表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第三章 変わったことと変わらないこと
105/184

第104話 人の恋愛事情っておいしいよね



 最近、そういえば昼休みに、リミがいなくなることが多々あった。ちょっとの間だけ抜けますね、とか先にお昼食べててください、とか。

 考えてみればそれは、リミへの告白に関する、対応に行っていたのだろう。

 お昼を犠牲にしなければならない、その心中深くお察しする。


 そんなわけで今回も、お昼を食べ終えてリミが、どこかへ行ってしまった。とりあえずご飯は、先に食べてしまうのだ。

 それを見届けてから、相変わらず達志の頭の上に乗っかっているスライムのヘラクレスが、一言。


「なあなあ、リミたんの告白覗きに行かね?」


 こんなことを言い出した。


「へっ……なにをいきなり? いやそれより、なんでリミのこと知って……?」


「いやそりゃわかるっしょ。リミたんほどの女なら、ラブレターとか貰ってて当たり前だし」


「言い方がなんかおっさんくさいな」


 とはいえ、言いたいことはわかる。リミならば、ラブレターを貰ってて当然みたいなところはある。

 それが毎日のように、昼休みに姿を消せば察しはつくだろう。

 いや、放課後の日もあるか。放課後は部活で別行動なので、よくはわからないが。


 まあそれはそれとして……そこからなぜリミの告白現場を見に行こうという話になるのか。曰く……


「だって面白そうじゃん」


 とのこと。告白現場を見に行くなんて趣味悪くねえかと思ったのだが、実際のところ、めちゃめちゃ気になるから困る。

 確かに、見てみたい。いやでも……ぐぬぬ。


「タツも気になるだろ?」


「まあ……」


 心の中を見透かされているようだ。とはいっても、リミの気持ちは朝聞いている。

 誰とも付き合う気がないのだから、相手さんは気の毒だが、告白は成功しない。


 結果がわかっているのだから、見に行っても意味のないような、あるような。

 ……正直なところ、趣味がとかそういう体裁を除けば、本音のところでいうと……


「めちゃくちゃ気になるかな」


「だろ?」


 なんだかんだ言っても、変なところで二人の利害が一致した。他人の恋愛ほど、見ていて面白いものはない。

 十年前、猛とさよなのやり取りを思い出す。まあ猛は超鈍感で、さよながから回っていたのだが。


 今は、十二時の三十分になる前だ。どうやら三十分に呼び出しをされて、その少し前に移動したというとこだろうか。

 急げばまだ間に合う。もう、この際本能のままに、行ってしまおうか……


「二人とも趣味悪いですよー」


 だがそこで口を挟むのは、今の今まで黙って二人の会話を聞いていたルーアだ。

 野菜ジュースの紙パックにストローを刺し、それをちゅーちゅー吸っている。


 しかし、その言葉は少し意外でもあった。


「まあ俺もそう思ったよ。このスライムとんでもねえこと言い出したなって」


「人の意見に賛成したのを棚に上げて、よく言うよな」


 言い出したにしても賛成したにしても、趣味が悪いことに変わりはないと思う。


「第一騒ぎすぎですって、ラブレターの一つや二つ。まったくこれだから男子は」


「意外だな。お前なら率先して、見に行きましょう! って言うのかと」


「私をなんだと思っているのか!?」


 飲み干した紙パックを綺麗に折りたたみながら、なぜか余裕げにルーアは言う。

 やれやれ、と肩をすくめるジェスチャーをしているその姿を見ていると、自然とこんな疑問が出てくる。


「ルーア、ラブレター貰ったことあるんだ?」


 だからこそ、こんな余裕ぶっているのだろうと。


 しかし……その質問を受けたルーアは、突然に固まった。

 それはもう見事に、ガチンッと聞こえてしまいそうなほどに固まっている。今回はリミに氷漬けにはされていないはずだが。


「ルーア?」


「どうせ私はラブレターの一つも貰ったことないですよー!」


 話しかけると、突然叫びだし、そのまま教室を飛び出してしまった。

 びぇええ、という泣き声が、廊下から聞こえてくる。


「デリカシーないんだからタツはもう」


「え、俺のせい?」


 なんか恋愛マスターみたいな雰囲気出してたから、ラブレター貰ったことあるのか聞いてみて、そしたら泣かれて出ていって……俺が、悪いのか?

 腑に落ちない。


 ま、それはそれだ。


「じゃ、行こうぜ」


 二人は、教室を出ていき、移動する。

 場所は、事前にリミが話していた。隠すことでもない、と。


「ほら、あそこだぜあそこ」


「おぉ、ホントにいた」


 ルーアのことは放置しておいて、二人で校舎裏にやってきた。校舎裏なので、当然建物の大きな影が辺りを覆っており、ちょっとした暗がりである。


「それにしても、俺がここだって言い出す前に、二か所言い当てたよな。どういうことなんだ?」


「ラブレターの呼び出しは、校舎裏か屋上と相場は決まってんのさ」


 校舎裏に移動する最中。ラブレターの中身も存在も知らなかったはずのヘラクレスが、告白場所は校舎裏か屋上だと言ってきた。

 その理由は、確定した情報ではなくとも、なんとなく理解できるものだった。


 ちなみに、屋上は今閉鎖中なので、選択肢は一つに限られたというわけだ。で、どうやらビンゴだったらしい。


 それにしても、まだリミ一人か……

 相手はリミを呼び出しといて、リミより遅れるとかなってないな。時間にルーズな男はいけないと思うんですよまったく。と達志は悶々。


「なあタツはよ、リミたんがもし告白オーケーしたらどうすんだ?」


 妙に悶々している中で、ふとヘラクレスが達志に話しかける。

 達志は思考を中断させ、ヘラクレスとの会話に意識を傾ける。リミが告白オーケーしたら、と。


 先ほども思い返したように、リミは今は誰とも付き合うつもりはないらしい。だからそんな心配をする必要はないのだろうが……

 もちろんそれを、素直に話すわけにはいかない。


 ……それに、だ。もしもということもある。相手の男がリミのドストライクで、という可能性だってあるのだ。なので、それを仮定して考えてみる。

 リミが相手の告白をオーケーしたら……したら……


「……どうするかはともかく……それはなんか、もやもやするな」


「ほほぉ?」

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ