作業進捗状況3 ダンジョンの社会的位置付け
背景設定をどうやって書こうか悩みました。
読み返すと私の文章は破綻してます。
とりあえず欠けていると思われる部分を足してみました。
『ミョーニセパラディ・ボーダ1200ヘーベ』
出し抜けに現れたナロー異神群の一柱である『神』は自らをそう名乗った。
「行き詰まっているようだな、ダンマス。2ptだ。2pt分だけ手伝ってやる」
俺も部下たちも、しばし呆然としていたと思う。
その『神』は多面体が球状に配置された体を拡げたり縮めたりしながら、地上から2アーム(≒2m)程度の高さに浮いていた。
助けてくれるのはありがたいが、2ptってのが一体どの程度の恩恵なのか俺には良く分からなかった。
それでも藁にもすがりたい気持ちだったものだから、素直に頼んでみようという気になった。
「助けていただけるのであれば有難い。私どもは本当に困っているのです」
俺の訴えを聞いた『神』は答えた。
「困っているのは報告を読んで知っている。我々としてはここに『目的と意義』が書かれていない事に不満がある」
「目的と意義ですか?」
「『ダンジョンの社会的位置付け』と『ダンマスの目的』が抜けているは片手落ちではないのかな? 我々に訴えを聞いてもらいたいのであれば背景を語るのがスジというものではないかね?」
それはそうかもしれない。俺たちと考え方も住む世界も違う住人に、お願いしようと言うのであれば、それは伝えなければならないだろう。
こうして俺は『ダンジョンの社会的位置付け』を『神』に語り始めた。
まずは知的種族と『各種族の関係』から語らなければいけないだろう。
この世界の知的種族は『人数の多いところ』だと3種族ある。
他にも少人数の種族がいくつかあるが、今回は割愛させてもらう。
『魔族』と『人間』と『エルフ』だ。
お互い外見はそっくりだ。『人間』は角が生えて無い『魔族』だし、『エルフ』は角が生えて無い上に耳が長い『魔族』だ。
『魔族』は『人間』より20倍は長生きだ。そして腕力も強い。人間の力を『人力』とすると魔族のそれは『魔力』ってことになるが『魔力』の方がずっと強いことになる。
強大な理力を行使する者もいるがほとんどが貴族階級で数も少ない。
『理力』ってのは意思だけで行使する力のことで、便利で破壊的な能力だ。
『エルフ』は『人間』より50倍は長生きだ。その代わり魔族や人間より腕力が弱い。ただし『理力』の扱いに長けたものがずっと多い。
市井の者でも魔族や人間の平均より高い理力を有する場合が多い。
『人間』は比較的寿命が短く、腕力もそこそこで理力もそこそこだが、理解力もあってその上で繁殖力も高いものだから、結構な勢力を誇っている。
数で言えばもっとも多い。
もちろん才能豊かな者もいて、彼らは他種族の上位者と互角に戦えるくらいに強い。
そしてこの3種族はお互いに国の境界を接しながら、割と穏便な関係を築いていると言って良い。
そして各種族間での意志疎通を滑らかにしている共通言語も存在した。
各種族の代表とも言うべき『勇者さん』達がたまに代理戦争じみた戦いを繰り広げることはあるにしても、大軍が激突するような戦争はなかなか起こらない。
『異世界からの漂着物』はほとんどゴミだが、たまに植物の種などもあって、食料供給の大幅な改善が見込まれたため、各種族とも内政に必死だという事情もあった。
ココまでの説明については『神』は一応の納得を示してくれた。
「なるほどな。ずいぶん多様性に富んだ世界だ。因みにゴミしか流れて来ないのは『管理者』が頑張って『ゴミしか流れて来ないようにしている』からなんだよ」
「ゴミ以外もお願いしたいのですが、難しいでしょうか?」
「無理だな。それよりもダンジョンについて話しなさい」
俺はダンジョンの事より『ダンジョンマスター』について語ることにした。彼らは各種族にとって『どう言った位置付けの奴らなのか』ってことを知ってもらう方が話が早いだろう。
どの種族にもエリートってのは居るが、こいつらは『勇者さん』であって『ダンマス』にはならない。
彼らは能力が発現した段階で、種族や国家に対する『帰属意識』を持ってしまう。彼らが中心だからだ。
もちろん『不当な扱い』なんて受けようが無いし、安定をもたらしているのがエリート達である事も分かるだろう?
これがこの世界の現実ってやつだ。
世の中は腐って来ている様に見えて、文明の最初から変わってない。それは『腐っている』んじゃ無くて、今も『普通』の状態だってことだ。
現状に不満があるのは『俺たちだけ』なんだと思う。
そんな訳でソコソコの能力がある奴らと、俺みたいな『落ちこぼれ』はどうなのかって話しになると思う。
そういう連中は『ダンマス』か『冒険者』になる場合がある。
ソコソコの能力があると、自分が『認められない不満』という感情から逃げられないことがある。
俺みたいに劣等感に苛まれ現状を打開したいという奴はいるだろう。
そしてそういった連中は俺も含めて、種族への帰属意識は薄い。
そういう奴らの一部が『城塞』や『洞窟』やら『地下施設』なんかに潜り込んで、研究や陰謀や自衛に頑張っている。それが『ダンジョン』であり、奴らは『ダンジョンマスター』と呼ばれることになる。
通常のダンジョンマスターはソコソコの能力者であり、それぞれが自身の能力や影響力を伸ばす為に『研究』や『修行』を行っており、稀にであるが能力が伸びることはある。
また生まれた時に持っていない能力を獲得することもあるが、幸運に恵まれることはこれも稀だ。だが無いわけではない。
国や種族から見ると『ダンマス』というのは『扱いに困る人達』の代表格ってことになるため、法的保護をどこからも受けることが出来ない。
周辺に迷惑をかける奴らも居るため、むしろ排除の対象になる場合が多い。
ここで『扱いに困る人達』を排除する役割を持った奴らが必要になってくる。帰属意識は持っていて、ソコソコの能力があるフリーの請負人は『冒険者』って呼ばれてる。
『冒険者』は武装したフリーの労働者として、国や個人から『治安維持要員』や『護衛』に雇われることが多い。
まれにではあるが『ダンジョン』に侵入して『合法的な強盗』を働く場合もある。
通常はダンマスが死んでも冒険者が死んでも問題にならない。国や種族がこの手の行為を放任しているからだ。
本格的にヤバい奴が危険行為に及んだ場合には、国からエリートが派遣されてそれで終わりだ。危険人物はサクっと消される。
俺がダンマスを始めようとしたのは、この辺の『綱渡り』に自信があったからだし、いい加減に実家の影響力から距離を置きたかったからでもある。実家の影響力から逃れるには今のままの俺では無理があった。
ここまで語り終えたところで神は……『ミョーニセパラディ・ボーダ1200ヘーベ』は答えを発した。
「そういうことであれば一応納得はしよう。最初の約束通りにわずかばかりの恩恵を施してやる」