作業進捗状況22 休暇届けの提出
作者です。
よろしくお願いいたします。
実はジャンルを変更しました。そのためこんなご挨拶になってしまうと思います。
文章に矛盾があったり、分かりにくい点がありますが、随時なおしていく予定です。
以前から読んでくださっている方々には、プロローグを大分修正しましたので、そちらもお読みいただき、感想など寄せていただけると幸いに思います。
今回の報告書では少しだけ日にちを戻る事になる。
報告書をお読みいただいている神々には恐れながら、前回のお約束通り『休暇届けを出した件』について語らせていただこうかと思う。
俺は考えていた『義父の休暇届けを出す策』を実行に移そうとしていた。
もちろん俺が魔都まで持って行って皇城の窓口に提出して来るのである。
一緒に行ってくれるのはネイデス、オッサンダロ、ガーデネイの3名+他5名の俺を含めて9名ということになった。
部下たち全員が『ヒッデーナ家の家臣です』という格好をしていた。
俺だけがワロー軍団長の結婚式で着ていた『新進気鋭の成金商人』って格好だった。
飴赤色のボワッとした外套に、同じ色のズボンと丸いカボチャみたいな帽子ってヤツだ。当然ながら杖も持ってた。
因みに帽子は角が出ているモードのヤツである。
金回りの良さだけは全身で主張していた。特に指輪を右手の親指以外に4個も着けて、首もとに金剛石のボタンまでしていた。外套もたっかいヤツだったから貧乏で舐められることはないだろう。
出かけるときのクーデレの『何となく納得いかない』という視線と、義父の大ウケした笑いだけが印象に残った。
「クーデレ、ちょっと行ってくるよ。屋敷のゲートを使わせてもらうよ」
「それは構わないのですが、ユアセイラ。貴方は何でそんな格好なのですか。もう少し出自に相応しい服装というものが……」
「いや、その出自から存在しない男として扱われているからね。俺は君が懇意にしている温泉宿の経営者なんだよ。向こうではね」
「そういうことでも無いとは思います。私が聞いたお話では『貴方が出ていった』と言われていました」
「家の体面を思えば、そういう言い方になるんじゃないかな。とにかく行ってくるよ」
「ハッハッハー 娘よそう気に病むな。じゃあ婿殿頼んだぞ。そのオモロい姿で俺の為に休暇を勝ち取って来るのだ!」
何と言うか義父の力強い激励とクーデレの心配そうな顔に見送られ、俺たちはしばらくぶりに少しの間だけ魔都に帰ることになった。
俺がこんなことをするのは、当然ながらメディーアとの婚約破棄を成功させるためだ。
何だか複雑な気分がした。
メディーアの方はこの婚約について、特に疑問も何も感じていないようだった。
ただし俺が犯罪者じみていたから、その部分にだけはこだわっていたようだ。
一方の俺はと言えば、彼女たちエリートに紛れもない劣等感を感じているくせに、我慢強く待ってくれているクーデレには甘えているという矛盾を抱え込んでしまっていた。
俺的にはハッキリとケジメをつける必要を感じているところである。
転移ゲートをくぐるとヒッデーナ家の屋敷の物置小屋だったりする。
そこからは運搬獣4頭が引く獣車に乗って移動だ。
オッサンダロと他5名は獣車の外を騎兵獣に乗って並走する事になる。
日は中天に達しようとしていた。
この世界の1日は24ザイト(≒24時間)ということになっている。
1週間は7日で、1ヶ月は30日だ。1年は12ヶ月ということになるが、4年に1度だけその年の最終日が2日間になる年がある。
時計は高価だがうちの『ダンジョン』にも大きいヤツがあるし、クーデレがまれにズレが無いか確認してくれていた。こういう所にも魔法の恩恵があるんだ。
そして馬車の中にもそれの小さいヤツはあった。
そろそろ皇城に到着する。そして古馴染の奴はちょうど休憩時間ではないだろうか?
その書類届け出窓口の役人は事務所の裏口の扉から出て来て、パイプのタバコに火をつけたところだった。
「これはワーリート様。ご無沙汰いたしております。ご健勝でいらっしゃいますかな?」
ワーリートは一瞬面食らった顔をしたが、直ぐに俺に気がついた。
懐かしい顔のその役人は名を『ワーリート・モーレティルジャン・デナニカ』といった。
眠そうな顔をしているが貴族出身らしく整った顔で、赤っぽい短髪に短めの金色の角が出ていた。
役人らしく白くて細長い半袖の上着を着ていた。上着の下も白で統一されていた。
割と無頓着な男だからこの件は引き受けてくれそうだと思う。
「これは実家を追い出されたユアセイラじゃないか。噂じゃ他国で犯罪者の頭目をやってるって聞いたよ。急にどうしたんだ? そんな腐れ商人みたいな格好して。まともに稼いでいるように見えないぜ」
俺は後ろに控えたネイデス達から、書類と品物を受け取りながら言った。
「実はヒッデーナ家とは切れてなくてね。侯爵閣下の『休暇届け』を受理してもらいたい。それと犯罪者は誤解だ。商人の互助組織の一員というだけなんだ」
「書類は陛下まで上がる予定だが、途中ではねられる可能性があるぞ」
「そこを何とかしてほしい。献上品があるんだ。一緒に提出してもらえないかな?」
「何を出すんだ? 内容による」
「ブラウンケーキにプラスチック製のカップと手桶、石鹸とサイン色紙だよ。あとはウェカーラナーナイの『ムリスジー酒』が10本ある」
「サイン色紙って漂着物か? 『ムリスジー酒』もあるのか!? ってもプラスチック製品はあまり喜ばれないぞ」
プラスチック製品については一部の理力使いが作れた。普通の品物は。
「ケーキと酒以外は漂着物なんだ。そして向こうでも販売されていた物じゃ無い。因みにお前さんの分もちゃんとあるよ」
俺はワーリートにムリスジー酒を2本と石鹸を1籠手渡した。
「漂着物だから石鹸の香りが良いんだ。それとな偶然にお前さんに昼メシをご馳走する約束があったことを思い出した。これで旨いものでも食べてくれ」
俺はワーリートの懐に金貨30枚、つまり30万デネイ(≒600万円)ねじ込んだ。
「ほー、石鹸と酒か。うん確かにずいぶん前に昼メシをおごってもらう約束だったな。それより今回の仕掛けのタネは、この色紙と同じ文字が書いてあるカップの方だな? 自信があるのか」
「理由はまた今度コッソリとな。上手く行ったらヒッデーナ家に来てくれ。温泉が楽しめるぞ」
「あの家からお前のアジトに繋がってるのか」
「アジトって良い響きだが『ダンジョン』なんだ。温泉テント村もやってる」
「学生の頃からそうだったが、何で訳の分からないことになってるんだ? まぁいいよ。書類は陛下に何とか上げてみる。書類と献上品は窓口からちゃんと出せ。俺が受けとる」
そう言ってワーリートの奴は酒と石鹸と金を置いてくる為に事務所に戻った。
個室があるんで何をもらったかなんてバレないことも分かっていた。
早速、窓口まで献上品と『休暇届け』を持って行かないといけないな。




