表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/184

第180話 人捜しの魔法



「おーい! リミー!」


 いなくなったリミを探し、達志は走り回しながら大声を張り上げる。

 だがそれも、賑やかな浜辺では意味なく消えていく。海では開放的な人々が多く、それによって周りの声も大きくなるのだ。

 なにより、こんな開けた場所で大声を上げたところで、たかが知れている。


 だから、残念なことに達志の声は、彼方に消えていく。


「くっそー、これじゃあ見つけようがないな……」


 今は夏休み中で、親子連れやカップルなどたくさんの人が歩き回っている。

 そこから、ただ一人の人間を見つけるなど困難な話だ。


 連絡手段も今持っていないし、これはちょっと困った事態になった。


「いくらなんでも、一人でほいほい知らないとこに行かないと思うが……いやでもなぁ……」


 達志と由香の、確実に誤解を招く状況。

 見られた状況が状況だけに、いくら普段冷静なリミでもどんな行動をとるのか予測不能だ。普段なら、みんなの所に戻っているんだろうが……


 それとも、その可能性に賭けて一旦みんなの所に戻るか……

 考えて、やめる。


「ん……」


 だってリミが戻ってなかった場合、なんて説明する。

 まさか由香と誤解されたので誤解を解くために探している、なんて言えないだろう。からかわれるのがオチだ。


 とはいえ四の五の言っている場合でもない。もしも見つからない時間が長くなる可能性があれば、それはみんなで捜索するしかないわけだが……

 だがやはり、一人くらいは散策人数を増やさないと。いくらなんでも達志一人では。


「由香を置いてきたのは失敗だったか? ったく、どこ行ったんだか……」


「誰がです? 捜し人なら手伝いますよ?」


「え、いいんですか? 実は一緒に海に来た女の子が迷子になったみたいで…………って!?」


 一人でも多く人手が欲しい時に、嬉しい申し出だ。

 こんなご時世だがいい人もいるもんだなと。その申し出をありがたく受けようと、声の主を確認すると……そこにいたのは、先ほど別れたはずのシェルリアとはーちゃんだった。


 なんと、この広い砂浜でまた会うとは。この運を、是非ともリミと会うために使わせてほしいものだ。


「どもどもー、セーンパイ! アタシら縁があるねぇ」


「あははー、そうだな」


 どうにもこのギャルは苦手だ。驚くくらいにぐいぐい来る。

 なぜこんな派手な子と、(一部を除いて)大人しめのシェルリアが仲良しなのだろう。


 それとも、正反対だからこそ波長が合うというやつだろうか。


「それで先輩、誰が迷子になったんですか? もしかしてリミ先輩ですか?」


 それでもって、疑うことを知らないシェルリアが再度問いかけてくる。

 先ほどリミと一緒にいるところを見られたのだ、いくら海に来た時には一緒じゃなかったと話したとはいえ、捜し人がリミであると思うのは当然だろう。


 迷子というには正確には違うが……いや、やはり迷子か?

 なんにせよ、さっき自分から言ったことだし訂正するのも面倒なので、そのままにしておいた。


「まあ、そうだな」


「大変じゃないですか、こんな広い海ではぐれただなんて! 捜すの手伝いますよ、ね、はーちゃん!」


「へ? あぁ、まあ面白そうだし手伝うよ」


 完全善意なシェルリアと、面白半分なはーちゃん。本当に任せて大丈夫だろうか、特にはーちゃん。


「じゃあさー。センパイ、リミセンパイの体の一部とか持ってない? もしくは身に付けてたものでもいいんだけど」


「持ってるか!」


「えー、マジで? 髪の毛一本でも全然いいんだけど」


「持っててたまるか!」


 今からリミを探そうという時に、いったいなにを言っているのだこのギャルは。

 真剣な顔してなにを言っているのだ。いやマジで。


「なぁんだ使えないセンパイだなあ」


「なにぃ?」


「はーちゃん! えっと、すみません先輩。でも、ふざけてるわけじゃないんです。

 はーちゃんは、体の一部でも身につけていたものでも、その人のものだとわかるものがあれば……その人のことを捜すことができるんです!」


 つい怒りそうな達志を止めるために、シェルリアが間に入る。

 どうやら、達志をからかっていたわけではないらしいというのは、彼女の真剣な瞳からわかるが……


 それにしても、その人とわかるものがあればって……犬か?


「ちょっとセンパイ-、今失礼なこと考えたっしょ。犬とか」


「心を読まないでください」


「しっつれいだねえ。でも、センパイの犬にならなってもいいかもわん!」


 ……しばしの、沈黙。


「………………で、リミを捜すことができるっていうのは?」


「あー、無視しないでよもう!」


 プンプン、と頬を膨らませるはーちゃんを、達志は華麗にスルー。この子のあしらい方は、だんだんわかってきた気がするのであった。


「ふふん、けどこれを聞いたら驚くこと間違いなしだよ?」


「ほぉ」


「私はねえ、魔法がつかえるんだけど、その内容はなんと! 人捜し!」


「ほぉ?」


「つまり、誰か捜している人がいるとする。そんな時、その人の体の一部、身につけていたもの……それらがあれば、私に掛かれば捜し人の居場所が一発でわかるってわけ! 人呼んで、捜索魔法!」


「おぉ!」


 はーちゃんの使える魔法、それは達志の初めて聞くものであった。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ