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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第40話 異種族たちとの歓迎会!



「……と、いうわけで! イサカイ・タツシくんの復学を願いまして、かんぱーい!」


 手に飲み物が入ったグラスを天に掲げ、口上を述べて、乾杯の一言。

 直後に、呼応するかのように周りもグラスを掲げ、「かんぱーい!」とクラス中から声が上がる。


 その歓迎を受けている人物……勇界 達志本人は、その気持ちをありがたく思いながらも、ただただ困惑していた。

 なぜ、こうなったのだろうか。


「ささ、タツシくん! ぐぐぐいーっと! さあさあ!

 って、あ! そうだそうだ、忘れてたよ! その前に、本日の主役からなにか一言! はい!」


「お、おう」


 口上を述べた人物に急かされ、若干引き気味の達志。今のやり取りのせいで、周りからの視線を一心に受けてしまった。

 達志は、緊張を誤魔化すために咳払いを一つして……


「え、えー……ほ、本日はお日柄もよく、足下の悪い中……」


「だー、もうかったい! 校長先生か! 本日は晴れ! 足下は悪くない!

 はいよし! じゃあ改めてかんぱーい!」


 達志がなにを話すか整理している中で、勝手に話が進んでいく。

 達志自身、お日柄もよく足下の悪い、などどんな口上を述べているのか、自分に突っ込みたくなった。


 二度目の乾杯コールにより、今度こそみんながグラスの中の液体を飲み始める。もちろんジュースだ。

 話したいのか話させたいのか、飲みたいのか飲ませたいのか、はっきりしてほしいものだ。


 ……ひとまずこの場は、流れに任せよう。


「かんぱーい」


 小さくつぶやく。周りに従い、達志もグラスの中のジュースを体内に補給する。


 それは、紫の色をした液体。場の雰囲気や、細い持ち手があるグラスからワインと勘違いしそうだが、れっきとしたぶどうジュースである。

 やたらと盛り上がっているが、ジュースである。


「イエー! タツシ君も、イエー!」


「い、イエー」


 周りの連中と次々グラス同士を合わせ、達志の所にやって来たのは、先ほど口上を述べた人物だ。

 達志も同じようにグラスを傾け、周りに倣うように軽くグラスをぶつける。


 キン、とガラス同士がぶつかる音が響く。


 入っているのは同じくジュースなはずだが、本当は酒なのではないかと思えるほどに、テンションが高い。

 酒に酔ったのではなく、場に酔ったのだろうが。


「しかしまさか復学早々歓迎会があるとは……驚いたよ」


 クラスメートたちと多少なりとも会話をすることに成功した達志は、周りから少し離れた席へと座る。


 ジュースを飲み、持ち寄られたお菓子をつまみながらつぶやく。

 達志自身、まさかこういった催しがあるとは思わなかったため、今もまだ困惑気味だ。


「せっかくのタツシ様復学祝いです、むしろ当然です」


 と、隣に座るウサ耳少女、リミがうんうんと頷く。

 ジュースをちびちび飲み、手に持ったスティック系のお菓子を食べる姿は、まさに小動物そのものだ。

 その言い分には、達志も苦笑いを浮かべる。


 達志の自己紹介が済み、ホームルームも滞りなく終わった後。達志の復学祝いとして、歓迎会が開かれたのだ。

 それも、授業の時間を使って、だ。


 ホームルーム後の一時限目を丸々、達志の歓迎会にあてがっている。達志にとっては予想もしていなかったことだ。


「まあ嬉しくないことはないんだけどさ。当然ってほどでもないと思うが。

 というか、みんな俺が復学するって知ってたのか? こんなん、知らなきゃできないだろ」


「もちろん。先生から、復学する生徒がいるので、派手にお祝いしようと」


 周囲を見回す。飾り付けこそされていないが、机に並べられたお菓子にジュース。

 事前に達志が……いや、生徒が復学すると知っていないと、無理な光景だ。


 まさに準備万端、というやつか。


「やっほっほー、お二人さん飲んでますかー?」


 そこへ、クラスメートらとグラス乾杯を一通り終えたのか、先ほど口上を述べた人物が近づいて来る。

 その人物を視線に入れ、達志はまたも苦笑い。


「飲んでますかって……そっちは飲み過ぎじゃない?」


「なぁに、これくらい飲んでるうちに入りませんよぅ」


 台詞だけだと、飲み屋のそれに聞こえなくもないやり取り。両手にグラスを持ち、その中には半分以上の飲み物が入っている。

 ちなみに二つは、それぞれ違う飲み物だ。


 その人物は、達志の隣……リミとは反対側に座る。自然と隣に座る人物に達志は動揺を隠せない。

 さっきまで絶賛緊張中だったクラスメート相手。それも見知らぬ女子だ。


 その少女は達志と同じ黒髪を揺らし、短めに切り揃えている。頭には、ぴょこんとアホ毛が生えており、それが彼女の特徴の一つだろう。

 高校生というには幼く見えるほどに小柄で、細身の体は良くも悪くもスレンダーだ。


 藍色の瞳がこちらを覗き込み、その美しさに思わず息が詰まる。アホ毛が一番の特徴かと思われるが、もっと目を引くものがある。


「えっと……カラナさん、だっけ」


「やだなぁ、気軽にルーアって呼び捨てでいいですよぉ。それかあだ名でも全然。ルーちゃんとかルアルアとか。

 そういえばさっきライムからは、タツって呼ばれてましたね。私もそう呼んでいいですか?」


「ぐいぐい来るなぁ」


 目の前の少女、ルーア・カラナは達志に、気安く話しかけた。呼び名も、呼び捨てやあだ名でも構わないことを告げ、距離感を詰めてくる。

 先ほどのスライムといい、このクラスはこういった集まりなのだろうか。


「別に構わないけど。じゃあ、ルーア。一ついいか?」


「何でしょう?」


「えっと……その、眼帯って?」


 距離感を詰めてくるのはひとまず置いておいて。達志は、気になっていたことを、思い切って問い掛ける。

 問い掛けた内容こそが、ルーアの身体で一番の特徴と言えよう。


 右目は藍色だが、左目はその瞳を見ることが出来ない。なぜならば、左目は黒い眼帯によって隠されているからだ。


「これ……ですか?」


「あ、話したくないならいいんだ。怪我とか病気とか、無理に聞くつもりはないから」


 自らが付けている眼帯のことに触れられ、ルーアは一瞬ぽかんとする。

 左手でその眼帯に触れ、右目を閉じ何かを考えるような仕草。


 だがそれも束の間、微かな笑い声が出てきて……


「く、くっくっく……やはり気になりますか。どうしてもと言うなら、教えてあげましょう」


「いや、別にどうしてもってわけじゃ……」


 何やら熱が入り始めたルーアの様子に、危ないものを感じた達志は、話を中断させようとする。

 が、それを聞き入れるはずのないルーアが、閉じた右目をカッと見開き……


「そう! この眼帯は、我が強大過ぎる力を封じるためのマズィックアイテム! この眼帯を外した時、我が力は解放され、世界は混沌に陥るであろう。

 故に! 私はこの眼帯にて、力を封じているのだ!」


「お、おう……」

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