乗っかっているヘラクレス。

 思えば、ルーアによる魔法のときも、一人だけ慌てず平然としていた。クラスメイトはみんな慌てていたのに。


「ヘラって、もしかして結構大物?」


「はっはー、そう見えるかね」


「あー! あったぁ!」


 お叱りのルーアを見学しながら、ヘラクレスとの会話に花を咲かせる。

 そこに響いてきたのは、リミの声だ。それは歓喜の色を含んでいる。さっきまであんなに落ち込んでいたのに、いったいどうしたというのか。


「よかったぁ! まだ残ってた!」


 リミが駆けていく先には、先ほどの爆発から逃れたタツシ型彫像があった。奇跡的に一体だけ残っていたらしい。

 ただし、残っているのは頭だけ……無惨に転がっている。首から下は粉々だ。


 これには思わず達志も、思わず複雑な気持ちを抱くが……


「ふん!」


「「あぁああああ!?」」


 直後、タツシ型彫像が、何者かの手によって破壊される。いや、手ではなく足だ。

 これにはリミだけでなく、達志も驚くばかりだ。そして、そんな驚きの視線を受けても微動だにしない、タツシ型彫像を壊した張本人は……


「マルちゃんじゃねえか!」


「誰がマルちゃんだ! なぜ貴様までその呼び方を!」


 逆立った赤毛を揺らす、一目見て不良を飛び越えたような存在感を放つ人物。

 マルクスことマルちゃんだ。いやマルちゃんことマルクスだ。


「何してくれてんのお前! せっかく残ってたのに!」


「ふん、あんなもの、この場に不必要なものだ」


 純粋なる怒り……だけではない感情を胸に、達志はマルクスに近づいていく。いくら首だけとはいえ、自分の頭を潰されるのはいい気はしない。

 だがマルクスは、知らん顔。


 それはおそらく、達志に対しての挑発だったのかもしれない。しかしそれを挑発と捉えのは、別の人物だった。


「ふ、不必要……ですか。それはつまり、私の魔法が不必要だと?」


「っ……べ、別にそんなことは……」


 自分の姿の彫像を壊された達志ではなく、タツシ型彫像を作ったリミだ。リミは静かな声で、圧力を放つ。怒り……よりも、冷たさが先に来る。

 それは達志は知らないが、以前の学校での、リミと同じ圧力だ。


「おぉ、氷の女王様復活?」


「そ、そうは言っていない。ただ、あの男の彫像など……」


 ぼそりとつぶやくヘラクレスとは別に、しどろもどろになっている人物……リミの迫力に圧されたのか、マルクスが焦っている。

 焦るマルクスは見ていて楽しいが、このままだと今度はリミが、別の意味で爆発しかねない……そう、達志は危惧した。


 なんとかしなければと、思っていたところへ……


「っつぅ……やっと解放されましたよ。足がシャープペンシルの芯のようです」


 正座させられお叱りを受けていたルーアが、戻ってきた。これ幸いと、達志はルーアに話しかける。


「はは、お疲れさん。けど、魔法を使うための施設で魔法使って、そのせいで怒られるってのも不思議な話だよな」


「本当にそうですよ。まったく、魔法くらい自由に撃たせてほしいです」


「ルアちんの魔法は特殊だからなぁ」


 ルーアの魔法は、確かにみんなを巻き込まんほどの威力だった。あのときリミが庇ってくれなかったら、どうなっていたか。

 そのせいなのかもしれない。この施設内は、魔法に対する耐性があるが……人は違う。

 あんな規模の魔法、受けたら怪我では済まない。回復魔法で回復はできるだろうが、そういう問題でもないだろう。


「だったら、威力抑えればいいのに。

 自分の魔法の威力くらいわかるだろうに、もう少し威力抑えればこんなことにならなかったんじゃねえか?」


 自分でなら自分の魔法の威力を、調整できるはずだ。

 それとも、ルーアは達志に力のすごさを見せつけるため、あんな威力を出したのだろうか。


 ルーアが出現し、そして達志が会話を振ったところで、計算通りリミの圧力は和らいでいく。


「ふふ、甘いですねタツ。我が強大なる力は、私にもコントロールが効かないのだ。故に、封印している」


「……ん? つまり、力がセーブ出来ないと。

 眼帯あり状態で威力ゼロ、眼帯なし状態で威力百、極端すぎね?」


 ルーアは、自身の薄い胸を張り、堂々と言う。

 まさか、魔法の威力調整ができない……そう、言い出したのだ。


 詰まるところ、ルーアは力のセーブが出来ないから、眼帯で力を封印しているのだ。考えてみれば、『封印』とはそういうことだ……威力調整が出来れば、そんなことする必要もない。

 威力のコントロールが出来ないのでは、ゼロか百かのどちらしかない。不便な魔法だ。


「もしかしてルーア、あの爆発の魔法しか使えないなんてことないよね?」


「そんなことはありませんよ。火属性なら他にもいろいろ使えます。

 封印を解けばね!」


「意味ねぇええ!」


 封印を解かなければ、魔法は使えない。封印を解けば、あの規模の魔法が襲ってくる。

 ということは、眼帯をした状態のルーアは達志と同じく、魔法の使えない一般人ということだ。下手をしたら凶器になるものがコントロール出来ないとは、ある意味、魔法の使えない一般人より質が悪い。


 そう考えると、ルーアの力を封印している眼帯は、思った以上に重要なものかもしれない。単なるファッションだと思っていたのを謝りたい。謝らないが。


「てかよー、ルアっちがタツ像壊したせいで、リミたんお怒りなんだけど。どうにかなんない? 激おこだぜ?」


「激おこってまだ使われてんだな。まあ、そういうわけだルーア。今はちょっと落ち着いてるけど、フォローしてくれよ」


「いいでしょう」


 壊した張本人であるのに、なぜか堂々としている。先ほどムヴェルに叩かれたのとは逆の頬を、叩いてやろうか。

 ルーアは足を進め、リミの視線の先に立つ。視線を交わらせる。リミは小柄だが、ルーアはロリ……いやさらに小柄なので、リミを見上げる形だ。


 そんな状態で、ルーアは謝罪の言葉を……


「……なんとまあ耐久力のない氷の彫像なのか! あの程度、私の足元にも及ばぬわ! つまり、リミより私の方が上! う、え!」


「うぉおおおい!?」


 語ることはなかった。

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