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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第48話 見るがいい我が封印されし力!



 ともかく、だ。リミの魔法技術が、他を圧倒しているらしいのはわかった。

 既存の火属性と水属性を使えることを知らず、いきなりその二つを複合した氷を使っている、おバカな頭の持ち主ではあるが……魔法の腕は本物のようだ。


「いやー、いつにも増してすごいねリミちゃんは」


 そこへ、もう一つ別の声が。達志もよく知っているものであり、つい先ほど驚きを味わわされたばかりだ。


「あ、ゆ……如月、先生」


 そこにいたのは、如月 由香。達志の幼なじみであり、この十年の間に教師になった女性だ。

 つい「由香」と呼び捨てにしてしまいそうになったのを、達志は慌てて言い直す。


 達志と由香の関係も、周りには伏せている。そのため先生呼びになるのだが……「由香先生」と、下の名前に先生を付けるのは、なんだか恥ずかしい。

 なので、名字で呼ぶことに。


「調子はどうかな? たっ……ごっほん! 勇界くん」


 つい、幼なじみを名前で呼びそうになったのは由香も同じらしい。公私をはっきりとと言っていた本人が、すでに危ない。

 わざとらしく咳払いをしてから、一生徒として名前を言い直す。


「どうもこうも、まだ見学の段階……ですよ」


 慣れない敬語を、幼なじみに使わないといけないというこの気持ち。なんとも複雑な気分だ。


 とはいえ、達志と由香……この二人の関係を話すというのは、いろいろとめんどくさくなりそうな気がする。というかなる。

 ただの生徒と教師の関係ではなく、実は幼なじみであると明言するのは、事あるごとに贔屓だとか言われそうでややこしくなりそうだ。


「おや、由香ちゃん先生ではないですか」


「ちゃんはやめなさい。せめて由香先生と呼びなさい」


 現れた由香に気付くと、ルーアは気軽に口を開く。

 先生呼びではあるが、その前に「ちゃん」と付いていることで敬称が台なしだ。不服そうな由香は、訂正を求めるが……


「まあまあ、そう言うなってゆかりん」


「由香先生と呼びなさい!」


 同じように気軽に口を開くヘラクレスの絶妙な愛称により、それは叶えられない。その二人の態度から、普段の由香が生徒にどういう印象を持たれているかかわかる。

 ただ、ナメられている、ということではなく親しまれているのだろう。


 親しまれるのはいいことだが、由香の教師としての威厳はどこへいったのだろう。


「一応教師に、愛称で呼ぶとかすげーなヘラ」


「今一応って言わなかった!?」


 おっと、口が滑ってしまった。先生なのだがつい、いつものような対応を浴びせてしまった。気をつけなければ。


「おうよ。仲良くなるのに、愛称は大事なことだと俺は思うんだよ。タツも使っていいぜ」


「あはは……遠慮しとく」


 確かに、あだ名というのは、人との距離感を縮めるのに多いに有効だ。

 達志も昔、同級生をあだ名で呼ぶことで、お互いの距離を縮めたものだ。


 だが、ヘラクレスのような呼び方は……リミたんだのルアっちだのゆかりんだの、ヘラクレスのキャラだから許されているようなものだ。

 達志がそう呼び出したら、キモいだろう。


「あ、タツシ様となんだか楽しそうな話してますね!」


 達志の周りに、どんどん人が集まってくる。

 先ほどまで達志型彫像を作っていたリミだったが、どうやら楽しげな雰囲気を察して、こっちに来たらしい。


 凍りついた地面を、スケートのようにすいーすいーと滑ってくる。上履きなのにすごい。


「なんの話ですか?」


「リミたんの魔法がすごすきてタツが惚れちまいそうだって話」


「「なっ?」」


 話に混ざろうとするリミに説明しようとするが、その前に別の言葉によって遮られる。驚きの声を上げるのは達志とリミ。

 二人とも同じく驚愕を味わいながらも、その様子は全く別々のものだ。


 達志はただただ驚愕。リミは、驚愕しながらもその言葉の意味を飲み込んだのか、頬を桜色に染め上げている。頬を両手で押さえて……


「い、今の話本当ですか?」 


「えっと……魔法がすごいってのは確かだけど……」


 キラキラと輝く瞳から、思わず視線をずらす。どう答えるべきか悩んでいるところに、ひとまず本当に思っていた部分があることは肯定する。

 その後すぐに、台詞の半分を訂正しようとする、が。


「そ、そうですかぁ……えへへぇ……」


 とても嬉しそう。ふにぁ……と崩れた表情。

 そんなリミを見て、実は嘘ですなんて言えるものか。これでは、まるで料理の時と同じだ。

 耳や尻尾の動きが大忙しだ。


「ま、まあいいか……」


 自分が惚れてしまいそうだなどと、リミにとって迷惑な話だと思ったが、どうやらその心配はなさそうだ。

 魔法がすごい、の部分に気をとられているのだろう。


「ふへぇ、私が一番だなんて……」


「いや、そこまでは言ってな……」


「ちょっと待ったぁ!」


 思考がどんどん飛躍していき、一人でどこかへ行こうとしていたところへ待ったをかけたのは、ルーアだ。場に響く声に、戻ってきたリミ。

 彼女を見てから、咳払い。


「聞き捨てなりませんねぇ。一番? ……確かにリミの魔法の腕は本物です。超すごいです。

 これだけの完璧な人間なら、ぜひとも弱点を見つけたいものです。ていうかないとおかしい!」


「お、おう」


 実リミがポンコツである、という事実を知ったら、どんな顔をするだろう。


「だがしかぁし! 一番というのは聞き捨てなりませんねぇ、えぇ!」


 熱く語り、ビシッとリミを指差すルーア。その瞳には闘争の炎が灯っており、まるで「一番は私だ」と言っているかのようだ。

 いや、この様子だとまるで、ではなく……実際そう思っている。


「んじゃあルーアも魔法はすごいんだ? ふーん」


「もちろん! ……って、信じてませんね!」


 そりゃあ、強大な力だの混沌だの封じているだのと、中二全開の少女にそんなことを言われても、素直に響いてこない。


「いいでしょう! そこまで疑うなら我が封印されし力、見せてあげましょう!」


 怪しく笑い、力を解放すると宣言。

 すると気のせいか、周りの生徒がざわつきだしたように感じられた。


 だがそんなことはお構い無しに、自らの眼帯に手をかける。リミや由香からストップの声がかかるが気にしない。

 二人とも、いったい、何をそんなに慌てているのだろう。



「ふふ、見るがいい! 見せてやろう、我が真の力! えぇと……封印されし力、えぇ……我が望みに応えたまえ! すべてを……うーん、あ、焼き尽くす漆黒の炎となりて今、我が力を解放せん!

 えぇと……"ファイアー・ボム"!」


「お前詠唱も技も今名前考えたろ!」


 若干引くぐらいにテンションの高いルーアは、眼帯を外し今思いついたであろう名前を叫ぶ。せっかくノッてきたのにちょっと残念だ。

 そんな気持ちになりつつ達志は、言葉を失う。


 なぜなら眼帯の下………露わになった左目が、赤く輝いたからだ。普段から開かれている右目は藍色、眼帯の下は赤色と、オッドアイというやつだろう。

 左目が輝く……それは、一瞬のこと。


 次の瞬間には、正面にある十を超える達志型彫像が爆発に巻き込まれ、粉々になっていた。


「私の作ったタツシ様型彫像がぁあああ!」

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