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沖田総司の微笑みは鬼より強い ――翌日の縁側にてーー

湯屋騒動の翌日。

新選組屯所の縁側には、昨夜の大騒ぎが嘘のような、穏やかな陽が差し込んでいた。


翌日。

新選組屯所の縁側には、穏やかな陽が差し込んでいる。


湯呑みを手に、沖田・斎藤・原田・永倉の四人が、いつものお茶会をしていた。


 


永倉

「それにしてもよ。酒飲んで風呂に入るなんて、

別に近藤さんだけじゃねえだろ?

そんな大ごとかぁ?

武士だろうが百姓だろうが、みんな普通にやってんだろ?」


 


斎藤

「まあな。外で暴れたわけでもねぇし。

気分よ〜く歌ってただけだしな」


 


斎藤

「……ただ、今回は総司を沈めかけたからな」


 


沖田

「え、いや、そんな……!

死ぬほどじゃ……ないよ、きっと……。

ただ、ちょっとくらっとして……落ちちゃっただけで……」


 


斎藤

「いや、あれは仕方ねぇよ。

近藤さん、酔っぱらって総司を掴んでぶんぶん振り回してたからな」


 


原田

「それになぁ。気絶したのが総司じゃなくて俺だったら、

土方さん、あそこまで怒らなかった気もすんだよ。

天然理心流の絆ってやつ?」


 


その一言に、沖田はますます居心地悪そうに小さくなる。


 


永倉

「しかし土方さんよ、酒量管理だの酒申請制だの……。

もし俺にそんなことされたら我慢できん!

明日の命もわからん俺たちから、酒を取るなんて!」


 


原田

「ほんとになぁ……。

あれじゃ近藤さん、子ども扱いじゃねぇか」


 


永倉も原田も、近藤の“今後の酒人生”を真剣に案じているらしい。


しかし——。


近藤勇は、そもそもあまり酒に強くない。

昨日も、その弱さを遺憾なく発揮しただけである。


 近藤は、酒がなくてもまんじゅうさえあれば、ご機嫌で日々を過ごせる男だ。


(……近藤先生は、案外その方が健康でいいのかも)

と、沖田はこっそり思った。



  ——おまけ——

 

近藤と土方が何か話をしていた


白湯の湯気がふんわり漂っている。


そのとき、縁側の向こうからひょこっと顔を出したのは沖田。


手には、甘い香りが漂う箱。


「饅頭なんですけど……食べます?」


近藤の目が、カッと輝いた。


「食べる!!」


土方「……おい」


近藤先生、減酒の誓いは続いてますか?」


「もちろんだとも! オレは誠の武士だ。」


「なら、安心です。

近藤先生、お酒飲んだ次の日、よくお腹

壊すでしょう。

僕 心配してたんです。」


沖田は ちょっとあざとく、かわいく笑う。


「酒は我慢だけど、この饅頭は たくさん買ってきましたからね。」


「なんと上品で、なんと健康的な甘さだ。」

近藤は 目を閉じ、 涙をこらえる。


「トシ、誠とはな……

己を律し、道を正し――

甘味を尊ぶ心でもある!」


あまりに幸せそうな顔に、土方は思わずため息をついた。


その横で、総司はしれっと新しい白湯を注ぎ――


「はい、土方さん。これ、井上さん手作りのたくあんです」


そう言って、自分もぽりぽりと音を立てて噛む。


土方は白湯とたくあん、そして満面の笑みの近藤を見比べて、

何も言えなくなった。


(……まあ、今日はこれでいいか)


縁側には、白湯の湯気と、たくあんの香りだけが、のんびり漂っていた。


               



その日いちばん強かったのは、

剣でも誠でもなく――

沖田総司の、あの微笑みですね。

 つぎもお楽しみに

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