時の泉
豚飼いのエウマイオスに屋敷を任せて、テレゴノス、テレマコス、ペネロペの3人はオデュッセウスを乗せた船で、魔女キルケの島へやって来た。
島に着くと動物たち出迎え、全員を屋敷まで運んでくれた。
テレゴノス:「ここが魔女キルケの屋敷です」
魔女キルケ:「戻ったか、こちらの方は?」
テレゴノス:「こちらはテレマコス殿とペネロペ様です」
魔女キルケは、年をとっても美しさの変わらないペネロペを見て言った。
魔女キルケ:「その変わらない美しさ我々と近い血筋かも知れないわね」
テレマコス:「すみません、父を、父オデュッセウスを助けてください」
キルケは青ざめたオデュッセウスに目をやった。
魔女キルケ:「・・・ふーっ、しばらく見ないうちに変わり果てた姿になりおって」
キルケはオデュッセウスを軽く蹴飛ばした。
驚いて魔女キルケを見る、ペネロペとテレマコス。
魔女キルケ:「こいつはもう死んでおる」
オデュッセウスの魂はまどろみの世界を旅していた。
オデュッセウス:「イテッ、だれか俺を蹴りやがったな・・・」
本当の感覚があるわけでも、見えているわけでもなかったが、そう感じるのだった。
オデュッセウス:「ここはいったい何処なんだ・・・」
オデュッセウスはこのまどろみの世界のなかで、ただ流されていく存在となっていった。
ペネロペ:「なんとか生き返らせることは出来ないのですか?」
テレマコス:「お願いします」
魔女キルケ:「オデュッセウスはもう、この世界での役目を果たし終えたのだ。」
ペネロペ:「で、でも・・・」
魔女キルケ:「もう、ゆっくりさせてやれ」
テレマコス:「・・・」
その晩、キルケの屋敷で食事が振る舞われたが、ペネロペとテレマコスはあまり食べることは出来なかった。食事が終わり、それぞれが部屋に案内される。
テレゴノスがキルケの部屋へやってくる。
テレゴノス:「母上、どうして俺に槍を持たせたのです?」
魔女キルケ:「護身用だと言っただろう」
テレゴノス:「ですが、俺には魔法が・・・」
魔女キルケ:「お前は、オデュッセウスが死んだことが、我の企みとでもいうのか?」
テレゴノス:「そういうわけでは・・・俺自身、父を殺すことになるとは・・・」
魔女キルケ:「人間という生き物には、その役目が終わると死ぬものさ」
テレゴノス:「・・・」
なかなか部屋を出ていこうとしないテレゴノス
魔女キルケ:「いいから、もう寝ろ!」
ベッドに横になりながら考え込むキルケ、テレゴノスは部屋から出ていった。
翌日、ペネロペ、テレマコス、テレゴノスの3人は、地下の祭壇に集められる。
魔女キルケ:「これから、オデュッセウスの救出を試みる」
テレゴノス:「可能なのですか?」
魔女キルケ:「わからん・・・かつて古文書で読んだ方法だ」
そういうと、キルケはオデュッセウスの遺体を時の泉に浸けた。
魔女キルケ:「オデュッセウスを救いたいと思うものは泉の中へ」
テレマコスが、泉の中へ入っていく。
魔女キルケ:「言い忘れたが、この世界に戻ってこれるとは限らんぞ」 戸惑うテレマコス
ペネロペ:「では、私が・・・」
テレマコス:「やはり私も」
ペネロペ:「あなたは残って、イタケを守る役目があるわ」
テレマコスを見つめペネロペは言った。
テレゴノス:「では、俺が代わりに行こう、俺には殺してしまった責任もあるし守るものもない」
魔女キルケ:「いいのか?オデュッセウスはもう高齢だ。助かったとしても先はあまり長くない」
ペネロペ:「私もそれほど先はないわ。それに今度は私も冒険したいの」
魔女キルケ:「これで決まったな」
時の泉へは、ペネロペとテレゴノスが入ることとなり、テレマコスは残った。
ペネロペとテレゴノスはオデュッセウスの遺体と共に、時の泉へ入っていった。
テレマコス:「どのくらいで、戻ってくるのですか?」
魔女キルケ:「・・・わからん」
それから数日が過ぎた。
時の泉を見つめるテレマコス
魔女キルケ:「お前も行きたいのか?」
テレマコス:「いえ、自分でもよくわかりません。ただこの先が知りたくて」
魔女キルケ:「これは時の泉、入った者は必要な時代へ誘われ新しい人生を歩むそうだ。」
テレマコス:「それは死んだ人も?」
魔女キルケ:「必要であれば転生し蘇る」
テレマコスはしばらく魔女キルケと暮らした後、故国イタケへ帰っていった。
ある時代、新しい生命が誕生した。
それが、オデュッセウスであるかは、まだわからない。




