3、龍の奉仕
時を少し遡る。
────龍、それは誇り高き天空の支配者。
この世界では、龍ですら討伐対象となる。
「くっ、我もここまでか...、。」
大砲20以上、勇者PTの攻撃、槍などの飛び道具、魔法団の連続魔法...
受けた攻撃多数。
光を纏う綺麗な龍鱗も今や傷だらけ。
人間に敗北。
死の時だと覚悟した。
【諦めんのかよ。龍。】
心に響いた声。
と同時にかかる最上位の回復魔法。
自身の鱗が輝きを取り戻す。
次にかかってきたのはステータス強化魔法。
力が湧いてくるのがわかる。
【お主は?】
【気にするな。行け、龍!】
国の防御壁の外に、ひとりの小さな人間を見つけた。
心から感謝した。
神からの命令でこの国は世界に破滅をもたらすと言われ滅ぼすように言われた。
そこで反撃を受け、死にかけた。
そこを助けられた。
【感謝する。】
そのまま、我は国を滅ぼした。
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破壊した国を放置し、人間を探す。
さっきと変わらず同じ場所にいた。
『助かった。お主は何者じゃ。その幼体であれだけの力はありえん。』
「オレ?オレはソウ。イリミヤ・ソウだよ。あの力は神の加護ってやつ?見た目はそのハンデだって。」
ソウは笑って話す。
見るからに幼女。どこから見ても幼女。
『感謝の印に、ひとつ願いを叶えてやろう。』
「白龍、オレと一緒に来ないか?」
白龍は目を驚いた。
「オレはこの世界をわかってないし、1人だと寂しい。だから、一緒に来てよ。」
なんの迷いもなしに、我を共に生きる仲間とすることを望むとは...。
驚くと同時に嬉しくなった。
自分を求めてくれることに。
『よかろう。お主が死ぬまでそばに居てやろう。』
「にひひ、やったね。でもその姿はまずいから人型になれる?」
「簡単さ。ソウ様、これでどうですか?」
今度はソウ様が驚いた。
しかしすぐに目を細めて笑った。
「すっごく似合ってる。抱っこして?」
「はい。」
ぎゅっと首に手を回してきた。
所謂お姫様抱っこ。
「いいねこれ。最高。」
「じゃあこれを移動手段と致しましょう。」
コクリとソウ様は頷く。
「神になんと言われてきたのですか?」
気になったことを聞いてみた。
「定番の手違いでオレは死んだらしい。死んだ時に丁度頼み事をした白龍が危険状態だった。それを助けるためにこの世界に降りてほしいって。」
頼まれたから来た、と。
「お心のお優しい方なんですね。」
「ただの気まぐれさ。」
そしてそのまま夕日の方向へ歩いて行った。
△▼△▼△▼△▼
「ほんとにここなの?」
「ソウ様から頂いた地図によりますと、ここで間違いないかと。」
鬱蒼としたいかにも幽霊が出そうな森を進むこと1時間程度。
進むと言ってもハクアの足で。
あ、ハクアって言うのは白龍の名前ね。
木と木の間を飛んで1時間程度の場所。
さっき滅んだ国から普通なら6時間は余裕でかかるはず。
まぁその鬱蒼とした森の中で見つけた屋敷は予想通りと言いますか、...ツルが巻き付き、草はぼうぼう、それはひどい状態。
「本当にここに住むの?」
「そういうことになりますね。」
一瞬の間を置いて
「掃除するか。」
と、降りようとしたら止められた。
「魔法で浄化というのがありますので、それで一瞬かと。」
「あ、そうなの?」
浄化でこの屋敷綺麗になるのかよ…。
と思っていたらハクアがかけてくれた。
「うわ、すごい綺麗。」
「これくらい執事として当然です。」
ん?今聴き逃しては行けない言葉を聞いた。
「執事?」
「はい。」
「ハクアが?」
「はい。」
「誰の?」
「ソウ様の。」
「まぁ素敵。って急すぎじゃない?」
「先程決めました。それくらいの知識でしたら身に付いておりますのでご心配なく。」
ハクアには心底驚かされる。
屋敷の中は綺麗だった。
元々どこかの伯爵位の家だったらしく、数十年経っているとは思えない。
浄化のおかげもあるだろうけど。
「ここが、オレの家か。」
ハクアがオレを降ろした。
何事かと思えば
「おかえりなさいませ、ソウ様。」
ハクアが胸に手を当て、浅くお辞儀をしている。
「ふふっ、ただいまハクア!」
オレはそこへ抱きつき、そのまま抱っこされて自室へと向かった。
「お夕食はどうなさいますか?」
「今日はたくさんあって疲れたからいいや。」
森しか見えない窓を眺めながら答えた。
「かしこまりました。明日の朝食は楽しみにしていてくださいませ。」
「うん。あ、これ神から預かってきたお金。謝罪も込めて上乗せしてあるってさ。」
割と重たい袋をハクアに渡す。
「金貨30枚、3000ニールですね。」
「それってどれ位?」
「そうですね、一般の人が生涯に稼ぐ額が平均1000ニール。多くて2000ニールってとこでしょうか。
職業にもよりますが、商人などは1500ニールくらいです。」
てことは結構な大金じゃない?
「ですので遊んで暮らせますが、どうなさいますか?」
異世界に来た。魔法も得た。龍も仲間にした。
やることは決まっている。
「冒険者になれない?」
「なれます。」
無双しよう。
「龍と魔物使い兼 魔術師。いいコンビだと思わない?」
「思いますとも。」
ハクアが微笑みながら答えた。
「あ、でも、龍ってことは秘密ね?奥の手ってことで。」
「かしこまりました。」
そしてオレに眠気が襲ってきた。
「おやすみ、ハクア。」
「おやすみなさい。ソウ様。」
この時から二人の...いや、1人と1匹の無双が始まった。