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近藤勇 膨らむ腹の謎

新選組の健康管理は、どうやら局長自身が最大の難関らしい


ある日の新選組屯所。

稽古場では、斎藤一と近藤勇が竹刀を交えていた。


天然理心流四代目宗匠──剣の達人、近藤勇。

だが今日の動きは妙にどっしりしている。


「近藤、動きが鈍い。」

土方が眉をひそめる。


「沖田の鋭い剣に対して、近藤のは重厚と言われるが……今日は“重い”じゃなくて“遅い”だな」


横から永倉がぼそり。

「いや、近藤さん……かなり太ったよなあ?」


稽古を終え、近藤は椅子に“どでっ”と座り込む。

「いや〜斎藤、腕を上げたなあ! もうかなわんよ!」


斎藤は無言で目を細めた。

(いや、俺は変わっていない。変わったのは近藤さんだ……)


土方はいつもの“近藤勇 酒量管理帳”を広げる。

酒、減らしている。

食事、適量。

運動、十分。


「おかしい……記録に問題はない……」


なのに、目の前の局長はどう見ても“たぬき腹”である。


「近藤! 酒も控え、運動もしてるのに、なんで太るんだ!」


「いや、体調は問題ないし、運動もしておる。夜もよく眠れているぞ」


そこへ、にこにこと沖田総司が現れる。


「あ、近藤先生とぼく ヒートショック外来の“安全入浴講座”に通ってるんですよ」


「講座……?」


「ご長寿の方々向けの講座で、温かいお茶とお菓子が出るんです。」


土方は首をかしげる。「どうせ、饅頭ひとつくらいだろう?」


「えっと…それが、それだけじゃなくて」

沖田は、少し言いにくそうに視線をそらす


「じつは……講座の時、ぼく、貧血起こしてしまって……

それで皆さんが“栄養つけなさい”って、いろいろくださるようになって」


「で? なんで近藤が太る?」


沖田は小声で続ける。


「ぼく、食べすぎると気持ち悪くなっちゃうので……

残りを先生が……」


土方「…………」


近藤は小さくつぶやく。

「粗末にするのは悪いからな……」


講座で出されるお茶請け。

貧血の総司への気遣いから、増え続ける“差し入れ”。


さらに総司が追撃した。

「講座の皆さんご長寿の方ばかりだから、近藤先生 荷物もってやったり、それに、ちょっとした頼まれごとも気持ちよくして差し上げるんです。すると、“ありがとう”ってまた別のお菓子を……」


こうして近藤勇は――

ご長寿の皆さんとの触れ合いと、己の律義さと優しさによって

少しずつ、ふくふくと膨らんでいったのだった。


それはただの体重増加ではなく、

“優しさの証”なのだろう。


だが問題は、剣士としての動きである。


土方歳三は天を仰ぎ、大きく息を吐いた。


「……で、ダイエットだが。

 もしかして、これも、オレが、管理?……」


「ふふ、それが無難ですよね」

「ウム、頼む」


即答だった。


土方は、もう何も言えなかった。


目の前では、

たぬき腹の近藤勇が、まるで他人事のように

にこにこと微笑んでいる。


(――この人の健康管理が、

 いちばん俺の健康に悪い……)


こうして副長の苦労は、

またひとつ、静かに積み上がったのであった。


――つづく


副長の胃が、また一段と重くなった日であった。

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