蜂起 -rebellion- 幕間
『鮮やかな引き際だな』
立ち並ぶMCの中で、一際壮麗な、蒼玉の輝きを放つMCのコックピットに座る男がつぶやいた。
革命団と名乗る、レジスタンスの宣戦布告より、四時間。貴族院が差し向けたMC部隊が、襲撃を受けた工業都市に到着していた。
しかし、部隊が到着したころには、革命団側の部隊はすでに撤退しており、それどころか、追跡しようとした、輸送ヘリさえも撒いて、手がかり一つ残さずに消失した。まったく、鮮やかと言う他ない。
『隊長、追いますか?』
『やめておけ。手がかりもないのだ』
『ですが……』
言い淀む騎士達の気持ちも分かる。何せ、駐留していた部隊を含め、総勢12機の〈エクエス〉を投入していながら、生還したのは2名のみ。散っていた騎士の無念に報いたい気持ちは、当然、男にもあった。
しかし、それを成したのは型落ちした〈ミセリコルデ〉の改修機。それもたった4機だ。姿をくらました彼らを追い、撃破するのは相応の困難が付き纏うことは想像に難くない。
その上、撃墜された〈エクエス〉の内、二機は跡形もなく消えていた。おそらく、彼らの手に堕ちたのだろう。
革命団の戦力はさらに厄介になる。貴族院が思っているほど、戦いはたやすくは終わらない、男はそう考えていた。
それこそ、このタイミングでの不用意な追撃は、さらに戦力を削ることになりかねない。
『今は誇り高く散った彼らを弔うのが先だ。それに……』
『隊長?』
『あれだけ派手に動いてみせたのだ。次は遠くないだろう』
男は莞爾として笑い、誰に言うとでもなく、最後にこう付け加えた。
『その時は、狩らせてもらうぞ。革命団』
その日、日が沈み、ゆっくりと暗闇の帳が落ちていく中で、革命の夜明けが始まった。