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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第三章 変わったことと変わらないこと
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第115話 森の妖精、エルフは汚れなき存在です(大嘘)



「あれ、先輩?」


「…………」


 ファミレスでのランチタイム。悩み事も聞いてもらい、わりとすっきりした。

 満腹にもなったので、さて帰ろう……そう思っていたところへ、思わぬ人物と出会ってしまった。


 達志が、この場に猛を呼んだ理由……その話の大元にいるのが、まさしく彼女、エルフのシェルリア・テンだ。

 その見た目……輝く金髪にエメラルドグリーンの瞳は、まさに妖精。スタイルもモデル並みで、出るとこは出て、締まるとこは締まっている。


 白い無地のワンピース……その味気ない服装は、しかし彼女が着ることにより、何物にも勝るドレスへと変貌する。

 一枚の絵画から飛び出してきた、芸術品のようだ。


「よ、よう、奇遇だな……」


 いきなりのことに驚いていたので、大したリアクションが取れない。人間驚くと、ろくなリアクションが取れないものだ。

 だから、とりあえず手を挙げて、軽く挨拶をしておいた。


 休日で、昼時ならばこういうこともある……か?


「こ、こんにちは! どうしたんですか、お、男二人で、ファミレスになんて……!」


 丁寧に腰を折って、挨拶を返してくれるシェルリア。いい子なのだ。

 だから、「男二人で」の部分で、妙に声色が興奮気味だったのは、気のせいだと思いたい。


 そして、達志と猛、二人を見る目がいやらしいのも、気のせいだと思いたい。


「まあ、ちょっとした悩み相談ってやつだよ」


「そ、そうなんですか……! と、年上の男性に悩み相談、ふむ……年下の悩みを聞く年上が、強引に迫って……んん、これは新しいカップリング。シチュエーションとしては問題なし。むしろいい。いや逆に、年下が年上を押し倒す展開も……?」


 なにかぶつぶつ言っているが、何も聞こえないし聞きたくない。


「……達志、知り合いか?」



 ……と、ここまで達志とシェルリア交互に視線を向けていた猛が、ちょいちょいと達志をつつく。

 そういや紹介もしてなかったなと気づく。


 こうなれば、紹介しないわけにもいかないだろう。達志はこほんと咳払い。


「あぁ、俺テニス部入ったって言ったじゃん? そこの後輩だよ。

 エル腐……エルフのシェルリア・テンだ」


「なんでなにを言い直したんです?

 ……えぇ、テンと申します。先輩とは部活仲間で、仲良くさせてもらってます。個人的にも」


 まるで天使のような……種族的には妖精だが……輝く笑顔を浮かべ、シェルリアは挨拶する。

 それに合わせて猛もお辞儀をし返すのだが、直後に達志を半目で睨み付ける。


「……なんだよ」


「お前……由香や、リミちゃんだっているのにお前ってやつは……」


 呆れたように額に手を当て、呆れたようにため息を漏らす。

 どうやらシェルリアと仲良くしていることが、気になったらしい。


 もちろんシェルリア的には、他意はない。が、体育祭に向けて達志が一番に頼ってきたのが、他ならぬシェルリアなのだ。

 なので、部活仲間の中では特に仲良くしている、と思っていても仕方ない。。


 そういった意味なのだが……その事情を知らない猛は、真意まで受け取れなかった。

 達志も話すつもりはない。体育祭のためにいの一番に後輩女子に頼りました、など。


 そんなわけで、達志と猛の間で認識に少々差がある。


「なんでそこで由香やリミが出てくるかわからんが、シェルリアとはそんな変な関係じゃないからな?」


 なぜここで由香とリミの名前が出てくるのか、達志にはまったく意味がわからない。

 それを受けて、猛は深いため息を一つ。そして思う。


 おそらくは、達志の言うようにシェルリアとは変な関係ではないのだろう。達志は女関係に疎いし、なにより……


「まあ、お前にこんな綺麗な子をどうこうできるとは思ってないから安心しろよ」


「なにを納得したのか知らんが、それはそれでムカつくな」


 このエルフ、かなりの美人さんだ。町中を歩けばすれ違った人皆振り向くであろうほどの。

 彼女ほどの美しさに叶うのは、猛の知ってる中ではリミくらいだろう。


 由香やさよなも、綺麗じゃないわけじゃない。だが、高校生でこの美貌を持っていたかと言われると……黙るしかない。

 それほどの美人を、達志がどうこうできるとは思えない。


 例外としてリミは、達志にぞっこんであるが……あれは恩人だからだろうというのが高い。

 猛から見ても、達志に対して恋愛感情を持っているかは曖昧なところだ。


 それに、本人たちも気がついていない。外野がやいやい言うのは野暮というものだ。


「お二人は、仲がよろしいんですね?」


「あぁ、まあ……えっと、こっちは茅魅 猛(かやみ たける)

 俺の幼なじみで、今は大工やってんだと」


 話が脱線しつつあったが、無事猛の紹介も完了する。

 猛と幼なじみということは、別に隠しておくほどのことでもない。教師である由香とは、隠さないといけないが。


 十年歳が違う幼なじみ……字面だけなら不思議なことはないが、達志たちの場合は少しばかりややこしい。


「幼なじみ、ですか。十年の時を経て再会した幼なじみの熱い一夜……うへ、へへへ……」


 またなにかぶつぶつ言っているが、無視しよう無視。


「それで……シェルリアはどうしてここに?」


 あまり、シェルリアの本性を猛に知らせたくはない。

 いや問題ないといえばないのだが、とりあえず嫌だ。


 問いを投げられたシェルリアは、一瞬固まったあとにこちらに戻ってきて……


「あっ、私ここで待ち合わせを……!」


「リアー、なにしてんのさ?」


 ここに来た理由を、思い出したようだ。今まで吹っ飛んでいたらしい。

 どうやら、このファミレスで待ち合わせをしており、偶然に達志と出会ったわけだ。


 つまりここで話しているということは、待ち合わせ相手を待たせているということになる。なので、ここで失礼しよう。

 そう思ったときだ、シェルリアの後ろから声がかかったのは。

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