第133話 さあ競技を始めよう
体育祭に挑むためのチーム。
個性的なメンバーしかいないが、チーム一丸となれば、壁は乗り越えられるはずだ。多分。
それぞれの個性のぶつかり合いが激し過ぎるが、果たしてうまくいくだろうか。
「ま、なんとかなるだろ。うん、なるって考えよう。
魔法ありきみたいだし、これだけ人数がいれば、リミみたいなすごい奴がいるかもしれないし……」
『第一種目は、玉入れ競技です。選手の人は……』
「さっそく魔法関係なさそうなのきちゃった!?」
いよいよ競技が始まる。その第一種目は、玉入れである。
「って、玉入れ!? 高校生にもなって玉入れ!?」
「なんだようるせーな。目玉種目の一つだろうが」
「玉入れが!?」
驚愕する達志とは別に、出場メンバーが集まっていく。予めプログラムに目を通していたが、見間違いではなかったようだ。
この競技は、各チーム五人が出場する。
玉入れという名の通り、それぞれのチーム色のカゴに玉を投げ入れていく。ここまでの説明なら、普通の玉入れではある。
が、これは魔法ありきの競技。普通の、とはいかないだろう。
「じゃ、行ってくるねー」
「…………頑張る」
「ウチのクラスから二人も出んの?」
元気よく手を振る蘭花と、無口ながら気合いを表すシャオ。二人の背中を見送りながら、とりあえず達志は観戦モードに。
玉入れなんて小学生以来なため、懐かしくはあるものの……
正直、この年で玉入れに熱くなれるとも思えないのだが、果たしてあにが始まるのだろう……
『では、開始!』
メンバーが揃い、競技が開始される。
確認すると、蘭花とシャオ以外に、達志の知った人物は…………いた。
「ヘラ……あいつもいる」
スライムであるヘラクレス。手足もないスライムに何ができるのかと思いきや、忘れてはいけない。
彼はその体から、手足を生やすことが出来るのだ。
しかも……その長さに制限はない。ゴムのように伸縮自在なのだ。よって……
「玉を投げ入れるんじゃなく、直接カゴに入れている……だと?」
玉を投げ入れる必要はなく、手に持ったまま直接、玉を運ぶことが可能だ。
しかも、彼の場合それは魔法ではない。スライムゆえの特殊能力……とでもいえるだろうか。
正直、結構グレーゾーンな気もする。
「ありなの!? あれありなの!?」
「ありありだぜ!」
ルール的に問題はないらしい。ならばいいが。
あれならば、確実に玉を入れることが出来るため、非常に効率的だ。
また、別チームの様子も観察してみる。やはり各々、普通に玉を投げ入れている者が多いが、そんな単純にいくはずもない。
「……なあ、あそこのチーム玉浮いてない?」
「ありゃ無属性の浮遊魔法使ってるんだろうな」
「いいの!? あれもいいの!?」
「ありありだぜ!」
浮遊に関しては、魔法だからまあいいのだろうが。
さすが、ここまでくるとなんでもありなのだろう。
だが、ああいうやり方がありならば、こちらにも勝機はある。以前水魔法で触手を作り出し、使っていた人物が、赤チームにはいる。
あれを使えばヘラクレスのように、玉を直接入れることが可能なはずだ。
というわけで、気に入らないがトサカゴリラに期待するしかないだろう……なのに。
「なんで、この競技に出場してないんだよ!!」
「うぉ、びっくりした」
「びっくりしたのはこっちだよ!」
のんきにテント内に座っているトサカに、達志は頭を抱える。
なぜこの男は、ここでのんびりしているのだろう。
「なんであんたこの競技出てないんだよ! あんたの水触手活かすとしたらここだろ!?」
「うるせーな。仕方ねーだろ、同じ人間が出れる競技数は限られてんだから」
「ならなおさら出ろよ! あんたが輝けるのはこの競技で、役に立てるのは今この瞬間だけだろ!?」
「お前どんどん失礼になってるよな!? ナチュラルにタメ口だしよ!」
テロは起こすわのんきにしてるわ、使えないトサカである。
体育祭が始まったばかりで、早くも達志の血圧が上がりそうである。
これは第一種目落としたかもしれない……そう達志が思い始めていた頃、その肩に置かれる手があった。
「まあまあ、落ち着きたまえよ勇界くん」
「ロリ島ロペ……」
「なんて不名誉な呼び方をするんだキミは」
その手は、同じチームであるロペのものであった。正直心の中だけでそう呼んでいたのだが、つい口に出てしまった。
だってどうしようもないロリコン野郎なんだもの。
ロリ島改め毒島 ロペは、若干表情を引きつらせながらもコホンと咳払い。
次いで、選手たちの方を指さす。
「自分のチームメンバーを信じなよ、ほら」
「信じろって言われても……」
他チームは、厄介な魔法は元より、そのコンビネーションで着々と玉を入れている。
ヘラクレスに至っては、手を巨大化させ十以上の玉を一気に入れるという、とんでもないことをしでかしている。
もうあれ魔法でいいんじゃないか。
他のチームも、慣れてきたのか次々と玉を入れて……
ボォォ……
「……うん?」
見間違いだろうか。投げられた玉が今、燃えて焼失した。
いやいやそんなわけがない。目を擦り、目を凝らし、もう一度よく見る。
ボォォ……!
「……なあ、燃えてない? 玉燃えてない?」
「あぁ」
「ありなの? しかも火の元、ウチのチームからっぽいんだけど?」
「ありだし、正真正銘ウチのチームの仕業だ」




