表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/26

沖田総司 春の香り、梅干しの記憶

京の空はやわらかく晴れていた。

八坂神社の境内を抜けると、梅の白が目に入る。


沖田総司が、ふと手を伸ばした。

白く咲いた梅の花を、そっと摘み取る。


花びらが指先で震え、やわらかな香りがふわりと漂った。


「……美味しそうな匂い」


そのまま、ぱくりと口に入れる。


「残念。甘くないや」


「馬鹿か」


斎藤一が静かに言った。


「花はそんなものだ」


沖田は少し考えてから、空を見上げる。


「でもさ。いずれ散って、実になるんだよね」


その言葉に、三人が一瞬だけ黙った。


梅の花のように一瞬を美しく生きる――

そんな生き方もあるのだろう。


だが沖田も、斎藤も、永倉も、原田も、まだ若い。

意味もなく散る気など、さらさらない。


原田がにやりと笑う。


「その実もな、そのままじゃ食えたもんじゃないぞ」


「え、そうなの?」


「青いままだと腹を壊す。毒があるって話も聞くな」


沖田は目を丸くした。


「へえ……」


「梅の実 といえば思い出すのは梅干しだな、 」


「梅干し!?」


「ああ、試衛館の頃な」


沖田が懐かしそうに笑った。


「ふふ、周斎先生の奥さん、毎年梅を買ってきてさ。

途中で投げ出すんだよ。

結局、井上さんが漬けてた。名人だったなあ」


「周斎先生?」


「俺たちの師匠だよ。試衛館の主さ。

面倒見がよくてね――そのぶん台所はいつも火の車だった。

麦飯に梅干しだけ、なんてザラだったな」


「近藤先生が所帯を持ってからは、おつねさんが作ってくれた。

……あれも、美味しかった」


「うん。…やっぱり江戸の梅干しが恋しいな」


「お前、京のも毎日うまそうに食ってるじゃないか」


「そうなんだけどさあ」


沖田は少しだけ照れたように笑う。


「井上さんや、おつねさんの梅干し、また食べたい」


斎藤が静かに言った。


「江戸でも京でも、梅干し作りは手間がかかる。ありがたくいただけ」


「梅酒もいいぞ」と原田が続ける。


「今はまだ花の時期だ。酒の話は早い」


斎藤の一言に、四人は顔を上げた。


風に揺れる白い花びらが、ひとひら落ちる。


梅の香りの中、

彼らはしばらく何も言わずに立っていた。


梅の季節なので、四人に春を愛でてもらいました。

梅干しの思い出って、なぜか懐かしくなりますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ