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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第三章 変わったことと変わらないこと
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第121話 不安しかない



 さて、自己紹介は進む。


「アタシが使えるのは、闇属性の魔法さ! つっても、煙幕で相手の視界を塞ぐことくらいしかできねーんだけどな!」


 何がおかしいのか、高笑いをしている。声が大きいため耳が痛い。

 現に、隣のシャオは耳を塞いでいるし。リザードマンの聴力ってどうなってるんだろう。


「まーこれまで話す機会はなかった奴もいるけど、よろしく頼むぜお前ら!」


 蘭花とはまた違った意味での、目立つタイプ、というのだろうか。

 その勢いに押されるばかりだが……向こうからガンガン話しかけてくれそうなので、達志としては助かる。


 そして今度は、ネプランテから促すように、次の人物にバトンタッチする。


「次はあっしでやんすね。小金山 バキ。魔法は使えないっすけど、その代わり自分で言うのもなんっすけど頭脳明晰で……」


「あっし!? やんす!?」


 まだ自己紹介の途中であったが、もうツッコまずにはいられなかった。

 マンガみたいなぐるぐる丸眼鏡に、ゴブリンと大差ないんじゃないかと思えるほどの身長。


 なにより、その話し方が特徴的すぎる。


「ん、なにか問題でも?」


「あ、なんでもないです……」


 いけない、せっかく本人がノリノリなのに、場の空気を壊すようなことをしては。ここは大人しくしておこう。


「バキはこう見えても、学年トップクラスで賢いんだよねえ」


「いやあ、照れるでやんす」


 さっき自分で言うのもなんだけどって満更でもなかったくせに。

 あとその見た目じゃ全然驚かないがり勉感だよ。……そう叫びたい気持ちを、ぐっと抑え込んだ。


 なにはともあれ、残り一人だ。今までリザードマンやゴブリン、がり勉と、様々な人物と向かい合ってきた。

 もうこれ以上驚くこともないだろう。


 ほら、次の人物は……つやっつやの黒髪を七三にした、ちょっとナルシストっぽいけど、見た感じ普通の好青年じゃないか。

 顔立ちは驚くほど整っているし。


 がり勉に七三といつの時代だよと言いたくなるが。ともかく彼が口を開くのをじっと待ち……


「さあ、次はアニキの番っすよ!」


「!?」


 いきなり声を上げたバキ。アニキと呼ばれたナルシスト。嫌な予感がする。


「その容姿から言い寄る女性は数知れず! しかしそれらを一刀両断! それもそのはず、なにせ小学生以上は女じゃねえ、それこそがこの人、毒島 ロペ!」


「ふっ……よろしこ」


「ダメだこのチーム!!」


 最後の最後に、とんでもないのがぶっこまれてきてしまった。

 このチームもうダメだと、確信してしまうほどに。


 達志以外の五人の自己紹介。それが終わり、一抹の不安しか感じない。

 男女種族問わないメンバー諸君。個性豊かな人々だが、最後の一人を紹介された時点で、もう不安しか残らないほどのインパクト。


 なぜなら……


「めちゃめちゃロリコンじゃねえか……!」


 しかもそれが、こうして堂々公言されていることが問題だ。

 もうヤバイやつ確定である。大丈夫だろうかこのチーム。


「ロリコンとは失礼だね……ボクは、ただ小さな花を愛でているだけさ」


「それだけなら子供好きで許せるよ。でも、小学生以上女じゃねえとか言われてるんだけど、そこはどうなのよ」


「…………」


「なんか言えよ!」


 無言は肯定の意を示す。

 少なくとも達志はそう思っているため、毒島 ロペという人物が危険人物だと、早くも設定されてしまった。


 達志がこのクラスになってから、初めて恐怖を感じた瞬間である。


「ま、まあまあ。体育祭に人柄は関係ないんだし、さ。とりあえず次行こうよ次」


 赤チームの行く末に不安しかないのだが、ひとまず落ち着くようにと、蘭花が話を進めようとする。だが今、人柄は関係ないと微妙にディスったのを、本人は気づいているのだろうか。

 というか、女性から見てどうなんだコレは。


 ……しかしまあ、蘭花の言う通りだ。ここで他人の性癖についてツッコんでいても仕方ないし、次に行こう。

 次というかラスト。自己紹介してないのは、達志だけだが。


 今更自己紹介の必要があるのかというほどに有名人な達志だが、それはそれ。

 みんなしたのに自分だけしないなんていうのも、不公平だろうし。


「えー、い、勇界 達志……です。……よろしく」


 こほんと咳払い。いざ……ものすごい見られてる。まるで心の中まで見られているんじゃないかと思えるほど。

 やはり、こうして注目されると……少人数でとはいえ、緊張してうまく言葉が出てこない。


 これじゃあ、リザードマンであるシャオのことを、どうこう言えない。


「十年間眠ってたんだよね! 起きたらびっくりした!? びっくりしたよね!」


 うまく言葉が出てこない達志を尻目に、ぐいぐいくる蘭花。

 だがこうして質問してもらえる方が、案外答えやすいのかもしれない。


「あ、あぁ、まあ……こんな、魔法当たり前のファンタジー世界になってるとは」


「そりゃ驚くよね。勇界くんは魔法は使えないんだよね?」


「あぁ。しかも寝てた期間が長すぎて体が弱ってたから、体育祭に向けて今鍛えなおしてる最中。

 だから、あんま俺に期待はしないでほしいな」


 テニス部でマルクスによる特訓を受けているとはいえ、それで体育祭を楽に勝ち抜けるなんて思っていない。

 むしろ、それでようやく一般人と並べるかどうかって段階へ調整中だ。


 だから、戦力に達志は数えない方が賢明かもしれない。そう告げると……


「うーん、勝ち負けもそうなんだけどさ。せっかくの高校イベント、楽しんだもん勝ちだと私は思うんだよ。勝敗は二の次にしてさ」


「そうそう。だからそんなしけた面してんなってあははは!」


 勝負の勝ち負けよりも、まず楽しむことが大事だと、女性陣二人に励まされる。

 明るい蘭花に、いやに声のでかいネプランテ。こうして励ましてくれると、達志の気も楽になるというものだ。


 さっきは不安だなんて思ったが、いいチームかもしれない。そう思って、残る男性陣に目を向けると……


「………………」


「学校の外からの来客者……つまり、女児も来るということだ。どう合法的に近づくか……」


「さすがアニキ、いちいち考えることが犯罪的でやんす!」


 喋らないシャオ、犯罪者予備軍ロペ、その子分バキ。……やっぱり駄目じゃないかな。三度(みたび)、考えを改めることになった。

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