プロローグ
初書きなので、よしなに。
頭で思いついている分は、駄作でも完成させる。
みんなが月へと関心を向ける9月。残暑の気配は太陽とともに地平線の彼方へと消えていき、窓からは話題のお月様と、少し湿り気のある涼しい夜風がこちらに距離を詰めてくる。
そんな風流さに誘われてか、窓際には少女がひとり。ベッドと窓の間の隙間、観葉植物を置くには彫塑いいスペースに、すっぽりと膝を抱えうつむいて座っている。長い髪が垂れ下がり、黒いヴェールを纏っているようだ。お月様の光や秋の風 自然と近寄る者を遮断するような膜となっている。
少女の頭には、外に広がる心地よい夜とは対照的な鈍い闇のようなものがじんわりと広がっていた。特段何も考えていないのに一生懸命頭が回る。気力が失われ、よくわからない疲れを覚える。正しいか分からなくても、外からの刺激の少ないこの状態は安定する。
色々な感情が忙しなく働いている気もする。てんやわんやな色たちが重力に負け、明度がゆるりと落ちていったとき、ふと言葉が生まれる。
「何が悲しくて生きてるんだろう。」
(......っ)
意味なんてないただ思いついた言葉のはずだった。でもすごく悲しみに襲われた。急に目が潤み、涙がこぼれそうになる。この感情に酔いしれて思いっきり泣いてみたくなった。抵抗が減り、少女の瞳はより潤いを増す。一筋、頬を伝うと、ちょっとした安心感を少女は得ることができた。
突然、部屋の明かりがつく。
急な刺激に軽く体を震わせ、肩がベッドにぶつかる。心臓がバクバクして少し苦しい。
「愛苺ー?起きてるー?」
声を聴いて母を認識し、ちょっと落ち着く。思考を切り替えるように目をこすって立ち上がる。いつものトーンで話すために、少女は喉に少し力を入れた。
「どうしたの?」
「どうしたのって学校の話よ。夏休みが終わってもう3日だけど、もうそろそろ学校行かない?今日学校の先生から電話があって、友達も心配してるって。授業もこれから本格的に進むらしいし、このまま休んでたら高校1年生で留年しちゃうわよ。」
「うん......」
「大丈夫。学校に行ってもだらだらと授業を受ければいいのよ。愛苺は頭もいいんだから、先生の話を聞いてるだけでも意味があるわ。」
母は話しながら優しく少女を抱きしめた。
「うん......」
同じ返事を繰り返す少女。母は暖かく、手厚く、少女が学校に行けるよう言葉を重ねてくれている。
しかし少女の心は、母親といつも通り話すための仮面をつけたまま変化がない。母が投げた言葉は仮面の表面をはねるだけだった。
少女の心に届くのは、真に少女の心を救えるもの。
本当に心が求めていることは、常に息苦しく暗い心を柔和するものだった。