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欠落王女と保護者達  作者: 夢月なつか
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欠落王女のためのダンジョン探索・後

わりとざっくりかもです。





「待ちくたびれただと?」


「頑張ってる集団がいるなーと思って、待っていたのだよ。なんか面白そうだしな」


「面白そうってなんだ」


 珍しく緊張気味のリーダーに、仲間達もただならぬ様子を感じ取った。


「よかったら、最下層まで共に行かないか? 私達二人だけだと面白みがないしな」


 こくりと首を傾げた少女は言う。


「お前らは何だ? かなりの実力をもっているだろ」


 リーダーはそれには答えずに問う。

 少女は可笑しそうに笑いながら言った。


「冒険者だ。この間Aランクになったばかりだが・・・なんだ、魔物とでも思ったのか?」


「自分より強いからといって警戒しなくてもいいでしょうに。と、言えないくらい怪しいのは分かってます」


 少女に続いて、今まで黙っていた青年が、丁寧ながらに淡々と言った。

 リーダーはしばし考えていたが


「わかった。俺達はあるものがどうしても欲しくてな」


「あるもの?」


「ブラッドダイアっつー宝石だ。実際は魔石の一種だが、俺達の仲間がそのうち結婚するから、その結婚祝いなんだよ」


「ブラッドダイアというと、希少価値の高い幻の宝石と言われてましたね。それをわざわざ未到達ダンジョンの最下層まで危険をおかしてまで、ですか。その仲間というのはそれだけのことをする価値があるのですか」


 青年の疑問に、リーダーはカッと目を見開き、その仲間・・・リリーについて語りまくった。

 他のメンバーが同意をしながら、ときおり付け足してくる。

 親バカ集団と成り果てた彼等に、青年は呆れたようにため息をつき、少女はどこか面白そうに聞いていた。


「そうしてサーガナガラに嫁ぐことになったんだ。どうだ!」


「ふむ、なかなか面白い話だな。よし、ならブラッドダイアとやらの発掘も手伝おう」


「だろうと思いました。よかったですね。すぐ終わりますよ」


「「?」」


 青年の言葉に疑問符が浮かぶ。

 すぐ終わるとはどういうことか。


「ここのダンジョンはな、80階層が最終ボス部屋で81階層が転送装置の部屋で、さらにその奥に、ボス並みの魔物がはこびる階層が続き、100階層にダンジョンを形成するコアがある」


「嬢ちゃん、なんでわかるんだ?」


「調べたからだ。地中探査できるからな。ついでにブラッドダイアの場所も調べてみるか」


 そう言うとすぐに、少女は手を地面に着き目を閉じる。


「リーダー、地中探査って、そんな深くまでできましたっけ」


「いや、無理だ。調べられる広さと深さは魔力に比例するが、このダンジョンの広さと深さを正確に把握するのは、とんでもなく魔力を使う。魔力に長けたエルフですら無理じゃないか?」


「見た目可愛い女の子なんですけどねー、でも人間ですよね。フェアリーとかドラゴンが化けてるとか!」


「あほう、冒険者プレートは誤魔化せないだろ」


「というか、あいつらが人間の振りをするとか有り得ないだろ」


 などなど、彼らは、集中しているだろう少女を気遣ったのか、小声で言っていた。

 青年がくだらない。と呟いていたが、それを聞き取れた者はいない。


「くだらない話でも話したくなるのが人間だろう。ブラッドダイアだが、80階層のボス部屋にあるようだ」


 突然、言葉を放った少女に驚く現冒険者グループの暗殺集団。

 

「それは確かなんだな?」


「嘘はつかんよ。必要ないしな」


「よし、わかった。そういやお前ら名前は?」


「私はマリア、こっちがサウザー。早くしたいなら寄り道せず最短の道を案内できるが?」


 リーダーは、マリアと名乗ったAランクらしい冒険者の少女の言葉にのることにした。

 さっさと終わらせて、じっくりリリーの様子を見守りたかったのだ。

 


 そして、65階層目で転送装置を見つけ、グループを入れ替えるが、リーダーはそのまま残ることにした。

 その後は、70階層に転送装置があり、その先は81階層なのだろう。

 なぜ、そこだけ一つの階層をまるまるつかっているのかは不明だが、彼等はとりあえずブラッドダイア目指して進む。

 手強い魔物は多かったが、あっさりとマリアとサウザーが片付け、圧倒的な実力をみせていた。

 

「俺達の出番ないですね」


「まぁ、正直俺達だとかなりきついがな・・・」


 そうしてたどりついた80階層。

 目の前にはボス部屋があり、そこを入るとボス戦に突入する。

 緊張が高まる中・・・


「さっさと行くぞ」


 あつさりとマリアとサウザーが行ってしまった。

 慌てて後を追い掛けた彼等が見たものは・・・


「まじか、ベヒーモスとかSオーバーの魔物じゃないか」


 そこにいたのは、漆黒の巨体。

 毒々しい赤い目が輝き、底から響く唸り声、溢れ出す瘴気、伝説級の魔物であり、数百年前に出現し、甚大な被害を出したと言われている。

 リーダーも見たことはないが、伝説級の魔物の話は有名なため、冒険者なら誰もが知っているといってもいい。

 

「おい、これはさすがに・・・」


 人間が討伐できたという話は聞かない。

 数百年前は、ドラゴン達が倒したと言われている。


「おー、なかなかいい魔物だな」


 マリアが見上げて言った直後にリーダー達に結界を張る。

 すぐに溢れ出た瘴気が覆った。


「この瘴気に触れただけで、普通は腐りますね」


 そう言いつつも、サウザーに目立った被害は見られず異常もない。

 瘴気が部屋内に漂っているにも関わらず。


「お前達、死にたくなければその結界から出るな」


 そして、マリアも同じ。

 リーダー達は、呆気にとられていた。

 瘴気とは、穢れた魔力のことで、一部の魔物が発生させることができる。

 結界により防げるが、その術をもたないものは、徐々に中からも外からも腐っていき死に絶える。

 特に、清浄を好むエルフやフェアリーは、瘴気にとても弱い。

 その分彼等は魔力に長けるので、防げるが、少しでも瘴気にあたると即死してもおかしくないほどだ。

 瘴気にたえられるのは、魔物かドラゴンくらいなのだが・・・

 目の前には人間のはずの二人が、瘴気を浴びても平然としていた。


「ふむ、こいつを殺すのは惜しいな。持ち帰るか」


「あー、あそこにですか?」


「うむ。あそこならいいだろう。喜ぶぞ」


 という会話は、彼等には聞こえていなかった。

 そして、彼等が見たのは、眩い輝き。

 それが収まったあとには、なにも無かった。

 ベヒーモスも、瘴気も。


「あんたら、何をしたんだ?」


「転移させただけだ。被害の出ない場所にな」


 転移魔法は存在するが、使い手は数人ほどで、あれだけ大きなものを転移させる事が出来る者はいない。

 確認されていないだけで、転移魔法や収納魔法の使い手は他にもいるかもしれないが。


「あー、今までのことは見なかったことにするよ」


「賢い選択だ。ブラッドダイアはあそこにある。ほら、赤い石があるだろう?」


 マリアの指差す方向には、赤い血のような輝きを持つ石があった。


「あれか! おまえら、とってこい!」


「また、難儀な場所に・・・」


「姫のためだ、行くぞ!」


「足場になるようなもんを地上からとってきたほうがはやくねーか?」


「脚立もってこい脚立!」


 広いボス部屋の天井隅にあるブラッドダイアを採ろうと、彼等は走り回る。


「よし、俺も行くか。お前らはどうするんだ?」


「あぁ、下層に行く」


「・・・そうか、まぁ嬢ちゃん達なら大丈夫だろうな。気をつけろよ。あと、行けるようならリリーの結婚式を見に来い。サーガナラの王都でやるからな!」


 マリアとサウザーの二人に式の事を伝えて、リーダーは地上へ戻った。

 

 地上へ戻ったリーダーは、仲間達に指示を出し、必要なものを持ってこさせて、ブラッドダイアを採取する。

 めでたい祝いに、ブラッドと名のつくものはどうかと思うものは、誰もいない。

 彼等はリリーも含め、一流の暗殺集団だからだ。



***********



「で、その二人の冒険者の力を借りて、なんとか最深部辺りまでいってな、ブラッドダイアを採取できたんだよ」


 二人の冒険者のおかしい部分は省き、簡潔にリリーに伝えた。


「その二人は、見返りは求めなかったんですか?」


「あぁ、まぁ、あいつらかなり強かったしそのうち耳にはいるかもな。マリアとサウザーっていうAランク冒険者だ」


「覚えておきます」


「よし、それじゃそろそろ時間だな。しかし、王子も護衛も、よぬリリーが抜け出してる事に気づかないな」


「そんなへましません」


「それもそうか、じゃあまたな」


「はい」


 二人は音も無く消えた。

 



 リリーは、寝室に戻ると熟睡しているリュークの隣に戻る。

 そして、何事も無かったかのように眠りについた。





 

おかしな冒険者二人は、いずれ同じ世界を舞台にした違う話で出すかもしれません。

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