表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第一章 異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました
25/184

第24話 復学の話



 復学の話には驚いたが、それも真実であるとわかった。


「とにかく……俺は、退院したらまた学校に行ける、ってことでいいんだよな?」


「はい! その通りです!」


 これまで以上に、リミの耳が激しく動いている。

 それだけ、達志と一緒に学校に通えることが嬉しいのだが、残念ながら達志にはそれは伝わっていない。


 それを見抜いているのは、セニリアだけだ。見抜く、とはいっても、わかりやすすぎるのだが。


「ですから、その……これからは、毎日一緒に学校に通えるといいますか……」


 俯き、手を結びもじもじと脚を動かしている。その奥底にある気持ちに気づかないまま、達志は頷いて応える。

 毎日ということは、どちらかがどちらかを迎えに行かなければいけないな、とも思う。

 それも、学生らしくていいではないか。


 あの頃は由香が迎えに来てくれていたが、その由香はもう社会人だ。

 まあ家は近かったんだが。


 目の前の少女と一緒に登校する光景を思い浮かべ、自然と頬が緩む。その未来のためにも、一刻も早くここから退院しなくては。


「ってことは……俺は、事故で休学扱いになった二年生から、再出発ってことか」


「はい! あ、私も二年です!」


 はいはいっ、と目の前にいるにも関わらず元気に手を挙げるリミに、思わず笑みが溢れる。

 ということはつまり、リミと同じクラスになる可能性もあるということだ。


「同じクラスになれりゃ一番だな。そん時はよろしく。って、気が早いか。まだ退院の日取りも決まってないのに」


「こちらこそよろしくお願い致します。

 ……ふふ、それもそうですね」


 退院の日程が決まって、帰宅して色々準備して、それから復学……ふむ、中々にハードではないか。

 しかもただの復学ではなく、十年もの歳月を経てなら、なおのこと。


 教師はともかくとして、もう、達志の知っている同級生も先輩も後輩もいない。

 復学とはいっても、実質新しく学校生活を始めることとなんら変わりはない。


 ……だが、少なくとも目の前の少女が一緒にいる。それだけで、達志の心の負担も減るものだ。


「……それではお二人とも。お話のキリもいいようですので……」


 と、そこでセニリアが言葉を紡ぐ。見ると、既に深夜零時になろうかという時間ではないか。

 こんなに時間が経っていたのにも驚いたし、なによりよくもこんな時間まで面会が許されたものだ。許可を取っているとはいえ。


 それとも、これこそ姫様様々の権力効果というやつだろうか。


「そうだな。二人とも、こんな時間まで付き合ってくれて、ありがとう」


 さすがに、これ以上引き留めることはできない。リミは心配ないとは言っていたが、やはり両親も心配するだろうし。


「いえ、そんなこと。私たちだって、楽しかったですし」


 やはり顔を赤く染めながら、パタパタと手を振る。しかしその様子がどこか残念そうなのは、気のせいではないのだろう。

 心の底から達志との会話を楽しんでくれた少女は、ここから去ることを残念に思っている。


「そんな顔しないでって。これからはこうして話せるんだから」


「……はい!」


 正直、眠った時に再び……十年とはいかず眠ってしまうのでは、という心配がないわけではない。だが、不思議と予感があった。

 いや、生まれたと言うべきか。


 明日も、明後日も明々後日も……これからは、普通の生活を送ることができると。


「では、寂しいですが……明日も、来ますので」


「はは。無理はしないでね。でも、期待してる」


 明日も来る、というリミの言葉に、達志は無理はしなくていいと言う。

 ただ、口ではそう言うが、実際には期待している。


 四時間過ぎの間会話をしていた相手、その相手とはこの時間でずいぶんと親睦を深めることができた。

 『期待してる』というその言葉に、一瞬きょとんと呆気に取られたような表情になるリミだが……


 すぐにその意味がわかったのか、顔を若干赤く染めながらも……


「はい!」


 と、花の咲いたような笑顔で、応えたのだった。


 ――――――


「……また何年も眠った、なんてことはなかったか……よかったぁ……」


 目覚めた達志は、まずテレビをつけた。今日の日付を確認するために。

 そこに映し出されていたのは、昨日より一日追加された数字。昨日の一日後、すなわち今日だ。


 リミたちが帰宅し、一人になった達志は、就寝した。あんなに眠っても、やはり睡魔というものは襲ってきた。不思議だ。

 眠り、次に目覚めたら、また時間が飛んでいた……そんな不安を抱えていたことが、バカバカしくなるくらいに、今日は今日だった。


「うんうん、体の調子もいいし、寝起きにしちゃ上出来くらいに爽やかだな」


 元々寝起きがよくない方であったが、今起きた時点で、自分でも驚くほどに、清々しい寝起きだ。

 それが眠りに眠ったせいなのかはわからないが、この際どうでもいいだろう。


 寝起きが清々しく、体の調子も悪いどころか良好に感じる。

 これで、体力を元通り近くにさえ持っていければ、退院も同然だろう。


 まあ、歩くだけで、階段を登るだけで息切れを起こしてしまう始末だ。これは、リハビリに相当な時間がかかってしまうことが予想される。

 気長にやるしか、ないのかもしれない。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ