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第174話 予想外の遭遇



 海に来たら、部活の後輩と遭遇した。


「いや、先生と来てたのは私。

 タ……イ、イサカイくんと会ったのは、ついさっき。日に当てられた先生を一人で運ぶのは厳しかったから、男の子である彼に協力してもらったんです」


「!?」


 この窮地をどう脱するか……それを考えていた達志に助け舟を出したのは、まさかのリミであった。

 まったくの予想外であったが、これはありがたい。


 確かに生徒と教師は問題である……だがそれは、男と女に限った話。女同士、しかも生徒との距離が近く生徒人気がある由香であれば、こうして女生徒と一緒に海に来ていたって不思議ではない。はずだ。

 その上、リミは由香が顧問である調理部に所属しているのだ。一緒にいたってなんの問題もない。


「へー、そうだったんですか! なんだかうらやましい!」


「う、うらやましい?」


「はい! 私、如月先生のこと優しくて素敵な先生と思っているので、私もお話したかったです」


「そ、そうなの?」


 素直に行為を向けられ、由香はまんざらでもなさそうだ。

 教師になった以上、生徒から好かれるのは由香にとって最高の瞬間なのだろう。


「じゃあ先輩は、一人で海に?」


「いや、幼なじみとな。さすがに男一人海は寂しくてやりたくない」


 由香とリミが一緒と言った以上、達志は一人ということになる。だが、由香と一緒であったことを除けば嘘をつく必要はない。

 なのでここは、正直に答える。


「……男の人ですか?」


 なんだその返しは。


「まあ、一応。でも、もう一人い……」


「ふむふむなるほどなるほど。男二人で海……しかも幼なじみ。あれ、先輩って十年不老ですよね……それっともしかして幼なじみと十歳差あるってこと? てことは幼なじみが自分よりはるか年上になっちゃってる状況に? 年上幼なじみが先輩をリードして、人気のない浜辺でじっくりしっぽり……」


「ど、どうしたのテンちゃん……」


「気にすんな。由香は知らなくていい世界だから。というかこいつ、もう隠すことすらしなくなったな」


 どこをどうしたか、エル腐としてトリップしてしまったシェルリア。

 彼女を止める術はないので、元に戻るまで待っておくとしよう。


 妄想の内容はともかく、幼なじみと聞いただけであっという間に十年の年齢差に気付くとは。あれでも冷静な部分はあるのだろうか。

 だが達志を不老扱いはどうなんだろう。間違ってはいないが。


「それにしてもリミ、さっきは助かったよ。まさかリミが、あんな機転が利くなんて。俺のこともちゃんと名字だったし、ホント助かった」


「…………褒められて嬉しいのになんででしょう、素直に喜べないんですが」


「たっくん、普通に褒めればいいのに……」


 褒めたつもりだったのだが、二人からは不評だった。

 普段のリミを見ていると、機転が利きそうにないと思っていたというだけの話なのに。


 そして、結局シェルリアが自分の世界から戻ってくるまでに、それから十分以上はかかった。


「こほん、失礼しました。じゅるり」


「本当にな。

 それはそうと、シェルリアは誰かと一緒なのか?」


 シェルリアが戻ってきてから、ジュースを買った後。せっかく会えたのだから、このまま去るのももったいない気がする。

 それに散々こちらのことをいろいろ聞かれただけなので、達志からも話しかけることにする。


 これでもし、男と来ているとなれば……校内二大美少女のスクープになるかもしれない。

 知ったからといって、どうこうするつもりもないのだが。


「いえ、友達と一緒ですよ。先輩もあったことのある子です」


 友達と一緒という彼女の顔に、照れのようなものは見られない。

 もしかして男友達、という可能性もあるが……その可能性は低く思えた。

 それに、達志が会ったことがあるとは……同じテニス部の人間だろうか?


 果たして誰のことなのか……その答えは、すぐにわかることとなる。


「おーい、リアー」


「! あれ、はーちゃん?」


 向こうから、シェルリアに向かって叫んでくる人物が一人。リア、というのは彼女(シェルリア)の愛称だろう。


 その人物に、シェルリアも手を振る。やって来たのは、シェルリアに『はーちゃん』と呼ばれた女の子。はーちゃん……達志には、かすかに聞き覚えのある言葉だ。

 いったい、いつだったか……


「あれぇ、ファミレスで会ったリアのセンパイじゃん、テニス部の。おっひさー」


 立ち止まったはーちゃんの台詞。ファミレス、会った……それを聞いて、思い出す。

 あれは確か、体育祭の前の日……猛と二人でファミレスを訪れていたときに、確かに出会っている。


 あったなぁ、そんなこと。一言二言話した程度ではあるが。

 その時一回出会った限りの相手ではあるが……印象が強かっただけに、きっかけさえあれば、思い出せる。まさにギャルといった感じの、褐色の肌をした女の子だ。


 金髪をお団子にして頭の右側に乗っけているのは以前会った時と同じだが、今回大きく違うのは……彼女も、水着であるということ。

 シェルリアと同じくビキニなのだが、布面積が一回り小さく思える。しかも黒色であるため、なんだか大人の色気さえも感じさせられる。

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