作業進捗状況44 湯けむり女皇陛下⑥(スキル編)
ダンジョンメンバー紹介
●コトシーモ・ハルガーコ・ネイデス
代々ヨケイジャロウェイ家の陪臣であるネイデス家の者。主人公の片腕の1人。
執事のような立場だが、表も裏も彼のサポートがあって主人公たちは捕まらず、まともな組織運営に成功している。割と自分の主に話していないことが多いが、きっと思いやりなのだろう。
アンマリー・シラン・ノデスガという恋人がおりヒモだったこともある。すでに春な男だった……
俺と部下のモンマニアは『漂着物の部屋』にてハーネラレティ陛下から彼女の思いを告げられ、ただ首肯するしかなかった。
いずれは陛下もこの世界を去ってしまうかもしれないし、寿命が尽きて亡くなるかもしれない。
だが俺としては、たとえ種族社会に居場所を見いだせずとも、そこからも隔絶した『陛下』にだけは何故か憧れの様な感情は持っているらしい。
この御方のあり得ない長い寿命を考えても、その背後に強大な効果を持つスキルの存在がうかがえた。
俺たちでは逆立ちしても手に入らないものなのではないだろうか。
「さて、湿っぽい話はこのくらいにしましょう。君のスキルを『見せてもらう』約束だったわね、ダンマス」
「スキルを『見る』のでございますか?」
魔都でもその手の能力者はいるのかもしれないが完全に存在が秘匿されている。
この御方はソレを有しているらしい。
相手の能力が丸見えで、対抗手段を複数持っていたら無敵ではないだろうか。
この手の能力は歴史を通して見ても、ごくわずかしか使い手がいなかった。
適正を見て、全ての者たちに幸せな生涯について助言してやれるなどと言うのは、現状では夢物語なのだろう。
「さて、いいこと? 私は貴方がダンジョンの恩恵を得てどう変わったのか気になっているの」
「私は変わったのでしょうか?」
「どれくらいかは見てみないと判断出来ないけれど、変わったのではないかしら。少なくともこれだけ地元と関わるぐらいに1ヵ所に居着いたことは無いでしょう?」
地元とほとんど無関係なら、ずいぶん長く居たことはある。
「何故か穴ぐらに込もって研究や修行に興じるうちに、新しい能力をごく稀に開花させることがあるわ。たとえ迷宮造成システムが無くても。あのシステムは貴方が掘ったダンジョンのそういった仕組みが形を成しただけなのかも」
「確かにいくつかのスキルは得ました。しかし神々は気まぐれなのです。現状をひっくり返すような力は得られないのでしょう」
「スキルは本来、生まれた時点で持っている力よ。あり得ない執念か神の恩恵がなければ新たに得られないわ。そしてそれを得る幸運もまた滅多に無いでしょう」
スキルは『才能』と『技能』に別れる。
『才能』は適正であり、職業などに影響を与えるその者の得意分野だ。
自分で何を持っているのか気がつくのは、寿命の長い種族の方が有利ではある。
一方で『技能』は理力を用いて発現させる『技』であり、生まれてからある日突然に何となく使えることが分かる。
理力とは意思や無意識が行使する力で、あり得ない現象を世界に合致させて顕現させる力である。
理力は誰でも少しだけ持っているが、一握りの者たちは大量に持っていて大規模な現象を引き起こし、その場にある物体を変化させたり、消滅させたり出来る。
ほぼ全ての奴らが『技能』は使えるから使うし『才能』は得意なことだから自然と職業に選んだり趣味に活かしている。
つまり『見れない』状態が当たり前だ。
陛下はそれが見えると言う。見せることすら出来るとのことだったので、俺は折角だから見せてもらうことにした。
「じゃあ、やるわよ。ユアセイラ、運命は時として残酷だけど凹んではダメよ」
「その……陛下。そう仰られただけで凹みそうです。何か不味そうなら、私は見るのを止めたいのですが」
「それだとつまらないから見てみなさいよ。で、嫌だったら転職したら良いと思うわ」
何と言うか拒否権無しでこれは酷いのではないだろうか。
モンマニアがそれを聞いて言った。
「あの、ダンマス。私は出て行った方が良いんじゃありませんかね?」
「いや、居てくれ。どうせ皆が知ってるような物しか持ってないさ」
「じゃ、出すわよ」
あまりにも素っ気ない言い方だったが、出し抜けにそれは目の前に現れた。
それは文字の書かれた板のように見えたが、向こう側が透けていた。
「これがあんたの持っているスキルよ。(高)とか(中)とか(低)というのは熟練の程度だけど、常におおざっぱでそれ以上伸びるのか打ち止めなのかは分からないわ」
それにはこう書いてあった。
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●ユアセイラ・ヒートコート・ヨケイジャロウェイ
≪技能≫
◆気配察知(中) ◆気配隠蔽(中)
◆凄い投擲(中) ◆凄い加速(低)
◆遠距離視(中) ◆生活系理力術(高)
≪才能≫
◆交渉(高) ◆商業(高)
◆宿経営(高) ◆猟師(低)
◆投擲(中) ◆政治(中)
◆詐欺(高) ◆窃盗(高)
◆密輸(高)
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「「………………」」
「うーん、黙られても困るんだけど。あんたね普通に生きてて下の3つは無いわー」
いつの間にか陛下の俺に対する呼び方が『あんた』に戻っていたが適当なのだろう。別に陛下だから良いのだが、問題は目の前の結果だった。
俺もモンマニアも黙ってしまった。
意外性はあった。政治と猟師と投擲は知らなかった。
『気配隠蔽』と『遠距離視』は実は生えてきたのだ。
気配察知を会得してからしばらくして使えるようになった。
俺は落ち着いていれば、ダンジョン内の騒ぎを察知し、それを遠距離から視認して、夜でもお客様を起こさないように移動できた。
下の3つはクーデレに見られなくて本当に良かった。
「結構、多芸だと思いますよ。ダンマス……」
「良いんだ、モンマニア。こんなもんだろ」
「何か『無難に思った通りだったよね』って聞こえるんだけど。あんたこの短期間に増えたスキルが多いわね。下の3つは最初からあるってのも嫌だけど」
「陛下、増えたスキルは温泉経営に役立っております。それに大した能力ではありません」
「今はね。これから増える能力がどんなものかは知らないけれど平和に生きなさいよ。にしても『ココ』の息子だけあって下の3つはガッツリ付いてたか……」
俺は何をどうあがいても、母の息子であるらしかった。
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