新撰組の縁側 モテ会議
屯所の縁側
沖田が湯飲みをいじりながら、ぽつりと呟く。
「なんかさ、思うんだけど…“見た目いい=モテる”ってわけじゃないよね?」
原田が笑って肩をすくめた。
「何を 突然。
まあ、それは そうだよな。
副長が、町娘から文の山をもらった とか言う話、聞いたことないしなあ」
斎藤が淡々と補足する。
「……むしろ、副長は避けられている」
「だよな!」と長倉が吹き出す。「だって、あの目つきで!
もし急に話しかけられたら、ムスメ子普通ビビるって!」
沖田は湯飲みを両手で持ち、考え込むように言った。
「うーん、土方さん、もともと 薬売ってたし、町娘相手に あの目つきはしないと思うけど、
でも,なんでかなあ。」
「で、結局さ。“じゃあ誰が一番モテるの?”って話に戻るんだけど……」
「まず言っとくけどな」と長倉。「近藤先生は無しだ。あの人、妻子持ちだから」
原田が即座に天を指さす。
「そこは触れるな!!」
総ツッコミが響く。
沖田は苦笑しながら続けた。
「でも先生、結構マメでさ……油断すると、やばい気がする。」
斎藤もうなずく。
「ああ 望ましくない」
「だから、若手中心で考えよう!」
「では、モテそうランキング、いきまーす!」
「まずは左之助さん!」
「おっ、やっぱオレか!」と原田が胸を張る。
「体格いいし、明るいし、守ってくれそうだし……まあ女子ウケは良さそうだな」と長倉。
斎藤が静かに言う。
「……妙な色気がある」
「妙なってなんだよ、妙なって!」
「次、新八さん!」
「いや……俺は普通でいいよ……」
「いやいや」と原田。「健康的で誠実で真面目。“結婚するなら新八さん”って言われるタイプだろ」
斎藤も頷く。
「堅実で、家を守りそうだ」
「“安定感枠”としてはかなり強いよ」と沖田。
「なんだその枠は!」
「じゃあ斎藤さん!」
「俺がモテる要素など……」
「あるある!」と原田。「無口でミステリアスで強い!」
「無言でうなずくだけで惚れられそう」と長倉。
沖田が力説する。
「で、総司は?」
原田が即答する。
「どう考えてもモテるだろ」
斎藤も淡々と。
「見た目も雰囲気も柔らかい。 子供にも、女にも、老人にも好かれるタイプだ」
「え、僕?」と沖田は首をかしげる。「うーん…そうでもないかも」
「副長がよく言ってるだろ!」と原田。「“総司は人たらしだ”って!」
沖田は少し考えてから、のんびり言った。
「うーん……僕、子供には好かれるしさ、偉い人関係も強いんだよね。 口先で気をそらすっていうか…… “じじ殺し”とは言われるかなあ」
「それ副長が言ってるやつだぞ」と長倉。
「でもさ」と沖田は続ける。「それ、モテるのとは違くない? 僕、けっこう……寂しい男なんだよ?」
一瞬、空気が静まる。
「……そういえば」と新八。「おまえ、近藤先生のこと、あざと可愛く転がしてるよな。 俺らは、ありがたいけど」
「確かに……モテてはいないな」と原田。
沖田はしょんぼりした。
「……で、副長は?」と原田。
沖田は少し言い淀む。
「副長は……その……カッコいいけど……」
「そもそも怒られそうで声かけられねぇ!」と原田。
沖田がまとめる。
「――つまり、 『最強のカードだけど、使うのが難しい』 ってことですね」
その時、部屋の入口から低い声がした。
「……誰の話だ?」
四人、ゆっくり振り返る。
そこには、鬼のような顔の土方歳三。
「ひッ!?」
沖田だけが小声で付け足す。
「……でも副長、やっぱりカッコいいと思いますよ?」
土方はまたも、耳まで赤くなり、怒鳴った。
「余計なお喋りしてんじゃねえ!」




