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49,王妃からの招待状〔4〕

「まぁ、なんて美味しいんだろう。それに宝石箱みたい」


 第一王女のカトリーナ王女がクッキーを口にしてからの一言である。

 他にもふわふわとろとろの特製プリンや様々な意匠(いしょう)()らしたチョコレートなどにも目を輝かせている。

 アリーシャの時と同じ反応である。表情がやかましく忙しい。いろんな角度から見ている。


 ただ、まさか王女が宝石箱だのというベタな形容をするとは思わなかったし言えないし不敬だし、日本の和菓子の中には琥珀糖(こはくとう)と呼ばれるものも確かに存在するが、スイーツを見るカトリーナ王女の瞳の輝きこそが宝石のようである、というおべんちゃらは言わない。


「カトリーナ、はしたないわよ。うふふ、もうそんなことじゃ淑女(しゅくじょ)として笑われますよ」


 王妃に(さと)されてはっと我に返るも、王女はまだ14歳で、来年学園に通うのだという。

 カトリーナ王女への捉え方は王妃は「もう」だが、私は「まだ」なので、美味しいものがあったらどんどん遠慮せずに食べればいい。なんだか親戚の子どもみたいだ。


 今日はせっかくのお茶会というので事前に連絡をしておいてスイーツをたくさん持ってきた。

 茶会には王妃の用意していた果物が用意されていたが、個人的には私は果物の方が好きである。子どもたちは断然スイーツである。


 紅茶というのがこの世界では一般的に好まれるが、茶葉などの種類も多い。どういうわけか、地球にもこれほどまでの茶葉があったかと思う以上にこの世界の茶葉は多い。茶葉に何かこだわりでもあるのだろうか。

 ただ、基本的に茶くらいしかでないのが茶会である。


 カーティスとアリーシャが王妃たちに会うのは初めてなのだが、カーティスはもしかすると王都内で見かけたことはあるかもしれない。

 丁寧に礼をして二人とも静かに王女を眺めている。


「みっともない姿を見せてしまいました」

「いえ、どこにでも動いて走り回る妹に比べたら、カトリーナ様は花に止まっている蝶のように見えます」

「あら、そうなの、アリーシャ?」

「お兄様、そういう誤解を生むようなご発言は慎んでください!」

「まさか違うとでもいうのかい、アリーシャ?」

「それは……」


 本音は「妹よりもじゃじゃ馬のあなたの方がマシです」とでも言いたそうなカーティスなんだろうが、こういうやりとりも増えてきた。カーティスは静かに笑う。

 アリーシャがカーティスを思慕しているだけではなく、たまに言うカーティスの冗談に腹を立てるそぶりを見せる。互いに思いつつもどこか格式張っていた会話の中にも余裕が生まれる。二人にこうした変化はある。


 王妃もたいそう美人な方だが、カトリーナ王女も可愛いというよりは綺麗という言葉が似合う子だなと思う。ちょっとじゃじゃ馬のところもあるかもしれないが、そのくらいの元気があった方が健康的でいい。


 それに座ってからの所作は実に洗練されていると思う。指先の一本一本の動きまで無駄がない。さすがに王族の礼儀作法というのが徹底されている。それでもじゃじゃ馬を許しているのは王妃にも思うところがあるのだろう。

 やる時はやる、それがじゃじゃ馬娘のカトリーナ王女である。


 一方のアベル王子は、アリーシャと同じ10歳というが、男の子にしては、いや男の子とか女の子とかそういう次元ではなく、相当整った顔立ちをしている。

 田中哲朗の職業柄、人の顔というのを分析することがよくあったが、顔もどうやらシンメトリーで人為的に作られたかのように、(ゆが)みが恐ろしいほどに認められない。


 それにサラサラとして無駄毛も枝毛もない金髪も、王都内の人々の金髪とは大きく異なる。同じ金髪といってもアベル王子やカトリーナ王女とは一線を画する、と見る者が見ればはっきりとわかるだろう。

 この髪は国王もそうだが、王家の象徴ともいえるのかもしれない。それほどである。


 王室というのは美形アイドルグループの別名か何かなのだろうか。

 それだけでコンサート会場が埋まるし、対策をしてもダフ屋は横行するし、会場近くの宿泊施設も予約が取れなくなるのだ。


 前に何度か出張のためにホテルを予約しようとしたら、行楽シーズンでも何でもないのに全く予約が取れなかったことがあった。だから少々不便な場所に泊まらざるをえなかった。そういうのが続いたが理由がずっとわからなかった。

 ある日、その話を食卓でしたら、娘に「あるあるだよ」と説明され、すぐに検索すると私と同じように苦労をしていた書き込みなどを見つけてやっと氷解した。そういう世界があるのだと勉強になったことの一つである。


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