沖田総司、色の薄さについて語る
縁側で夕風に吹かれながら、沖田総司はぽつりとつぶやいた。
「いやさー……
僕の悲劇って、結局“色が薄い”に尽きるんだよねぇ……」
隣で茶を飲んでいた長倉が、思わずむせた。
「い、いきなりどうした!」
原田は腹を抱えて笑う。
「また始まったよ、総司の“透明感呪い論”!」
しかし斎藤だけは妙に納得してうなずいた。
「……うむ、それはわかる。
おまえは面の皮は厚く、顔の色は薄すぎる」
沖田は真剣そのものの表情で続ける。
「僕さ……
道に立ってたら灯籠と同化して、誰かにぶつかられたことあるんだよねぇ」
原田「どんな体質だよ!!」
長倉「幽霊じゃないんだから!」
総司はさらにため息をつく。
「でね、僕が思うに――
とにかく**“唇の色”さえあれば、人生もっと生きやすい**と思うんだよ」
三人「(そこ!?)」
沖田は懐からリップを取り出してみせる。
「だってさ、僕の唇って放っとくと“無”なんだよ。“存在感ゼロ”。
でもこれを塗るとね……ほら」
ぬり。
うっすら色づく唇。
血色が戻り、たしかに健康的――なのだが。
原田「……うん……健康的だ……」
長倉「いや……健康的なんだけど……」
斎藤がぽつりと言った。
「……可愛いな」
沖田は満足そうに胸を張る。
「健康的で愛嬌もある沖田総司、誕生!
しかも強くて、性格もいい。最高じゃん〜?」
斎藤「……しかし」
沖田「〜?」
原田は肩を組みながら言った。
「いいか総司。
唇に色がついたら、お前は確かに生きやすい」
長倉が続ける。
「だが――」
斎藤が静かに言う。
「周りが生きづらくなる」
沖田「そんな影響力ある!?」
そのとき、背後から声。
「……おい総司、またリップ塗ってんのか」
振り向くと、副長だった。
沖田「副長! 見てください!
これさえあれば僕の人生すごく楽になるんですよ!」
土方は一瞬総司を見て――
そして、視線をそらした。
耳が、ほんのり赤くなる。
「……却下だ」
「そんな顔で歩かれたら、隊士が集中できねぇ。
没収する」
沖田「えぇぇぇ!? 僕の生きやすさが!!」
原田「ほらな、言っただろ」
長倉「総司の唇に色をつけると、世界のバランスが崩れる」
斎藤は静かに茶を飲みながら言った。
「……大人しく、色の薄い人生を受け入れろ」
沖田「え〜!!」




