ピロートーク
オデュッセウス:「いよいよ今夜で最後だな」
キルケ:「そうなるな」
ベッドで横になりながら話す二人
キルケ:「この島を出ると、セイレーンがいる島の側を通ることになる」
オデュッセウス:「セイレーン?」
キルケ:「歌を歌う鳥の化け物だ」
オデュッセウス:「面白そうじゃないか」
キルケ:「その歌を聴くと、その歌声に誘われて岩礁に乗り上げ船は難破するそうだ」
オデュッセウス:「ほう、そりゃなおさら聴いてみたい」
キルケ:「まぁ、それもよいかもしれんが、お前の冒険はそこまでだな」
まともに忠告を聞こうとしないオデュッセウスにあきれたキルケは寝返りをうって
オデュッセウスに背を向けた。
オデュッセウス:「で、どうすればいいんだ?」
キルケ:「蝋で耳栓でもしていろ」
オデュッセウス:「ありがとう」
しばらく沈黙したあと
オデュッセウス:「ほかにはないのか?」
キルケ:「聞きたいのか?」
オデュッセウス:「教えてくれるんだろ」
やれやれとと言った表情でキルケが話はじめた。
キルケ:「セイレーンの島を抜けると、カリュプディスが住む海域とスキュラが住む海域がある」
オデュッセウス:「スキュラとカリュプ何だって?」
キルケ:「スキュラとカリュプディスだ」
キルケは腕を宙に伸ばし指先でクルクルと渦を描いた
キルケ:「これがカリュプディスだ」
オデュッセウス:「はぁ?」
キルケは大笑いしたあと、真面目に答えた。
キルケ:「カリュプディスは渦巻きの怪物で、飲み込まれたらまず全滅だな」
オデュッセウス:「で、もう一方は?」
キルケ:「スキュラか、スキュラは可愛いやつでな、我に復讐したいと思っておる」
オデュッセウス:「はぁ?」
キルケ:「昔、グラウコスという海神がおってな、スキュラに恋をした」
オデュッセウス:「スキュラってのは美人なのか?」
キルケ:「昔はな」
オデュッセウスはしかめっ面をした。
キルケ:「スキュラにフラれたグラウコスが我に何とかならないかと相談にきた」
オデュッセウス:「それで?」
キルケ:「そのグラウコスという海神が、イケメンでな!」
キルケは楽しそうにオデュッセウスの顔を除き込む
オデュッセウス:(なんか面白くないぞ・・・)
キルケは天井を見つめ話を続けた。
キルケ:「それで我はグラウコスを何とかしようともうアタックをかけた・・・」
キルケは悲しそうな顔をして呟いた。
キルケ:「そしてフラれた」
オデュッセウス:(悪いこと聞いちまったかな・・・)
話が止まってしまったのでオデュッセウスが聞いた
オデュッセウス:「で、スキュラはどうなったんだ?」
キルケ:「ああ、その話か、頭にきた我は、呪いの毒をスキュラの水辺に撒いてやったのだ」
オデュッセウス:(怖・・・)
キルケ:「そしたらな、スキュラの下半身から6頭の犬の頭が生えてきたというわけさ」
オデュッセウス:「おいおい、そりゃやりすぎだろ。なんとかしてやれよ」
キルケ:「そうだな、ちょっとやりすぎたかもしれん」
キルケはベッドから起き上がると、机に向かい2、3個の薬品を調合して呪文を唱えた。
ポンっという音と共に薬が出来上がり、その薬を小瓶に詰めた。
キルケ:「この薬をスキュラの海域で撒くがいい」
そう言って、キルケはオデュッセウスに小瓶を渡した。
オデュッセウス:「ふぁ~・・・そろそろ寝るか」
キルケ:「そうじゃな」
キルケはオデュッセウスのベッドに潜り込んだ