魔の海域
翌朝、キルケと侍女たちは、オデュッセウスたちの船を見送った。
キルケは少し腰を押さえていた。
侍女:「キルケ様どうかされましたか?」
キルケ:「い、いや大したことはない・・・ハハハ」
キルケの顔はちょっとひきつっていた。
キルケ:(オデュッセウスのやつ最後だと思って激しくやりおって・・・)
この時出来た子供がテレゴノス(遠くで生まれた者)
正妻ペネロペとの子供がテレマコス(遠くで戦う者)
時の泉に入ったのがラティヌスになります。
キルケの島を出港したオデュッセウス一行はセイレーンがいる島に近づいていた。
オデュッセウス:「お前たち、耳栓の準備をしろ、それと俺をマストに縛り付けてくれ!」
エウリュコロス:「おいおい、オデュッセウス気でも狂っちまったのか?」
オデュッセウス:「俺はセイレーンの歌声が聞きたいんだよ!」
エウリュコロス:「お前の気がしれんよ、どうなっても知らんからな!」
エウリュコロスはオデュッセウスに念をおしてマストに縛りつけた。
エウリュコロス:「いいか!これからセイレーンの島を抜けるまで、俺が船長だ!」
オデュッセウス:「セイレーンの島を抜けるまでだからな!」
エウリュコロス:「わかってる!」
エウリュコロスはオデュッセウスを睨み付け黙れと言わんばかりに叫んだ。
エウリュコロス:「絶対にオデュッセウスの言うことに耳を貸すな!」
オデュッセウス:「まぁこれから耳栓するからそもそも聞こえんがな」
エウリュコロスはチラリとオデュッセウスを睨み付けた。
オデュッセウス:「あとは任せた船長殿」
エウリュコロス:「それでは、全員耳栓装着!」
全員が耳栓をつけると、後は身ぶり手振りで指示を出していった。
セイレーンの島に近づくと、かすかに歌声が聞こえだし
オデュッセウスはフンフンと楽しそうに歌に耳をすます。
オデュッセウス:「全員!島に向かって進め!」
部下は全員無視してオールをこぎ続ける。
オデュッセウス:「なにをしてるんだ!島に進むんだ!」
エウリュコロスもオデュッセウスが何か叫んでいるとはわかっていたが、
あえて相手にはしなかった。
オデュッセウスが叫び続けて、ぐったりなった頃。
セイレーンの島を抜けたんだなと、オデュッセウスをマストから解放し耳栓をはずした。
オデュッセウスが気がつくと、エウリュコロスが言った。
エウリュコロス:「随分、楽しそうだったな。知らんけど」
オデュッセウス:「俺もよく覚えちゃいない」と肩をすくめて手のひらを天井に向けた。
エウリュコロス:「で、次はどっちへ行くんだ?」
オデュッセウス:「次はスキュラの方に行くことになっている」
エウリュコロス:「話によれば数名犠牲者がでるはずだが・・・」
オデュッセウス:「なんとかなるかもしれん」
そういってオデュッセウスはキルケから受け取った小瓶を見せた。
スキュラの海域に来ると、海面から1匹の犬が飛びかかってきた。
その犬を避ける部下、犬の胴体は蛇のように長く、その先は同じような犬蛇が6体集まり、
上半身は美しい女性の姿をしていた。
オデュッセウス:「あれがスキュラか!!」
オデュッセウスは小瓶を掲げ叫んだ
オデュッセウス:「まってくれ、お前を元の姿に戻してやる!」
そういって、オデュッセウスは小瓶の蓋を開け海へ海へ垂らした。
キラキラと海面が光輝き、スキュラの犬蛇が消えていく。
スキュラはしばらくオデュッセウスを見つめると、海の中へ消えていった。
エウリュコロス:「あれが本来の姿だったのか・・・」
オデュッセウス:「きれいなニンフだったんだな」
一段落ついたオデュッセウス一行は、イタリア南岸にあるトリナキエ島で休むことにした。
この島は太陽神ヘリオスが家畜を飼っている島である。
オデュッセウス:「この島は明日には出発する。それとくれぐれも家畜に手を出すな」
オデュッセウスは部下に念をおし休んだ。
翌朝、嵐がやって来た。
この嵐というのがなかなか止まず、一ヶ月ちかく足止めをくらう。
エウリュコロス:「こりゃどうなってるんだオデュッセウス」
オデュッセウス:「俺もどうしていいかわからんよ」
エウリュコロス:「それと、食料が無くなってきている、部下たちもイライラしているぞ」
オデュッセウス:「・・・・・・絶対に家畜には手を出すなよ」