色付きリップは 希望のピンク
ヒートショック外来が主催する安全入浴講座。
今日も、講座は始まる前からにぎやかだ。
そこへ、教室の入り口に二人組が姿を見せた。
羽織袴の近藤勇と、なんとなく恥ずかしそうな沖田総司である。
近藤はすっと前に出て、講師へ深く頭を下げた。
「先生、本日もご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
うちの総司は体調を崩しやすいものでして……今日もお手数をおかけしますが、どうかよろしくお願い申し上げます」
「はいはい、毎回丁寧にありがとうございます」
講師はにっこり微笑み、そのままスッと講義に入っていく。
この講座は、安全入浴だけでなく、蒸し風呂や各地の温泉の特色など、
“お風呂”を幅広く学べる楽しい場だ。
「では本日は、“のぼせにくい入浴の手順”を説明しますね」
その横で、近藤とご長寿チームはすでに盛り上がっていた。
「おや、御隠居様も風呂場で大変な目に? じつは私の弟子も、のぼせて失神しまして」
「いやいや、ヒートショックは恐ろしくてな。わしのつれあいも脱衣所で急に苦しんで……肝がひえましたわい」
「わかりますな。実は総司も便所で倒れまして」
「おやおや、若くてもそんなことが」
「いやー、大変でした。倒れ方が悪くて戸が開かず、助けるために戸を破りましてな」
「おやおや……それはご心配なことでしたなあ」
(うわああ……! 先生、それ、子供の頃、大昔の話じゃない? いつまでも 語られる黒歴史…)
総司はかおを真っ赤にしてうつむく。 時効というのはないのだろうか。
すると隣の御隠居さんが、そっと覗き込んだ。
「にいさん、なんだか熱があるんじゃないかね? 無理したらあかんよ? 気持ち悪くないかい?」
(ああーー しまった、始まったーー)
「いやいやいや、これ熱じゃないですーー!」
そこへ追い打ちのように、近藤がまた“盛る”。
盛るし、さらに盛る。
「もう、このパターンやめて……!」
医師でもある講師は、にっこりとしたまま淡々とまとめに入った。
「はいはい、とりあえず点滴でもしときますね。倒れられるともっと困りますから」
近藤は深々と頭をさげる。
点滴がおわると、講師が総司へウインクした。
「きみも大変だねえ。ほら、これ。」
小箱を渡され、あけると――色付きリップ。
「うちの婦長さんがね、これつけると 近藤先生も安心するかもってくれたんだよ。やくにたつとおもうよ。」
(……深い)
ピンクは 健康的だと 思いますが
勇気が 必要かもと 少し 心配です。




