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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第一章 異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました
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第33話 朝の日課なんです飛行浴



 朝、優雅に飛んでいたセニリアを部屋の中へと迎え入れる。


「……」


「……」


 ……一人で過ごすにはあまりに広すぎる部屋。それも、数日経てば当初よりは気にならなくなった。

 とはいえ、やはりまだ慣れることはできない。


 それは、人数が二人に増えたところで同じことだ。


「……あの、誰にも言いませんよ?」


 無言の時間が経過してから、五分。この沈黙の時間についに耐え切れなくなった達志は、口を開く。

 余程恥ずかしかったのか、セニリアは終始無言でうつむいている。


 そのため、形勢を変えるには、達志の方から行動を起こす以外にない。


「ほ、本当ですか?」


 今まで俯いていたセニリアは、達志の言葉を聞くやその顔を上げ、じっと見つめている。

 言い触らされないかが心配だったのだろう。どれほど見られたくない光景だったのか。


「良かった……実は、毎朝ああやって飛行浴をするのが日課で。姫も知らないことなんですが……誰かに知られるというのは、なんだか恥ずかしくて」


 見られてしまったからか、安心した途端に語り出す切り替えの早さには驚きだ。先程まで、あんなに恥ずかしがっていたというのに。


 飛行浴……というのは、字面的に日光浴の飛行バージョンのようなものだろうか。

 それを恥ずかしいと感じるのは、ハーピィという種族だからか、セニリアの個人的な感覚からか。


 なんで恥ずかしいのにそんなことを、と思うが、リラックス方法は人それぞれだ。

 カラオケがリラックス方法な人だって、人前で歌うのは恥ずかしかったりするだろう。


「そんなに恥ずかしがることないでしょうに。飛行浴中のセニリアさん、綺麗でしたよ」


「それは、どうも。しかし、そう思ってくださるのとこれとは、別の話なので」


 意識して言ったわけではない達志に、意識して捉えることもないセニリア。

 それからセニリアは、改めて達志に口止めを念押ししてから、部屋を去っていく。今日はセニリアが朝ごはんを作る番なのだ。


「あの人、意外と可愛い部分もあるんだな」


 今までクールキャラだった、しかも年上の女性の、ああいった面を見るというのは、達志としては非常に好ましい。

 まあ、本人には言えないが。


「さて、朝からいいもん見れたし、準備も完了したし、心置きなく二度寝を……

 いや違う違う、チェックだチェック」


 予期せぬ出来事にドタバタしてしまったが、本来の目的を見失ってはいけない。

 さて、チェックに移ろう……と、しばらくチェックをしていると……



 プルルルル……♪



 達志のスマホから、着信を告げる音が鳴り響く。朝から誰だ、変な勧誘とかだったら切ってやる、と思いながら、スマホを、手に取る。

 藍色のカラーをした、最新機種。しかしその最新機種というのも、十年前の話だ。


 十年前、最新機種のスマホを買った達志だが……それは、十年という時を経て、『最新』から『古い』ものへとなっていた。

 というか、携帯からスマホへと変化したように、今はまた新たな機種が存在しているのだろうか。


「さてさて、相手は……っと」


 浮かんだ疑問を、外へと弾く。気にはならなくもないが、それは今考えることでもないだろう。

 後々、機会があれば、覚えていれば、誰かに聞こう。


「機械の種類を聞く機会……ぷふっ」


 ……十年眠っていたためだろうか。十年分の喋り足りなさを補うかのように、達志には独り言の機会がかなり増えた。

 傍から見れば少し危ない人だが、そんなことは達志の知ったところではない。


 偶然できた洒落に勝手に笑っているという、他人には見せられない姿だ。


「っと、着信相手は……さよな?」


 着信が鳴り続けているため、独り笑いもほどほどに、スマホの画面に表示された名前を確認する。

 そこには、相手が幼なじみであることを証明する『さよな』の名前が表示されていた。


 予想していなかった人物の名前に、達志は首を傾げるが、着信が切れてしまわないうちに画面をタッチ。電話に出る。


「もしもし?」


『あ、もしもし、達志くん?』


 電話口に聞こえる、聞き慣れた声。

 それは確かにさよなであることを表しており、目覚めてから初めてもらう電話に、若干緊張しつつ達志は応える。


『ごめんね、こんな朝早くに』


「いいけど……どしたの?」


 こんな朝早くに電話があったことにも驚きだが、その相手がさよなであることにも驚きだ。

 まるで、登校前のこの時を狙っていたかのようなタイミングで……


「……もしかして、学校のこと?」


『あ、そうなの。十年ぶりの登校だし、緊張とかしてないかなって……』


「過保護か!」


 返ってきた反応に、思わず電話口にツッコんでしまう。なんの用かと思えば、まさか達志が緊張してるんじゃないかと、心配によるものだったとは……

 面倒見のいい性格をしているさよならしいといえばそれまでだが。


 それにしたって面倒見良すぎだろう。まさか朝早くから、登校への心配をされるとは思わなかった。電話口から。


「大丈夫だって。確かに多少緊張しないことがないでもないこともないこともないかもだけど」


『……ホントに大丈夫?』


 実際、十年経った学校に通うとなると、言い様のない不安はある。

 なにせ、十年という月日だ。自分が知っている同級生、先輩や後輩は当然ながらいない。


 教師は残っているかもしれないが……果たして覚えていてくれるだろうか。


 その上、この十年で世界は大きく変わっているのだ。聞くところによると、異世界人である獣人なども数多く学校に通っているとのこと。

 自分の知る世界とは、大きく異なっている。

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