言えない 絶対 沖田総司の秘密
──これは、
絶対に本人が言えなかった“やらかし”の記録である。
次は 誰が どんなことをやらかしてくれるかなあ
どうぞお楽しみに
幕府大学洛中病院ヒートショック外来が主催する安全入浴講座は、
今日もご長寿さんたちで大にぎわいだった。
そんな中に、どう見ても場違いな二人──
新選組局長・近藤勇と、その弟子・沖田総司が座っていた。
昨夜の捕縛任務で総司は一睡もしていない。朝飯も抜き。
本心では「今日は休みたい」と願ったが、近藤が参加する以上、断れるはずもない。
だが、暖かい講義室、優しい講師の声。
意識がふわりと沈む。
――あ、やば……。
次の瞬間、近藤の大声が響いた。
「総司!!」
肩を揺さぶられ、周りの視線が一斉に刺さる。
「あらまぁ、若いにいさん、大変だわ!」
「ほら、頭下げて足上げて! あたしゃ昔、看護師してたんだから!」
瞬く間に、ご長寿たちが総司のまわりを取り囲んだ。
温かい手が肩に触れ、お水や飴が差し出される。
……言えない。絶対言えない。
“ただ眠かっただけです”なんて、もう口が裂けても。
講師の医師が脈を診て、まぶたを上げ──
「ふむ、ちょっと疲れが溜まってるねぇ。貧血もある」
……助かった。居眠りとは言われなかった。
そこで近藤が、深刻な顔で口を開いた。
「先生、この子は……先日も風呂で気を失いまして。
もともと身体が弱いところがあり、私がつき添っております」
……いや、ちょっと待って先生、それ盛りすぎです。
「この子は昔から倒れやすくて、食も細く……!」
医師は「じゃあ念のため点滴を」と判断。
ご長寿さんたちはざわめいた。
気の毒にねえ……
若いのに……
あんなに綺麗な顔なのに病弱だなんて……
完全に“病弱少年”として扱われてしまった。
⸻
◆講座終了後
点滴を終えた総司の前には、山のような差し入れが積まれていた。
おにぎり、煮物、黒糖、生姜湯、栄養ドリンク……
「ほら坊や、これも持って帰りなさい!」
「遠慮するんじゃないよ!」
近藤はその一人一人に深々と頭を下げる。
「皆さまのご厚情、弟子に代わり心より御礼申し上げます」
その丁寧さに、周囲はさらに感動した。
「まあ……なんて立派な師匠さんだろうねえ」
「こんな優しい方に見守られて……」
……だから話が大きくなるんだよ、先生。
⸻
◇屯所にて
机の上に積まれた差し入れの山を前に、総司は小声で抗議した。
「先生……あの……僕、本当に今日は寝不足だっただけで……健康なんです。
貧血はありますけど、でも……病弱とか、付き添いが必要とか……訂正してもらえませんか」
近藤は腕を組み、言葉を選んだ。
「……総司。お前が“平気です、大丈夫です”と笑うのは知っている。
だがな、昨日の捕物のあと一睡もしておらんのだろう? 朝飯も抜きで」
「そ、それは……たまたまです!」
「人は、強いところばかりではいられん。
お前は普段、誰より働いて、誰より周りに気を配っている。
ならば──今日くらい、誰かに心配されてもいいだろう」
総司は言葉を失う。
近藤は続けた。
「皆が温かく声をかけてくださったのは、お前が日頃、誰かのために動いている証だ。
……そして、私はお前が倒れるのだけは、本当に嫌なんだ」
その声には、静かな本気が宿っていた。
しばし沈黙。
近藤がふっと笑う。
「それに、こんなにうまそうな団子、断る手はないだろう?」
総司は観念したように、少し笑って団子を手に取る。
「……じゃあ、いただきます」
その味は、どこか胸にしみる甘さだった。
ー続くー
うっかり 病弱イメージになってしまった沖田総司です。




