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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第三章 変わったことと変わらないこと
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第99話 バレてないと思っていた気持ち



 とにもかくにも、スタイルについては、リミなら心配する必要はないだろう。


「まあ心配しなくても大丈夫だって。むしろ変な努力するより、そのまま規則正しい生活を続ければ、オッケーだよ!」


「そ、そうですか……」


 わざわざ相談してくるくらいだから、何事かと思ったが……こう言っては悪いが、大したことない悩みだ。

 いや、そもそも……なぜ、そんな悩みを持ったのだろうか。


 思春期ゆえの悩み、と言えばそうだが。

 それとも、なにか別の理由があるのだろうか。


「それにしても、いきなりどうしてそんなことを?

 ……あ、さては、好きな子に自分を良く見せたいとか!?」


「好き? そりゃ好きな人はたくさんいますけど……」


「いやいやそうじゃなくて、異性として、だよ」


 考えられるのは、これだ。思春期の女の子が、スタイルを気にする……つまり、そういうことではないか。

 リミの年頃なら、それくらいあってもなんらおかしくはない。


 それに、由香、こういう話大好きだ。

 教師になっても、こういった恋ばなには興味津々だ。自分のことは棚にあげて。


「いえ、別に……というか、好きな人はいませんけど」


「……へ?」


 ウキウキでリミの言葉を待っていたのだが、返ってきたのは、予想外の予想外……斜め上どころか、真上過ぎる言葉だった。


 いや、ちょっと待ってくれ。確かリミは、達志のことが好きなのではないだろうか?

 確かに彼女自身の口から聞いたことはないが、これまでいくらもそういう素振りはあったし……


 特に由香は、そう感じていたのだが。


「あれ……あれぇー?」


「ゆ、由香さん?」


「ごめん、五分ちょうだい」


 自分の中でこうだと思っていたものが覆された時の人間は、動揺からわかりやすく、パニックになる。

 今の由香がまさに、それであった。


 それからたっぷり五分。なんとか落ち着いた由香は、最後に大きな深呼吸。

 うん、だいぶ落ち着いた……と思う。


 なにせ、今までリミは達志のことが好きだと思っていたのだ。それは由香の勘違いだったのだろうか?

 いや、それにしては距離感というか、近すぎる気もするが。


「私のことはともかくとしても、由香さんは好きな人いるでしょう? たとえばタツシ様のことを」


「……ふぁっ!?」


 まだ考えがまとまっていないところへの、予想外過ぎるボディブロー。再び由香の頭の中は、パニック。

 というより、内容が内容だけに、リミの言葉を飲み込んだ瞬間、顔が真っ赤になっている。


「なななっ、にを!? わた、わしがたっくくんを!?」


 そのせいか、言語がおかしなことになっている。

 それは、リミの言葉が正解であると言っているようなものだが……そのことに、由香は気づかない。


 ちなみに「たっくん」呼びは、リミも知っている。二人きりの空間で、周りにごまかす必要もないため、不思議に思われることはない。

 とはいえ、今のは素でたっくん呼びだったが。


 そもそも、なぜ、リミがそのことを……達志への想いを、知っているのだろうか? この気持ちは、達志はもちろん、幼馴染である猛にも話していない。

 唯一さよなとは、お互いの恋を応援し合おうと、気持ちを話し合っている。


 さよなは猛に好意を寄せている。だが、この十年それらしい進展は全くない。

 もしかしたら、達志が眠ってしまっているのを気にして、自分から告白はできないでいるという可能性もある。由香に悪いのでは、と思っているのだ。


 だが由香自身、気にしなくていいと話してある。それに、失礼だがさよなのことだから、達志の件がなくても、猛とは変わらぬ関係のままだったんじゃないかと思う。

 どうやら、告白する勇気が持てないらしい。気持ちはわかる。


 この十年間……いや、幼馴染の彼に想いを寄せていたのは、それよりも前らしいので、実際にはもっと長い片想い期間だ。

 ……とまあ、由香の想いを知っているのは、さよなだけであるはずなのだ。なのになぜ、リミまで知っているのか。


 まさかさよなが話したとも思えないし……いや、まだ確証は持ってないかもしれない。だから、ここはなんとかごまかそう。

 という、由香の浅はかな考えは……


「もしかして、バレてないと思ったんですか?」


 この一言に、一蹴された。その表情はまるで、「こいつ、マジか……」と言いたげな表情だ。

 もしかして、私ってそんなにわかりやすいのだろうかと、由香自身心配になってきた。


 ちなみにこの感想は以前、達志がさよなに抱いたのと同じものである。

 復学初日、連絡をくれたさよなに対して達志は、さよなが猛に昔から好意を抱いていることを言い当てた。

 似た者幼馴染である。


 これはもう、由香の気持ちは、リミにバレてしまっているということだ。

 いやそれどころか、もしかしたら他の人たちにも?


 ……いやいや、それはさすがに。付き合いの長いリミだったからだろう、さすがに。

 そう信じたい。


「由香さんほどわかりやすい人もそういないと思いますけど」


「待って、その言い方、他にもバレてるみたいな言い方なんだけど」


 そんなにわかりやすいだろうか。

 本人としては、うまくポーカーフェイスを演じられている方だと思っているのだが。どうにも周りからの、自分に対する印象と差があるように感じる。


 だからまさか、リミの言葉は予想外であった。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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