沖田総司 甘えながらも ちゃんと立つ
荒ぶった総司くんのその後です。
鬼のフリして甘やかす近藤と、
ちゃんと立つ総司の話。
近藤勇と土方歳三は、すっと寝入ってしまった沖田をじっと見ていた。
こんこんと眠る顔に、溜まった疲労がうっすらと浮かぶ。
今は立派に成長したが、
もともと丈夫とは言い難い子どもだった。
永倉新八や原田左之助と比べると、とにかく細い。
――いや、永倉や原田が特別に見事な体格なのだろう。
だが、いつも一緒にいるからこそ、その差が目につく。
斎藤もすらりとしているが、沖田のような脆さは感じない。
やはり、沖田総司の体力切れ、エネルギー切れは心配だ。
走るのは速い。
剣士としての腕は超一流。
新選組の看板として精鋭を率い、京の町を駆ける。
近藤が最も頼りにする、一番隊隊長である。
朝に昼に夜に――
担う仕事は多い。副長助勤十人の中でも、最も多くをこなしている。
食べさせても、食べさせても、
どんどん痩せていくように思える。
少し休ませるか。
そう思っても、仕事を減らすのは容易ではない。
だが――
沖田を案じているのは、近藤と土方だけではなかった。
いつのまにか隊士の指導を原田や永倉が少しだけ肩代わりし、
沖田はひっそりと仮眠をとるようになった。
昼の巡察の合間、庭の縁側で。
刀は脇に。
青い空を眺めながら、ほんのひととき目を閉じる。
不思議なことに、目覚めると剣先が軽い。
身体は相変わらず細いままだ。
いくら食べても太らない。
だが――
午前の稽古のあとに干し芋。
巡察の前に握り飯を半分。
夜の見回り前に甘い団子を一本。
中間たちと、ちょこちょこと補給するようになった。
一番隊が整列する。
沖田は軽く咳払いをし、にこりと笑う。
「さあ、今日もいきましょうか」
声は明るい。
剣は鋭い。
体力が不安でも、
持久力に自信がなくても、
彼の剣は、一瞬で勝負を決める。
永倉のように豪胆でなくていい。
斎藤のように無言でなくていい。
原田のように豪快でなくていい。
――おまえは、おまえだ。
近藤の声が、胸の奥で響く。
沖田総司は、今日も剣を振るう。




