作業進捗状況2 神降臨
やはり文章がおかしい部分がありましたので修正しました。
このダンジョン(予定地:造成中)の周辺はといえば、峻険な山々に囲まれた天然の要害といったところだと思う。
ここにもしダンジョンが出来たら「誰も来ないに違いない」と当然の様に考えるだろう。
「ここにダンジョンがある」という噂はどうやっても伝わりにくい。
それがもし伝わったとしても、冒険者は儲けの見積りを低くするだろう。
最初に『人が来ない静かな場所を』と思っていたのは、その方が何をするにしてもバレにくいと思っていたからだ。
別の意味でネイデスも俺も間違っていた。
ダンジョンを掘り始めた当初から、何となく違和感はあった。
どういう訳か、登山家みたいな奴や商人っぽい奴らや、麓の村の人達、旅芸人の一座、この山脈を擁する国の正規軍の皆さんなど、やたらと人の往来があった。
『地下に居住施設を建設する許可証』自体は実は持っていた。
俺みたいなのも100年も経てば、抜かり無い『漢』になろうというものよ。
以前住んでいた『島』で歓待した侯爵妃は実に気前の良いお方だった。
どこかに一筆、書状を書いておられたようだが、役所では『内容をほぼ無視された』上で許可が降りただろう。書いてある内容も冗談みたいなモノだったと思う。
場所の選定についてはその時は万全を期したハズだと思った。
帰りに人に会ったがそれでも3人だった。登山が趣味の人達だと思った。彼らみたいな物好きが、極々たま~に、本当に時々フラッと来るだけだとそう考えていた……。
「楽しんでくれているかな? クーデレ……」
俺は現在、当施設における最重要人物の相手をしている最中だった。
とにかくダンジョンがどうにもならない以上、目的の一つについてだけでも何とかしたかった訳である。
「貴方が『ダンマス』を始めると最初に言ったときには、一体何を考えているのかと思ったけれど意外と悪くないわ、ここ」
「気に入ってくれて何よりだよ! いやー最初は本当にもっと内装もちゃんとして、居心地の良い空間を地下10階に作って、冒険者が死ぬのを眺めたり、漂着物や宝物を愛でたり、夏は登山を楽しんだり出来たら良かったんだけど……」
「そこは大目に見ましょう。私としては何故か毎回牢獄送りにならない御方が、強制労働に勤しんでいるのを眺めるのが楽しいですわ。温泉に浸かって美味しい物をいただきながらならば、文句の付けようもありません」
俺は彼女のことを『基本的には包容力のある優しい女性』だと思っている。ただ優しさと厳しさが表裏一体になっているだけだと。
それなら俺だって、悪徳と道徳が表裏一体になってたって良いと思うだろう?
しかしだ、取り敢えずそんなことは横に置いておこう。クーデレがことのほか上機嫌に見えるのは、実は結構珍しいことだった。
因みにクーデレに出している『酒』と『料理』なんだが、これは転移ゲートで持ってきた物じゃ無い。
俺もネイデスも見逃していた人達の内、麓の方から来る村人や商人が売ってくれる物だったりする(ちなみに知的種族の間では食べ物の嗜好にあまり差がない)。
毎月50組くらいは来るので助かってる。
計画の最初から、生活物資の補給については割とフンワリ考えていた。金は結構持ってたからだ。どうやって稼いだかは聞くな。
だから金は有っても、普通は売り物が向こうから歩いて来たりしない、なんてことは充分に理解はしていた。しかしクーデレが『転移ゲート』を作ってくれたこともあって見積もりは甘い方だっただろう。
ご近所さんというのは抵抗があるが、麓の人達は商魂たくましい奴らだったものの『余所者価格』では無かったので、俺たちは感激してしまった。
俺はある意味『有名人』になり、麓の連中と商人の間で『縦穴式住居を掘ってる変わり者の旦那』として磐石の地位を築いていた。
俺のダンジョンの1フロアの広さはおよそ500アーム(≒500m)✕200アーム(≒200m)位の広さだったりする。
地下1階は俺たちのテントが立ち並び、キャンプ場みたいになっていたし、飲み水は山から引いた。
下水設備も作って、厠も設置した。地下2階に降りれば『温泉施設』があるって寸法だ。
ついでに立ち寄る行商人や旅芸人・遍歴詩人相手に格安でテントも貸したし、温泉も入り放題にしておいた。
クーデレはと言えばもちろん一番豪華で広い『テント』に陣取って、完全に今の生活を満喫しているように見えた。
「結局ホテルにはしなくても、宿泊施設にはするのね」
「それは違うぞクーデレ。こいつは高度な偽装ってやつだ。そんなことより芸人一座が講演やってくれるそうだぞ。見に行こう」
正規軍の皆さんも適当な広さのココを気に入ってくれていた。この辺の話は後でしようと思う。
国軍を敵に回さずに平気な顔してられるのは理由があるんだ。実のところ『あちらさん』と俺は『ある件』でグルだった。
もちろん俺たちはキャハハウフフしていただけじゃ無い。
このままだと以前のパターンのまま、金は持ってトンズラする未来しか見えなかった。
したがって真面目にダンジョンの事も考えないといけない。
ある日『迷宮造成システム』に作業進捗報告を食わせた時、その『神』は出し抜けに現れた。
『ミョーニセパラディ・ボーダ1200ヘーベ』……そのナロー異神群の一柱である『神』は自らをそう名乗った。
何となく意味が頭の中に入って来たが、まったく意味不明だった。大体、共同体の境界線の前に『屋敷みたいな広さ』の土地を確保して、何をするつもりなのか知らないがその時はまったく気にならなかった。
『神』の外見はと言えば、多面体が球状により集まったり離れたりしている上に、文字の書かれた四角いボード状の何かが頭上の空間に消えていっていた。
本能的に理解しただけだが『ボード状の何か』が消えていく先は俺たちの見てはいけない世界だった。
そして『神』はおもむろに語りかけてきた。
「行き詰まっているようだな、ダンマス。2ptだ。2pt分だけ手伝ってやる」
今回神として出ている『ある方』には許可をいただきました。