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新撰組の縁側 町娘にうける男になるぞ 作戦会議


屯所の一室。


原田左之助、永倉新八、斎藤一が集めてきた着物が、ずらりと畳に並んでいる。

その真ん中に座らされているのは――沖田総司。


――町娘にウケる男になるぞ作戦、である。


原田が腕を組んで言った。


「いいか総司。お前は健康だよな。これは間違いないな?」


斎藤がうなずく。


「近藤さんが過保護で、くどいほど医者に行かせてるからな。

医者のお墨付き、新選組いちの健康男子に違いない」


永倉が腕を組んで首をひねる。


「だが、顔に血の気がないんだよなあ……」


斎藤がぽつりと言った。


「……色白を通り越して“薄い”。

面の皮が厚すぎて、血の色まで隠れちゃってるんじゃないか?」


「ひどい!」


沖田が抗議する。


原田は着物を一枚持ち上げた。


「だからよ。少しでも元気そうに見える着物を選ぶんだ!」


永倉が青系の着物を当てる。


「これはどうだ? 落ち着いてて――」


「ダメダメ!」


原田が即座に却下した。


「あの顔色で水色は死ぬぞ!」


「死なないけど?」


斎藤が今度は渋い茶色を当てる。


「これは悪くないと思うが……」


永倉がうーんと唸る。


「あー……総司が着ると、子供みたいになるな」


「えっ、そんな雰囲気!?」


斎藤が腕を組んだ。


「おかしいな。新選組の隊服を着ている総司は

キリッとしたいい男なのに……」


原田が今度は明るい緋色の羽織を持ってきた。


「よし、思い切って赤系!」


三人は一斉に固まった。


「……」


「……」


「……んん?」


「どうしたの?」


沖田が不思議そうに首をかしげる。


永倉が言った。


「いや、似合う。似合うが……」


原田が眉をひそめる。


「こう……逆に“災害”の匂いがする」


「災害!?」


三人はしばらく真剣に悩んだあと、同時にうなずいた。


「……やめよう」


原田がため息をつく。


「やっぱ隊服だな。

あれさえ着てりゃ、新選組一番隊長・沖田総司だ」


永倉もうなずく。


「私服だと“健康そう”がどこかに消える問題……不思議すぎる」


斎藤が静かに言った。


「恋愛対象から遠ざかるレベルという、根深い問題も出るしな」


「ねえちょっと!?」


その時、沖田がぽんと手を打った。


「あ、そういえばね。僕、いいもの持ってるんだよ」


懐から取り出したのは――


小さな筒。


「これ」


原田が目をむく。


「何それ!?」


永倉が身を乗り出す。


「おい総司、それどこで手に入れた!?」


斎藤はすでに顔をしかめている。


「……やめろ。嫌な予感しかしない」


沖田は楽しそうに言った。


「色付きリップ」


そして、ぬりぬり。


ほんのり赤みが差す。


青白かった顔に、ちょうどいい血色。


三人は息をのんだ。


「…………」


「…………」


「…………」


原田が小さく言う。


「お、おい……これ……」


斎藤が静かに断言した。


「もはや恋愛どころではない破壊力だ」


「え、え?

血色よく見えるでしょ?」


「見える!見えるけど!」


原田が頭を抱える。


斎藤が続けた。


「これではモテない。むしろ――」


「なんで!?」


原田は沖田の肩をつかんで叫んだ。


「総司! お前の問題点はな……」


言葉が止まる。


永倉が言った。


「……どう改善すればいいかわからん!」


斎藤がうなずく。


「着物より、まず“存在が強い”」


沖田はしょんぼりした。


「せっかく、ちょっとモテてみようと思ったのに……」


原田はため息をつきながら笑った。


「はぁ……いいか総司。

お前は可愛いだけじゃねぇ。剣も強いし、人にも優しい。魅力は山ほどある」


永倉もうなずく。


「簡単に彼女できなくても、別に悪いことじゃねぇ」


斎藤がぽつりと言った。


「……そのうち、本気で惚れられる相手が現れる」


沖田は少し笑った。


「……うん。ありがとう」


その時。


襖がガラリと開いた。


「おい、お前らまた何やってんだ」


土方歳三だった。


そして。


沖田の顔を見る。


「(……っ!?)」


一瞬、固まる。


次の瞬間。


顔をそらして怒鳴った。


「そ、その顔で外出すんじゃねぇ!!

隊がざわつく!!」


「えええ!?」


原田が大笑いした。


「副長も同じ意見だな!」


永倉も肩をすくめる。


「もう諦めろ総司!」


沖田は頭を抱えた。


「僕って何なんだ……!」

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