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noblesse;oblige  作者: 夏桜羅(原案・設定協力)、雪羅(原作・執筆担当)
第2章 接触 -Fate-
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epilogue-02

 帝都の一画、貴族のみが立ち入りを許される貴族居住区の最奥。楽園エデンの長たる帝の住む皇居のすぐ側に、建てられた一際豪奢な屋敷。そこは、三公が筆頭、セレーネ公爵家の別邸であった。

 広い敷地の隅にある離れに、この屋敷の主であるルイ・オーギュスト・ル・ヘリオス・ド・デューク・フォン・セレーネはいた。黄金で嫌味のない程度に装飾された椅子に座り、男は何かを待っていた。

 その時、ドアが開き、一人の青年が入ってくる。青年は、さらさらとしたブロンドの髪に、翠玉(エメラルド)に輝く美しい瞳を持ち、整った顔立ちをした美丈夫だった。

 彼こそが、三公が一角を占めるエスメラルド公爵家の若き当主である。


「エスメラルド公。結果は出たようだ」

「ええ、たった今報告が上がったところです」


 セレーネ公が不遜な態度で言うと、エスメラルド公は苦笑を浮かべて答えた。

 本来ならば、三公筆頭であるセレーネ公の方が格は上なのだが、セレーネ公はそもそもそのようなことにはさして頓着しない。その上、今の彼らは、対等な関係にあった。


「ほう……して、どうなった?」

「コルベール男爵家の炎蛇騎士団は遠征に出した一個大隊が全滅。救援を出したロベスピエール伯爵家の青薔薇騎士団も2個中隊が壊滅。双方ともに生存者は少数の模様です」


 エスメラルド公が口にしたのは、つい数時間前まで行われていた革命団(ネフ・ヴィジオン)の炎蛇騎士団襲撃作戦についてだった。それも、経過時間の割には、驚くほど詳細な内容だ。


「それだけか?」

「いえ、それと、炎蛇騎士団団長、ダニエル・クレセント・ド・コルベール士爵の戦死が確認されました」

「まことか?」

「ええ。私の『影』がしかとその目で見たとのことです」

「くっくっくっ……ふはははは! シェリンドンめ……粋な計らいをしよって」

「シェリンドン殿と言いますと?」

「あの者の事だ、別の目的あってのことではあろうが……くっくっ……あの男の求心力は厄介だったのだ。ちょうどいい」


 そう、コルベール男爵家でむしろ厄介だったのは、コルベール男爵本人ではなかった。本人はフロイス伯といった、欲の皮の突っ張った高位貴族達に同調するだけの道化だ。

 しかし、その財力によって作られた騎士団の戦力と、その団長であるダニエルの持つカリスマ性は、非常に厄介なものであった。ここで排除できたのはまさしく僥倖と言える。


「コルベール男爵家は、戦力の大半を失い、要である団長まで失った。想定以上の結果だ」


 エスメラルド公は納得したようにうなずきながら言う。そして、その翠玉(エメラルド)の瞳に剣呑な光を宿しながらも、言葉を続けた。


「いいでしょう。セレーネ公のお戯れに私も一枚噛ませてもらいましょう」

「ふむ……いいだろう。エスメラルド公。我の言うた通りであろう? あの男の戯曲に付き合うてみる価値はあると」

「ええ、それは事実だと認めましょう。だが、私までもが貴方の思い通りになるとは思わないことだ」

「ほう……」

「…………」


 翠玉(エメラルド)紫水晶(アメシスト)の瞳が妖しく揺らめく炎を宿してぶつかり、火花を散らす。覇気をぶつけ合った二人は、どちらともなく、その威圧的な気配を消した。


「我を敵に回すか? エスメラルド公」

「場合によっては、その覚悟も必要だと存じております」

「くっくっくっ……構わん。だが、しばしの間は、我に協力してもらおう」

「ええ、もちろん」

「それで、彼奴らの拠点は見つかったのか?」


 彼奴ら、セレーネ公の言うそれは、まさしく、現状問題となっている反動勢力、革命団(ネフ・ヴィジオン)のことだ。

 エスメラルド公は、特にそういったことを調べていると言った記憶はない。故に、突然の質問には動じなかったものの、こう確信を持って聞かれるとは驚かざるを得ない。


「何を驚いておる? 『影』を使ったのであろう? 我の知る貴君は、その程度のことに思い至らぬ無能ではあるまい? 調べているのだろう?」

「……否定はしません」


 見透かされている。さすがは、あのシェリンドン・ローゼンクロイツが、仕えるべき主と認める男だと言うべきか。

 しかし、エスメラルド公はあえてその感嘆を見せるような愚かはしなかった。

 無論、それさえもセレーネ公は見抜いている。やはり、まだ青い。セレーネ公は内心でそう評した。


「ただ、掴めたのは大まかな方角程度ですが」

「ほう……エスメラルドの影は優秀と聞いていたのだがな」


 エスメラルド公は一瞬だけ表情を歪めたが、何事もなかったように、言葉を続けた。

 セレーネ公は一瞬とはいえ、見せた隙を見逃すほど鈍感ではない。そして、同時に、利用するタイミングを見誤るような愚かも持ち合わせていなかった。


「分散して撤退する全ての部隊が、フロイス伯爵領を通っていたもので。あそこの円卓の騎士に気付かれると厄介でしょうから。今回は断念した形になります」

「ふむ……フロイス……」

「彼らの協力者と糾弾するには弱いでしょう。ただ、セレーネ公が襲撃を受けていることといい、存外近くにあるのやも知れません」

「よほど、我を猫にしたいらしいな、公は」

「貴方の責任は重いと言ったでしょう?」

「くっくっくっ……まったく、威勢のいいことであるな」

「…………」

「まあよい。今はその時ではないのだからな。そう、粛清の時なのだ」


 セレーネ公は歪んだ笑みを浮かべて、そう言った。

 そう、これは始まりに過ぎなかったのだ。

 楽園エデンを揺るがす動乱の始まりに──

9/10(木)

誤字修正。追記。

騎士団の名称変更。

黒百合→青薔薇


第2章完結です。

いかがだったでしょうか?

感想あれば是非。できるだけ返信します。

誤字脱字等の報告だけでも構いません。


第3章、第4章は続きものの予定です。

第3章は8月半ばからの投稿を予定しています。

いろいろ忙しく、執筆作業も第3章の途中までしか進んでいないので、遅れるかもしれません。


ところで、サブタイトルってあった方がいいんでしょうか?

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