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第147話 部活対抗リレーの時間



 お腹の膨れているリミ……その姿に、呆然としていた。


「り、リミ……さん?」


「食べすぎまひたぁ……」


 喋るのも、いっぱいいっぱいだと言わんばかりだ。

 見る影がない、とまではいかないが……頬は食べ物を突っ込んだハムスターのように膨れ、お腹はぽっこり出ている。


 お腹いっぱいであんなにお腹膨れるなんて、漫画の世界でしか見たことがない……と達志は感じた。


「お、おいひすぎて……」


 さっきからはむはむしていると思ったら、結果として動けないほどになってしまっていた。

 食事を作った側からすれば、食事冥利に尽きるのかもしれない。とはいえ、だ。


「いや、この後の種目どうすんの!?」


 達志よりよっぽど重症なウサギが、昼食が終わるまでの残された時間で、元に戻るだろうか。

 敵チームながら心配になってしまう。


 あまり見たくなかったビフォーアフターである。

 これではウサギではなく、タヌキだ。


「大丈夫、なんとかなりまふ!」


 その自信がどこからくるのかわからないが、本人が大丈夫だというなら、大丈夫なのだろう。

 他のみんなも、そこまで心配した様子は見せていない。達志が心配しすぎな、だけなのだろうか。


 ということで、本人を信じているうちに、昼食時間は終了となった。


 信じてはいたのだが、結果だけを述べるならば、昼休み直後に始まった大縄跳びに出場予定だったリミは、棄権した。

 出場して、最悪大観衆の前でリバースしてしまうよりは、よかったのかもしれない。


 ――――――


 ……昼食の時間が終わり、午後の部がスタートした。


 大縄飛びを棄権したリミであったが、時間が経つ頃には、胃にたまったものもだいぶ消化されたらしい。

 大縄跳びが終わった後、確認するといつもの体型に戻っていた。


 まん丸うさぎは見ていて面白いものがあったが、そう思ってしまうのも悪い気がする。

 それにリミ本人は、達志にあんな姿を見られて、恥ずかしそうだった。


「さて、次の種目は……」


 そんなこんなでプログラムは進んでいき、次の種目を確認する。


 次にあるのは、部活対抗リレーだ。

 これは、どんな競技か考えるまでもない。部活ごとに何人かを選出し、リレー形式で走っていく。


 ただ、これはただのリレーではない。ただのリレーならば、運動部に有利すぎるからだ。

 部活ごとに、決められたやり方で走ることになる。バスケ部、サッカー部ならドリブルをしながら。吹奏楽部なら楽器を演奏しながら、といった具合に。


「……本当に俺出て、よかったんだろうか」


「今更なにを言っている。いいんだ、この種目は、楽しむことだけを目的としているんだから。何度も説明しただろう」


「でもぉ」


「言い方やめろ気色悪い」


 また、この部活対抗リレーは、競うというよりも余興に近い。これまでの種目も、もちろん個人個人が楽しめるように配慮されたものだ。

 が、これに限っては勝敗などなく、純粋に楽しむことを目的としている。見ている側も、やる側も。


 そのため、順位によって点数は発生しない。

 そもそもチームではなく部活対抗なのだから、点数もなにもないのだが。


 そういった説明をされても、出場選手として列に並ぶ達志は、不安でたまらない。

 そんな達志に呆れた表情を浮かべるのは、マルクスだ。


 気持ちはまあわからないでもないが、これは競い合いの競技ではない。純粋に楽しむための、種目だ。


「そもそも、今日まで特訓してきたのは、このためだろう。いい加減覚悟を決めろ」


「うぅ、マルちゃん厳しい……でも頑張るよ」


「あぁ、頑張れ。あとマルちゃん言うな」


 この部活対抗リレーは、各部活か五人が出場し、トラックを走る種目だ。

 参加するのは、達志、副部長のマルクス、部長であるヤー・カルテア、エルフのシェルリア・テン、そしてもう一人。


 余興として楽しむ他に、各部活の宣伝ともなるのが、この種目。

 達志たちテニス部は、ラケットの上でボールをバウンドさせ続けながら走ることになる。


 第一走者は、ヤー。その後マルクス、シェルリア、達志……と続いていく。


「けど、こうしてみるといろんな部活があるよな……全部、部活は参加してるのか? 結構な数だな」


「基本的にはな。だが、すべてが参加しているわけではない。

 たとえば、ヘラクレスの所属している折り紙研究会のような、同好会は参加していない」


「あ、あれやっぱ同好会扱いなんだ」


 運動部、文化部と、その数はすべて合わせれば膨大だ。

 そのすべてが参加しているわけではないにせよ、それでもかなりの人数が参加しているのは、間違いない。


「おや、タツではないですか」


 そこに、達志に話しかけてくる人物が。


「ルーアじゃんか」


「タツも参加するのですか」


 そこには、魔法部に所属するルーア・カラナがいた。

 ただでさえ、高校生よりも中学生……下手をしたら小学生にも見える。そんな彼女が、体操服に身を包んでいると、ここが高校であることを忘れそうになる。


 やはり彼女も、参加していたらしい。

 ……というか……


「あれ、この種目って、五人で参加型だったよな。

 でも魔法部って、今四人しかいないんじゃなかった?」


 思い出したのは、魔法部の人数だ。

 確か、達志がテニス部に入った話をしたとき……今魔法部には四人しかおらず、あと一人いなければ廃部だ、という話をしていたはず。


 だが、部活対抗リレーは五人で参加する種目。一人、足りない。


「えぇ。なので、今回は助っ人を用意しました」


「助っ人」


「人数が足りない場合、部外の者に助っ人として参加してもらうことは、認められている。

 もっとも、部活対抗リレーに出場する部活に所属していない者、に限られるがな」


 助っ人を借りてきたと言うルーアに、マルクスが補足する。

 ルール上問題ないのなら、達志がどうこう言う必要もない。


 しかし、部活対抗リレーに出場する部活に所属していない者、とは。

 その上、自分の部活に出てもらうよう助っ人を頼める相手。わりと限定されている気もするが。


「へぇ。いったい誰を?」


「ふふん」


 どこか自信満々で、ルーアは指差す。

 その先に……いた。達志にとって、見慣れた人物が。


「へ、ヘラ……!?」


 人かはともかくとして、助っ人であるスライム、ヘラクレスが、そこにいた。

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