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第175話 いったい誰の子なんだ!



 達志からの視線を感じたはーちゃんは、にやりと笑った。


「あらあらー、センパイったらアタシの水着に見惚れてる~?」


「あははー、ギャルには興味ねぇわ」


 達志を見て、わざとスタイルを強調させるはーちゃんであるが、達志はそれに取り合わない。

 ギャルに興味がない、は本音か嘘かはともかく、今の今まで由香やリミの体を押し付けられていた達志にとって、並の刺激では通用しない。


 それを知らず、自身の魅力が通じないはーちゃんは唇を尖らせる。


「なぁんだ、つまんないの」


 彼女も彼女で、本気で魅了していたわけではないらしい。


 ここで達志は思うが……シェルリアの水着を選んだのは、はーちゃんではないだろうか。(一部を除いて)おとなしめの彼女が、自らビキニを選ぶとは思えない。

 もしそうなら、非常にいいチョイスだと言うほかない。


「それにしてもセンパイ。リアと同じ校内二大美少女の一人と、学校で超人気の由香ちゃん先生、二人を両手に花状態だなんて、隅に置けないじゃん」


「もー、如月先生、でしょっ?」


 これはまた面倒な奴に見つかってしまった……

 見た目で判断して悪いが、下手なことを話せば、それがすぐさま広がってしまう気がする。


 女子はおしゃべりが好きだ。ギャルは余計に、その傾向が強いように感じる。

 あくまで達志の個人的見解である。


「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だって! アタシ、口は固いんだから!」


 達志の不安を汲み取ったのか、ケラケラと笑みを浮かべるはーちゃんであるが……やはり不安だ。


「はーちゃんさん、私たちはただ偶然会っただけです。あなたが考えてるようなことはありませんよ」


「キャー、リミセンパイに話しかけられちゃった!」


 シェルリアに話したのと同じようなことを告げるリミだが、はーちゃんは真剣に聞いているのかわからない。

 隣のシェルリアは、ペコペコ頭を下げている。


「こ、こう見えてもはーちゃんはしっかりしてるので! 変なことは言いふらさないですよ!」


「本当かよ……」


 正直、シェルリアのお墨付きがあっても大部分が不安ではある。

 なんせシェルリア本人の株が、最近大暴落しているのだから。


「ありゃー、センパイ、信じてくれないのぉ? そんなんだったらアタシ、悲しすぎて口が滑っちゃうかもー」


「勘弁してください!」


「と、とにかく。私からちゃんと言っておきますから」


「お願いだよ!?」


 由香が、念押しして二人を見つめる。ああは言ったが、はーちゃんは由香のことが好きらしいので下手なことは言いふらさないだろう。

 いや、はーちゃんだけでなく、いろんな生徒から人気なのだ、由香は。


 それは単純にすごいと思うし、尊敬できる部分だ。


「ん、どうしたのたっくん」


「なんでもねえよ。あいつら待ちくたびれてるだろうし、戻ろうぜ」


 素直に尊敬しているなんて照れ臭くて今は言えないが、いつか言えたらいいと思う。


 はーちゃんも由香ちゃん先生なんて親しげに呼んでいたし、思わぬところで由香の人望が垣間見えた。

 なんだか得した気分だ。


 そしてそれはそれとして、達志たちは元の場所に戻ることに。きっとあいつらも待ちくたびれているだろう……

 二人と別れ、人数分のジュースを手に、自販機の下から去っていく。



 ――――――



「ただい……なにしてんの?」


「おかえり。遅かったわね」


 自販機にジュースを買いに行った達志、リミ、由香……その三人が元いた場所に帰ってくるまで、結構時間が経っている。

 帰ってくる最中は、幸運にもナンパに遭うことはなかった。


 待たせていたみなえは、パラソルの下に設置したビーチチェアに横になっている。

 それはいいとして……問題がある。残った猛、さよな、セニリアの三人についてだ。


 三人が三人、ブルーシートに座ってはいるのだが……どうにも様子がおかしい。猛とさよなとセニリアが、なにかを囲っている状態だ。


「なにかあったのか?」


「それが……だな」


「あい!」


 なにかあったのかと問いかける達志に対し、答えようとする猛……を遮り、妙に高い声が上がった。

 それは、猛のものでもなければさよなやセニリアのものでもない。


 しかしそれは、三人の方向から……いや、三人のいる中心から聞こえてきた。つまり、三人が囲っている物体(?)から聞こえてきたということになる。


「おい、そこになにがある」


「それが……な。あはは……」


 なぜか言い淀む猛を尻目に、さよなとセニリアがその場から体勢をずらす。

 すると、彼女らの体で隠されていた物体(?)が達志たちの前に姿を現して……


「あう!」


「「「……」」」


 三人は、絶句した。それは、赤ちゃんだった。


 猛、さよな、セニリア……三人が囲っていたのは、見覚えのない赤ちゃん。まだ一歳かそこらだろうか……とにかく小さな赤ちゃんが、そこにいた。


 もう一度言う。赤ちゃんがいた。三人は、絶句した。


「……猛、どっちとの子だ?」


「はぁ!?」


 まず達志が確認せねばならないのは……この赤ちゃんが、猛とさよなの子なのか、猛とセニリアの子なのか、ということだ。

 そして言うまでもないが、達志は混乱している。


「いや、ちょっと待て! なんだその質問! 俺は……」


「くっ……そうだよな! 俺はモテないのにお前は昔からモテてた……そしてそこに、十年の差が出来た! お前に子供の一人や二人いてもおかしくないよな!」


「聞けよ!」


 もう一度言う、達志は混乱している。


「あわわ……た、猛くんと、さよな、ちゃんが? え、キャー」


「落ち着いて由香ちゃん!」


「セニリア……私に構ってばかりだったあなたが、ついに男の人と……」


「泣かないでくださいよ姫!」


 そして由香とリミも混乱している。


「それともお前っ……まさか、どっちの子かわからないって言うんじゃないだろうな!?」


「おっそろしい想像してんじゃねえよ! バッカ! お前バッカ!」


「……猛くん?」


「タケル様?」


「だから違うって! 睨むな!」

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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