1、地獄と化した戦場で
ある戦場で見た者は言う。
────あれは悪魔のようだ、と。
ある森で出会った者言う。
────あれは救世主のようだ、と。
執事らしき者に抱えられ戦う魔法に特化した幼い少女。
執事の腕から幼女が降りたらそこはもう地獄のようになる。
その幼女の名は、入宮想。
△▼△▼△▼△▼
「ソウ様、お怪我はありませんか?」
銀色短髪、そして紅い目の男───執事───にソウが尋ねられた。
「オレが怪我しても気にするな。どうにでもなる。」
ミルクティー色の肩までの髪を靡かせながら爆音の鳴り響く戦場を抱えられて移動する。
水色の瞳が執事を写す。
「オレを置いて行け、ハクア。」
「しかしっ、あれは...」
ハクアが慌てる。まぁ無理もない。
「ハクア。」
少し威圧を含めてみた。
「っ、...仰せのままに。我が主よ。」
ハクアがオレをなるべく安全な場所へ降ろして、再び戦場へかけて行った。
戦場で主を置いていくなんて...とかは思わない。
ハクアもオレの強さをわかっているはずなのにあの過保護ぶり。
まったく、いい執事に会ったもんだ。
オレのMPは馬鹿げている。魔法特化もいいとこ。
だって始めっから万を超えてんだ。
一般人、ましてやオレと歳が同じ──6歳──なら百とかが平均。成人し、そこらの魔法使いなら多くて二千を超えるかどうか。
神の悪戯なのか加護なのか知らないけど、馬鹿げている。
おかげで魔法以外はまっぴらだ。
【ハクア、移動しろ。】
【かしこまりました。】
主従関係とあって念話は必然。
オレの背後にハクアの気配を感じた。
相変わらず無音で来るし気配も薄いなぁ。
「殲滅だ。大獄炎!!」
幼女が手の平をかざした先にあるのは、球状にまとめられた赤と黒の炎。
手を振ったと同時に地面へと落ちていった。それも凄まじい速さで。そして大爆発を起こした。
何人死んだのかも何人生きてるのかもわからない。
ただの地獄だった戦場が炎獄となっていた。
幼女は嗤う。
「任務完了でいいんだよね?」
「はい、これでいいかと思われます。」
自然な流れで執事に抱えられる。
「ハクア、帰ろう。疲れた。」
「はい。ですが、まずギルドへ寄りましょう。報告をしてからの方が後々楽です。」
「それもそうだね。」
そしてまた自然な流れで転移魔法を使う。
慣れたものだなこの世界にも。
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「ギルマス!!ただいまだよー!」
にっこにこの天使の微笑みでギルマスもとい、ギルドマスターへ報告する。
「おぉ、おかえり!!じゃのうて、いきなり転移でこの部屋に入ってくるなって何度言えば分かってくれるんじゃ!!たまたま人がいなかったから良かったものの!!」
と、怒りながらも
「怪我はしておらんか?」
心配してくれるギルマスはいい人だ。
部屋の中央へ進み、ソファーへ座る。
このソファーの座り心地は快適以外ない。
「怪我をしてたらここへなど連れてきません。」
ハクアはオレ以外にはあまり表情を変えない。
まぁいいけど。
「それに怪我しても治せるしー!」
ギルマスは深いため息をついて頭を抱えている。
「PTを組む気は無いのか?」
真剣な眼差しで見つめてくる。
ソファーから立ち、ハクアへと手を伸ばす。
ハクアは抱えてくれる。移動の合図だ。
「何度言えばわかる、はこっちのセリフでもあるね。ハクア以外とPTを組む気はない。」
そう言ってオレは転移した。
「孤高の天才 魔術師、またの名を 悪魔の異端児...か。」
あの幼さで異常なSSランクという最高ランク。
我が国が誇る、英雄的存在。
それでも彼女は人間。
「死になさるなよ、ソウ殿...。」
聞こえてなどいない、ギルマスの呟き。
ハクアと名乗る執事が守ってくれることを願う。
続きます続きます!幼女ちゃんシリーズ!
無双させますよー!
次回、ソウのお家紹介!?
ある人物との出会い!?
さて、なんでしょう?笑
次回の次回は作者が、時間巻き戻しの魔法と言うか追想魔法を皆様にかけちゃいます!